上 下
47 / 69
6章、悪役令嬢の登場

第47話

しおりを挟む
 『恋する乙女は千里を駆ける』のジュリア・ホーンはユニコーンと召喚獣契約して聖女になるらしい。聖女でないヒロインはあり得ないと言われた。

 私はゲームの中でも召喚獣契約なんてして無かった。どうしてそんな初歩的なミスしたんだろう?

 ゲームを始めたとき、妹のくるみが邪魔していたんだよ。それで文章を読み飛ばして、召喚獣契約のことを知らないままでいたんだと思う。
 
 「聖女になっていないと進めないところがあるから、そのままやっていてもバッドエンドになったはずだわ」
 キャサリン様に私の乙女ゲームのやり方を散々酷評された。
 特にギャルゲー風の貢ぐ攻略方法に腹を立てた。
 「大体、ホストでもあるまいし、攻略対象者に貢ぐなんてあり得ないわ」
 「じゃあ、どうやって攻略対象者と親しくなるんですか?」
 「攻略対象者はみんな心に傷を持っている。そこに入りこむの。
 お金でなくて時間をかけるのよ。それが愛情のバロメーターでしょう」
 「わあ、面倒くさい。ギャルゲーのヒロインの方が分かりやすいですね」
 「こんな女子力の低いヒロイン、初めて見たわ。
 とにかく、あなたは早く召喚獣契約してらっしゃい」
 「えー、聖女なんて目立ちそうでヤダなぁ」
 目立っていい事なんてひとつもない。聖女なんて面倒ごとに巻き込まれそうで絶対にイヤだ。

 「知ってる?聖属性の上級魔法にパーフェクトキュアがあるのよ。
 すべての状態異常を治せるの。今のあなたに必要なのではなくて?」
 「えっ、じゃあ蓄積した毒も‥‥」
 「もちろん、綺麗さっぱり治せるわ。上級魔法はすぐに使えなくても初級魔法のキュアだけで体が随分と楽になるのではないかしら」
 この体のダルさから解放される。パーフェクトキュア、夢の魔法だ。
 「明日からさっそくユニコーンを探して召喚獣契約して来ます」
 「それがいいわ」
 キャサリン様がにっこりと微笑んだ。悪役令嬢だけあってちょっと怖そうに見える笑顔だったけど、第2王子にさえ近づかなければ大丈夫なハズ。

 キャサリン様の思惑にも気づかず、私はユニコーンと召喚獣契約する気満々になっていた。

 勉強室を出ると心配そうな顔をしたガイがそこで待っていた。勉強室と言えども個室に男女では入れない。
 「ジュリア、何もされてないか?」
 「あら、ガイ・ハベル、酷いいい様ようね。私がジュリアに何をすると言うの?」
 一瞬、ガイとキャサリン様が睨みあった。
 「ガイ、心配するような事なかったよ。私、キャサリン様に色々と教えて頂いたの」
 「ジュリアは可愛いわね。また後で色々とお話ししましょう」
 キャサリン様がひらひらと手を振りながら去って行った。
 残されたガイが私を見て大きくため息をついた。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

婚約破棄された悪役令嬢は王子様に溺愛される

白雪みなと
恋愛
「彼女ができたから婚約破棄させてくれ」正式な結婚まであと二年というある日、婚約破棄から告げられたのは婚約破棄だった。だけど、なぜか数時間後に王子から溺愛されて!?

処理中です...