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8章、ライメルスの聖女様
第60話
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王宮までの道のりでは何度も聖女様に呼びかける歓声が聞こえた。
その熱狂ぶりに耳を塞ぎたくなる。小刻みに体が震えてきた。
「姉さん‥‥」
ウォルターが私の額に手を置く。
「やっぱり、また熱が出て来たみたいだ」
「毛布を用意しろ」
クーリエ先生が馬車の窓を開け護衛の騎士に言った。
「申し訳ありません。一度止まらなければ荷物入れから取り出せず、ここに停止する危険を考えれば、毛布は諦めて頂くしか‥」
「クーリエ先生、私、大丈夫だから」
そう言いながら、口まで震えているのを感じた。
寒いんじゃない、コワイのだ。何の心構えもなく聖女様になってしまって、怖くて堪らない。
クーリエ先生が自分の長い革のコートを脱いで私にかけた。その上からウォルターが心配するように抱きしめて来たが、私の震えは止まらない。
「王宮へ急げ!」
そう言い渡してクーリエ先生が窓を閉めた。
馬車の中にはディビッド王子、クーリエ先生、ウォルターと私の4人が乗っている。
クーリエ先生が私の前に座り、私の両サイドにディビッド王子とウォルターが座っている。こうちゃんは私にしか見えない聖獣の姿に戻って馬車と並行して走っていた。
王宮にたどり着いてすぐに、豪華なドレスに着替えさせられた。
「休ませてやりたいが、民衆が王宮にまで押し寄せている。
バルコニーから挨拶だけでもして、民衆を宥めて欲しい」
クーリエ先生がそう言って私に頭を下げた。
バルコニーではまず国王が興奮する民衆に語りかけた。
「この新しい年を迎えた良き日に、ライメルス王国に新たな聖女様が顕現した。
新しい聖女様は病後で体調が思わしくない。今日は挨拶だけにとどめるが、お披露目するとしよう。
ジュリア・ホーン男爵令嬢だ」
私は国王に紹介され、人に見えるユニコーン姿に戻ったこうちゃんと一緒にバルコニーに立たされた。
広い庭園の中に大勢の民衆がひしめき合っていた。
私を見て大きな歓声が沸き起こる。魔法でバルコニーにスポットライトがあたっている。巨大なドームで公演をするアイドルはこんな感じなのかな、なんて思考が現実逃避する。
「ジュリア・ホーンです」
私の声が魔法で拡声されていく。
「この新しい年を迎えた良き日に、聖女となれたことを嬉しく感じます。
ライメルス王国の民衆と共に聖女はあります。新年を祝いましょう」
私は覚えこまされた言葉をなんとか言い切ると民衆に向かってお辞儀をした。
民衆がドッと沸き立った。
「「「聖女様ーーー!」」」
私は民衆の声に応えて手を振った。
笑顔が引き攣っているけど、そんなところまで見えないから大丈夫だ。
頑張った。でも、もう限界。
私はバルコニーの上で気が遠くなるのを感じた。
人型になったこうちゃんが私を抱き上げた。民衆の悲鳴のような声が聞こえた気がした。
その熱狂ぶりに耳を塞ぎたくなる。小刻みに体が震えてきた。
「姉さん‥‥」
ウォルターが私の額に手を置く。
「やっぱり、また熱が出て来たみたいだ」
「毛布を用意しろ」
クーリエ先生が馬車の窓を開け護衛の騎士に言った。
「申し訳ありません。一度止まらなければ荷物入れから取り出せず、ここに停止する危険を考えれば、毛布は諦めて頂くしか‥」
「クーリエ先生、私、大丈夫だから」
そう言いながら、口まで震えているのを感じた。
寒いんじゃない、コワイのだ。何の心構えもなく聖女様になってしまって、怖くて堪らない。
クーリエ先生が自分の長い革のコートを脱いで私にかけた。その上からウォルターが心配するように抱きしめて来たが、私の震えは止まらない。
「王宮へ急げ!」
そう言い渡してクーリエ先生が窓を閉めた。
馬車の中にはディビッド王子、クーリエ先生、ウォルターと私の4人が乗っている。
クーリエ先生が私の前に座り、私の両サイドにディビッド王子とウォルターが座っている。こうちゃんは私にしか見えない聖獣の姿に戻って馬車と並行して走っていた。
王宮にたどり着いてすぐに、豪華なドレスに着替えさせられた。
「休ませてやりたいが、民衆が王宮にまで押し寄せている。
バルコニーから挨拶だけでもして、民衆を宥めて欲しい」
クーリエ先生がそう言って私に頭を下げた。
バルコニーではまず国王が興奮する民衆に語りかけた。
「この新しい年を迎えた良き日に、ライメルス王国に新たな聖女様が顕現した。
新しい聖女様は病後で体調が思わしくない。今日は挨拶だけにとどめるが、お披露目するとしよう。
ジュリア・ホーン男爵令嬢だ」
私は国王に紹介され、人に見えるユニコーン姿に戻ったこうちゃんと一緒にバルコニーに立たされた。
広い庭園の中に大勢の民衆がひしめき合っていた。
私を見て大きな歓声が沸き起こる。魔法でバルコニーにスポットライトがあたっている。巨大なドームで公演をするアイドルはこんな感じなのかな、なんて思考が現実逃避する。
「ジュリア・ホーンです」
私の声が魔法で拡声されていく。
「この新しい年を迎えた良き日に、聖女となれたことを嬉しく感じます。
ライメルス王国の民衆と共に聖女はあります。新年を祝いましょう」
私は覚えこまされた言葉をなんとか言い切ると民衆に向かってお辞儀をした。
民衆がドッと沸き立った。
「「「聖女様ーーー!」」」
私は民衆の声に応えて手を振った。
笑顔が引き攣っているけど、そんなところまで見えないから大丈夫だ。
頑張った。でも、もう限界。
私はバルコニーの上で気が遠くなるのを感じた。
人型になったこうちゃんが私を抱き上げた。民衆の悲鳴のような声が聞こえた気がした。
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