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5章、人はそれをロリコンと呼ぶ

第41話

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 私は王太子殿下の前ではクーリエ先生の恋人を演じる事になった。

 王太子殿下は色々と面倒くさい。
 諦めたように見せて、全然諦めていなかった。
 毎日花束が届くようになり、クーリエ先生の目を盗んで病室にやって来る。
 面会謝絶の札を下げて置いたらガイにもの凄く心配されてしまった。

 「ガイが子供なんて産めなくてもいいって人が絶対に現れるって言ったけど、ロリコンの人はさすがに勘弁して欲しいよ」
 「ジュリアは波乱万丈だな」
 ガイが大きな声で笑った。

 「笑い事じゃないけど、ガイが笑ってくれて良かった。
 最近ガイってば、こんな顔して泣きそうにしてたから」
 私が目元を引っ張ってガイの顔を真似して見せれば、ガイが赤くなって慌て始めた。
 「泣いてはいないだろう。大体、ジュリアが死にかけるのが悪いんだ」
 「私だって好きで死にかけているんじゃ無いのに」
 「とにかく今は体を治すことだけ考えろ。俺は学園で待っているからな」

 ガイは休日の午前中に少しだけ来て帰ってしまう。道場に行く前に寄ってくれているのだ。もう少し一緒にいたいけどワガママは言えない。

 恋人のフリをするのに何も知らないのはオカシイからと、クーリエ先生のことを色々と教えてもらった。
 まず名前が本当はアンソニー・ジーク・ライメルスである事、本来なら結婚して臣下に降ってからクーリエ公爵と名乗ることを知った。

 「王族の方が王族籍から離れる時は公爵になるんですね」
 「一代公爵だ。次の代からは領地も縮小され伯爵になる。特別な功績を残せば公爵家として継続出来るがな」

 「こんな堅い話ではなく私個人のことを知りたくはないか?」
 クーリエ先生がスッと手を握ってくる。
 「先生はどうしてこんなにスキンシップが多いんですか?」
 「ふつうじゃないか?」
 「絶対に多いです。ガイは不用意に女性に触れたりしないって言っていました」
 「あいつこそ、いつもジュリアを抱きかかえているじゃないか」
 「それは私の方からお願いしているからで‥あっ、先生‥」
 ちょっとした隙に指先にキスされていた。まったく、手が早いんだから。
 「私は恋人役を頼まれているんだから、コレくらい当然だろう」

 「先生、早く退院させてくださいよ。ここに居なければ王太子殿下も私に近づけなくなるんだし」
 「あと2週間はダメだ。胃がだいぶやられている。ちゃんと食べられるようにならないと体力を戻すことが出来ないぞ」
 「でも早く学園に行かないと留年させられちゃう」
 そう、それが一番心配なのだ。このままではガイと学年が変わってしまう。
 「学園は夏休み中に補習を受ければ進級させると言っている」
 「本当ですか?」
 「ああ、特例だがな。学園側も金色の魔力量のジュリアに期待しているようだ」
 「ええー、そんな期待されると重いんだけど」
 「そんな訳だから、まだ此処で治療を頑張るんだ」
 
 「はぁい」と私は力なく返事をした。
 
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