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7章、ユニコーンを探せ
第51話
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冬休みが来た。ガイはハベル領に帰省する。妹のためにと王都のお土産を沢山買って。
「気をつけて帰ってね」
「ジュリアこそ風邪をひくなよ」
ガイが妹さんとお揃いで買ったストールを私の首に巻き付ける。
「私は寒い所で育ったから寒いのは平気なのに‥」
「いいから巻いておけ。しばらく会えないからお守り代わりだ」
ガイが笑う。しばらく会えないだけなのに、泣きたいような気持ちになるのは何故だろう?
ガイが馬車に乗りハベル領に去ってしまってから、私は王都にある男爵家の別邸に入った。
男爵家なのに王都に邸がある。それも王都の中心地に近いところに。お父様は私が思うよりやり手だったみたいだ。
私はこの別邸にも来たことがあるらしい。ウォルターにそう言われたが、少しも思い出せない。
私の記憶は相変わらず虫食いだらけであてにならない。色々思い出しているようで、大切なところがスコンと抜けていたりする。
ウォルターが手を引いて邸内を案内してくれた。
「ジュリア姉さんはこの部屋を使うといいよ。隣りの部屋を俺が使っているから何かあったら呼んで。すぐに駆けつけるから」
「そんなに心配しなくても、もう大丈夫なのに」
「そんな事言って、また頭を打って俺のことを忘れたりしない?」
「そんなに何度も記憶喪失にならないよ」
「ジュリア姉さんはもう二度も俺のことを忘れているんだよ」
「‥ううっ、ごめんなさい。頭だけはぶつけないように気をつける」
ウォルターが苦笑いした。
「頭だけじゃなく体に気をつけてください。姉さんに何かあるたびに俺の心臓が止まりそうになる」
「うん、分かった。
ねえ、ウォルターはいつから自分のことを俺って言うようになったの?昔は僕って言っていたよね」
まだホーン男爵家に来たばかりの頃、ウォルターは自分のことを僕と言っていた。
ウォルターと手を繋いで歩いていると、よく姉妹と間違えられた。「僕は男です」と真っ赤になって怒るウォルターが可愛いかった。
いつの間にか自分の事を俺と言うようになった。背も高くなって、もう姉妹に間違えられることなんてないだろう。
「その辺のことは忘れているなら、そのままで構いません」
「あっ、何か恥ずかしい話?教えて教えて!」
「ジュリア姉さんが忘れているジュリア姉さんの恥ずかしい話をしましょうか?」
「ええー、ウォルターはずるいよ。自分だけ覚えているんだもの」
「ジュリア姉さんこそズルイです。大切な思い出をみんな忘れてしまうなんて‥」
ウォルターが悲しそうに私を見つめた。
「ごめんね、今、色々と思い出しているから‥‥。
そうだ、私の服をウォルターに着てもらって姉妹ごっこしたの思い出したの」
「それは忘れていていい記憶です。また忘れてください」
「もう絶対、死ぬまで忘れないよ」
笑いながら逃げる私をウォルターが追って来た。
ずっと前もウォルターとこんな風に過ごしていた。
逃げ足の遅い私はすぐにウォルターに捕まってしまう。
すっかり大きくなったウォルターの腕の中に、私はすっぽりと閉じ込められる。見上げる若草色の瞳だけが昔と変わらなかった。
「気をつけて帰ってね」
「ジュリアこそ風邪をひくなよ」
ガイが妹さんとお揃いで買ったストールを私の首に巻き付ける。
「私は寒い所で育ったから寒いのは平気なのに‥」
「いいから巻いておけ。しばらく会えないからお守り代わりだ」
ガイが笑う。しばらく会えないだけなのに、泣きたいような気持ちになるのは何故だろう?
ガイが馬車に乗りハベル領に去ってしまってから、私は王都にある男爵家の別邸に入った。
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私はこの別邸にも来たことがあるらしい。ウォルターにそう言われたが、少しも思い出せない。
私の記憶は相変わらず虫食いだらけであてにならない。色々思い出しているようで、大切なところがスコンと抜けていたりする。
ウォルターが手を引いて邸内を案内してくれた。
「ジュリア姉さんはこの部屋を使うといいよ。隣りの部屋を俺が使っているから何かあったら呼んで。すぐに駆けつけるから」
「そんなに心配しなくても、もう大丈夫なのに」
「そんな事言って、また頭を打って俺のことを忘れたりしない?」
「そんなに何度も記憶喪失にならないよ」
「ジュリア姉さんはもう二度も俺のことを忘れているんだよ」
「‥ううっ、ごめんなさい。頭だけはぶつけないように気をつける」
ウォルターが苦笑いした。
「頭だけじゃなく体に気をつけてください。姉さんに何かあるたびに俺の心臓が止まりそうになる」
「うん、分かった。
ねえ、ウォルターはいつから自分のことを俺って言うようになったの?昔は僕って言っていたよね」
まだホーン男爵家に来たばかりの頃、ウォルターは自分のことを僕と言っていた。
ウォルターと手を繋いで歩いていると、よく姉妹と間違えられた。「僕は男です」と真っ赤になって怒るウォルターが可愛いかった。
いつの間にか自分の事を俺と言うようになった。背も高くなって、もう姉妹に間違えられることなんてないだろう。
「その辺のことは忘れているなら、そのままで構いません」
「あっ、何か恥ずかしい話?教えて教えて!」
「ジュリア姉さんが忘れているジュリア姉さんの恥ずかしい話をしましょうか?」
「ええー、ウォルターはずるいよ。自分だけ覚えているんだもの」
「ジュリア姉さんこそズルイです。大切な思い出をみんな忘れてしまうなんて‥」
ウォルターが悲しそうに私を見つめた。
「ごめんね、今、色々と思い出しているから‥‥。
そうだ、私の服をウォルターに着てもらって姉妹ごっこしたの思い出したの」
「それは忘れていていい記憶です。また忘れてください」
「もう絶対、死ぬまで忘れないよ」
笑いながら逃げる私をウォルターが追って来た。
ずっと前もウォルターとこんな風に過ごしていた。
逃げ足の遅い私はすぐにウォルターに捕まってしまう。
すっかり大きくなったウォルターの腕の中に、私はすっぽりと閉じ込められる。見上げる若草色の瞳だけが昔と変わらなかった。
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