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5章、人はそれをロリコンと呼ぶ

第43話

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 ディビット王子はそれから退院するまでの3日間、毎日病室にお見舞いに来てくれた。

 ウォルターとかち合った時が面白かった。
 「ジュリア姉さん、何か足りないものはない?」
 病室に入って来たウォルターが言ったのを聞いて、王子がぽかんとした顔で私を見た。
 「‥えっ、ね、ねえさん?」

 ウォルターは背が高いし、ライメルスでも14歳には見えない。
 そう言えば年齢を言い忘れていたな、と私は思った。

 「ディビット王子、弟のウォルターです。身長が高いから実際より年上に見られますがまだ14歳なんですよ」
 「‥えっ、ディビット王子?」
 私がウォルターを王子に紹介すると今度はウォルターが驚いた顔をした。

 「この前、散歩をしていた時に王子と知りあって友達になったの」
 「普段は人見知りが激しいのに、何で王子様と友達になっているんですか?」
 ウォルターが私の耳元で囁いた。
 「何だか昔のウォルターを思い出してしまって‥」
 だって可愛いかったのだ。ディビット王子もあと2、3年で別人のように大きくなってしまうのかもしれない。でも今は女の子みたいに可愛い。

 「ジュリアが何歳か聞いてもいい?」
 「私は15歳です。見た目が少し幼く見えるようですが」
 「少しではないが‥‥でも4歳上くらいなら範囲内なのか?」
 ディビット王子が何やら悩んでいるように見えた。



 退院の日、ディビット王子が泣きそうな瞳で私を見つめた。
 「もう会えないのか?」
 「その内、きっとまた会えますよ」
 「そうだ、僕が王宮に招待するよ」
 「それは、ちょっと。私は男爵家の人間ですし、王太子殿下に会いたくないので‥」
 「じゃあ兄さんに会わなくていい方法を考えてみる。僕だけなら会ってくれる?」
 「それなら喜んで」
 私がそう返事をするとディビット王子がにっこりと笑った。

 どうも私は可愛い男の子に弱いらしい。
 ショタコンなのかな?今まで気付かなかったけど。

 退院の付き添いに来てくれたウォルターが微妙な顔をしていた。
 「俺はジュリア姉さんを守りたくて、早く大人になりたかったけど、逆効果だったのかな?思えば子供の頃の方が姉さんが優しくしてくれた気がする」
 「何バカなこと言ってるの。ウォルターは優しくて頼り甲斐のある素敵な男性に育ったじゃない」
 「男はやっぱり頼りになった方がいいですよね」
 ウォルターが納得したように頷いた。

 ウォルターにはそう言ったが可愛いかった幼い日のウォルターをもう一度見たいと思っていることは、秘密にしておこうと思う。
 
 

 
 
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