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5章、人はそれをロリコンと呼ぶ

第42話

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 体調は少しずつ戻ってきていて、何とか固形物も口に出来るようになった。
 退院の日も決まり、体力をつけるために王宮治療院の庭を散策するようにした。

 その日、いつものように散歩を楽しんでいたら、王太子殿下がいつものルートで待ち構えているのを見つけた。私はあわてて方向転換した。

 ジュリアは美少女だけど、どうも変な男に好かれやすいみたい。
 記憶が戻るにつれて出てくる出てくる、変な男に付き纏われている記憶。お父様やウォルターが排除してくれていたけど、今回の変態は身分が高すぎる。

 病室に帰ってもすぐに訪ねてくることは目に見えている。
 私は生け垣の影に座ってため息をついた。

 王子様とか、本当に勘弁して欲しい。権力を持ったロリコンなんて最悪だ。
 ずっとクーリエ先生に恋人役をしてもらう訳にもいかないしなぁ。
 なんて考えていたら後ろから突然声を掛けられた。

 「みーつけたぁ!」

 思わずドキっとして体が飛び跳ねた。
 振り向くと変態王太子ではなく銀髪の少年がこちらを見つめている。
 「アレ、君はお茶会に来ていた子じゃないよね?」

 銀髪に蒼い瞳の少年は昔のウォルターを思い出させた。ウォルターは昔、女の子みたいに可愛いかった。今では背も高くなり声も低くなってしまったけど。
 声を掛けてきた少年は不思議そうな顔をして私を見つめた。

 「君は誰なの?どうしてこんな所にいるの?」
 私は答えようとして生け垣の向こう側を歩く王太子殿下に気付き、あわてて少年の後ろに隠れた。
 少年は王太子を見てから、私を見るとため息を付いた。
 「兄さんから逃げているんだね。大丈夫、見つからないように逃してあげるから」
 「兄さん?」
 「名乗ってなかったね。僕はディビット・ジーク・ライメルス。
 ジェームズ兄さんは小さな女の子が好きなんだ。怖い思いをさせていたらゴメンね」
 少年はまさかの第3王子だった。

 ここの王様は5年ごとに子供を作っている。第1王子が21歳、第2王子が16歳、第3王子は11歳、第1王女は6歳だ。
 「ジュリア・ホーンです。王宮治療院の庭にいたのですが‥」
 「この辺りから後宮に入るんだ。兄さんから逃げているうちに、迷い込んでしまったんだね。僕が王宮治療院まで連れて行ってあげる」
 ディビット王子が手を繋いできた。
 「今すぐに帰ると王太子殿下が病室にいるかもしれないので」
 「じゃあ君もお茶会に参加しない?みんなで隠れんぼをしてたんだ」
 ディビット王子は可愛いけど、さすがに隠れんぼを楽しめる年ではない。
 「まだ体の調子が良くないから、ここで時間を潰してから病室に帰ります」
 「じゃあ少しの間、一緒に話をしよう」
 ディビット王子が私の隣に座った。

 「少し風が冷たいね」
 王子が私に自分の上着を掛けてくれた。
 「上着を貸してもらうなんて、恐れ多いです」
 「僕は健康だから大丈夫、病人の君を追いかけ回すなんてジェームズ兄さんは何てことしてるんだろう」
 「王太子殿下が女の子を追いかけ回すのはよくあることなんですか?」
 「偶にね、僕と同年代くらいの女の子が好きみたいなんだ」
 「そんな事していて問題にならないんですか?」
 「そんなにおかしな事はしないから‥‥時々怖がらせてしまうみたいだけど」

 「あの、ジュリアって呼んでもいいかな?」
 ディビット王子の頬が赤く染まる。この王子は本当に可愛い。
 「いいですよ」
 「僕のこともディビットと呼んでくれる?」
 「王子様を名前で呼ぶのはちょっと‥」
 「じゃあ友達にだったらなってくれる?」
 「私で良かったら」
 「本当、すごい嬉しい!」
 ディビット王子が満面の笑みで私に抱きついて来た。

 私にすごい可愛い年下の友達が出来た。
 
 

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