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5章、人はそれをロリコンと呼ぶ
第40話[アンソニー・クーリエ視点]
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ジュリアは肌が赤くなるからと香水の類いはつけない。鉱物毒に長い間晒されたことで化学物質に敏感になっているのだろう。
この甘い香りはジュリア自身のものだ。
私が自分の腕の中に囲った柔らかい生き物の甘さを堪能しているのに、その生き物が抵抗してくる。
「先生、クーリエ先生、いい加減にしてください」
ジタバタして私の胸を叩いてくる。ムードも何もあったもんじゃない。
「王太子から助けてやったんだ、少しは役得があってもイイだろう」
私が最後にジュリアのおでこにキスして手を離してやると、彼女は真っ赤になった。
「先生はやっぱりロリコンなんですか?」
ジュリアが失礼な質問をしてくる。
「私はジェームズみたいに子供相手にその気になったことはない」
「王太子殿下はやっぱりロリコンなんだ」
「あいつは魔法学園に通っていた頃からの年下好きだ。10歳前後の女性に惹かれるらしい」
「ちょうど私の見た目年齢だ。どうしよう!」
ジュリアがオロオロしている。
「私が牽制しておいたから大丈夫だろう。私の恋人だと言えばいい」
「クーリエ先生の恋人のフリをするのもなぁ」
「私の何に不満がある」
「モテ過ぎるところですよ。今度は先生を好きな女性に殺されかねない」
ハァ、とジュリアがため息をついた。
「私以外にジェームズを牽制出来る男はいないぞ」
「そうですよね。先生こそいいんですか?恋人に誤解されたりしませんか?」
「恋人なんかいないからな。それよりジュリア、アンソニーと呼んでくれ、恋人だろう」
「王太子殿下の前ではそう呼ばせてもらいます」
「クーリエ先生はどうして私を助けてくれるんですか?」
ジュリアが不思議そうに聞いてきた。
「さあ、どうしてかな?」
聞かれても答えられない。なにしろ自分でも分からないんだから。
ジュリアの母親は私の初恋の相手だ。だからって9歳年上の彼女をずっと思っていたわけではない。ただ彼女は印象に残る女性だった。
ジュリアの母親、オリビア・ホーンは今でも有名人だ。国王や高位貴族の子息達の求婚を全て退けて自領へ帰ってしまった男爵令嬢など他にはいない。
田舎が好きだと言っていたオリビアは沢山の求婚者を袖にしたが妖精姫と呼ばれ、今でも愛され続けている。妖精に王都の暮らしは無理だったと袖にされた貴族達が笑って話す。
初恋の相手がそんな人だったからか、私は権力に執着しないような女性に惹かれる。
しかし王弟の私に寄って来るのは真逆の人間ばかり、私が心惹かれる女性はみんな別に意中の相手がいた。
誰かを想う穏やかな空気が好きなのだろう。心惹かれても奪い取りたいとは思わなかった。
25歳にもなって誰とも付き合わなかったとは言わない。
肌寂しいときに慰め合うような気楽な付き合いの相手はいた。
本気で私と付き合いたいと言ってくる相手は私の見た目に執着していたり、権力への渇望を私への愛だと思い込んでいたり面倒な相手ばかりだった。
自然と女性から足が遠退く。女ぎらいだと言われることが増えた。
ジュリアと初めて会った時、あの妖精姫の娘も入学初日から私を見物に来るような俗物かと思いウンザリした。
それが誤解だったと分かり、王弟の私に好き勝手なことを言って来るジュリアを面白いと感じた。
ジュリアを気に入っている。恋人役なんて面倒な事を引き受けてしまうくらいには。
最近のジュリアは私に気を許し始めている。
王族は面倒くさいと言いながら私を王族扱いしなくなっている。
妖精姫と違ってちゃっかり私を利用してくるジュリアに、偶には利用されるのも悪くないと感じていた。
この甘い香りはジュリア自身のものだ。
私が自分の腕の中に囲った柔らかい生き物の甘さを堪能しているのに、その生き物が抵抗してくる。
「先生、クーリエ先生、いい加減にしてください」
ジタバタして私の胸を叩いてくる。ムードも何もあったもんじゃない。
「王太子から助けてやったんだ、少しは役得があってもイイだろう」
私が最後にジュリアのおでこにキスして手を離してやると、彼女は真っ赤になった。
「先生はやっぱりロリコンなんですか?」
ジュリアが失礼な質問をしてくる。
「私はジェームズみたいに子供相手にその気になったことはない」
「王太子殿下はやっぱりロリコンなんだ」
「あいつは魔法学園に通っていた頃からの年下好きだ。10歳前後の女性に惹かれるらしい」
「ちょうど私の見た目年齢だ。どうしよう!」
ジュリアがオロオロしている。
「私が牽制しておいたから大丈夫だろう。私の恋人だと言えばいい」
「クーリエ先生の恋人のフリをするのもなぁ」
「私の何に不満がある」
「モテ過ぎるところですよ。今度は先生を好きな女性に殺されかねない」
ハァ、とジュリアがため息をついた。
「私以外にジェームズを牽制出来る男はいないぞ」
「そうですよね。先生こそいいんですか?恋人に誤解されたりしませんか?」
「恋人なんかいないからな。それよりジュリア、アンソニーと呼んでくれ、恋人だろう」
「王太子殿下の前ではそう呼ばせてもらいます」
「クーリエ先生はどうして私を助けてくれるんですか?」
ジュリアが不思議そうに聞いてきた。
「さあ、どうしてかな?」
聞かれても答えられない。なにしろ自分でも分からないんだから。
ジュリアの母親は私の初恋の相手だ。だからって9歳年上の彼女をずっと思っていたわけではない。ただ彼女は印象に残る女性だった。
ジュリアの母親、オリビア・ホーンは今でも有名人だ。国王や高位貴族の子息達の求婚を全て退けて自領へ帰ってしまった男爵令嬢など他にはいない。
田舎が好きだと言っていたオリビアは沢山の求婚者を袖にしたが妖精姫と呼ばれ、今でも愛され続けている。妖精に王都の暮らしは無理だったと袖にされた貴族達が笑って話す。
初恋の相手がそんな人だったからか、私は権力に執着しないような女性に惹かれる。
しかし王弟の私に寄って来るのは真逆の人間ばかり、私が心惹かれる女性はみんな別に意中の相手がいた。
誰かを想う穏やかな空気が好きなのだろう。心惹かれても奪い取りたいとは思わなかった。
25歳にもなって誰とも付き合わなかったとは言わない。
肌寂しいときに慰め合うような気楽な付き合いの相手はいた。
本気で私と付き合いたいと言ってくる相手は私の見た目に執着していたり、権力への渇望を私への愛だと思い込んでいたり面倒な相手ばかりだった。
自然と女性から足が遠退く。女ぎらいだと言われることが増えた。
ジュリアと初めて会った時、あの妖精姫の娘も入学初日から私を見物に来るような俗物かと思いウンザリした。
それが誤解だったと分かり、王弟の私に好き勝手なことを言って来るジュリアを面白いと感じた。
ジュリアを気に入っている。恋人役なんて面倒な事を引き受けてしまうくらいには。
最近のジュリアは私に気を許し始めている。
王族は面倒くさいと言いながら私を王族扱いしなくなっている。
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