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4章、弟がやって来た

第37話[ウォルター視点]

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 俺が犯罪調査室から解放されたのは、あいつらに捕まってからちょうど一週間後のことだった。

 特に俺を痛ぶっていたマーレ取り調べ官は王弟殿下を殴ろうとした罪で捕まった。取り調べ官の地位は剥奪されることになる。

 官吏の仕事をしているのは爵位を得られなかった貴族が多い。官吏の試験に受かれば爵位を得られなくても貴族でいられる。
 マーレ取り調べ官も能力は低くなかったらしいが爵位を持つ貴族への嫉妬が激しかったようだ。今迄も何度か問題を起こしていたと聞かされた。

 俺は解放されてすぐにジュリア姉さんの元へ向かった。
 王宮治療院の特別室に姉さんは入院している。特別室にいるのは王弟殿下の意向らしい。姉さんに付き添っていた妖艶と言えるほど容姿端麗な王弟殿下の顔を思い出した。

 ジュリア姉さんは人目を引く美人だけど、それだけでなく人を惹きつける。気がつくと姉さんの魅力にハマって抜け出せなくなっている。
 王弟殿下はジュリア姉さんを気に入っているように見えた。

 コレだからジュリア姉さんは目が離せないんだよ。

 ジュリア姉さんが魔法学園にいる間にいったいどれ程のライバルが現れるのか。考えるだけで気が遠くなる。

 その筆頭がガイ・ハベルだ。

 ハベルさんは取り調べ官の話を聞くとすぐに犯罪調査室に来てくれた。
 俺が一方的にニーナに迫られていたこと、俺がジュリア姉さんが好きだからとハッキリと断ったことを証言してくれた。

 お礼を言ったら、当たり前のことをしただけだと言われた。
 ガイ・ハベルという人間には裏がない。ジュリア姉さんが簡単に信頼してしまうはずだ。俺はハベルさんの証言が決め手になって解放された。

 王宮治療院へ行くと姉さんは熱を出して魘されていた。俺に会いに来てくれた日の夜から熱が高くなったそうだ。

 「俺のせいだ。毒を飲まされたのも、俺の断り方が悪かったから‥」
 俺が手を握ると姉さんが目を覚ました。
 「解放されたのね。ほら、ガイは証言してくれたでしょう」
 ジュリア姉さんが微笑んだ。
 「うん、姉さんが言った通りだった」
 「ねっ」
 姉さんは安心したように眠ってしまった。

 こんなボロボロの体で俺のところへ来てくれたんだ。
 俺が姉さんの頭を撫でていても、もうその日は目を覚さなかった。

 俺が愛するジュリア姉さんは誰より愛情深い女性だ。
 俺は俺の幸せより姉さんの幸せを一番に願う。

 それでも姉さんの幸せが俺の隣にあるようにと祈らずにはいられなかった。
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