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4章、弟がやって来た
第33話[ウォルター視点]
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その日、王都のホーン男爵邸に騎士団の人間が現れた時、俺には何が起きているのかさっぱり分からなかった。
騎士たちに取り囲まれた俺は、そのまま犯罪調査室に連行された。
そうして初めてジュリア姉さんが毒を飲まされたこと、その容疑が俺にかかっていることを知らされた。
「俺がジュリア姉さんに毒を盛るなんて有り得ません」
何故俺に容疑がかかっているのか解らない。ジュリア姉さんは猛毒を飲まされて意識が無いらしい。すぐに姉さんの元へ駆けつけたかった。
「ウォルターくん、君は元々ジュリアさんの婿養子になる予定でホーン男爵家に引き取られたんじゃないのかい?」
「一応そんな話は出ましたが、まだ子供だったので保留にしてあります」
「ウォルターくんは中々の色男だ。子供の頃はジュリアさんも満更でもなかった。
しかし人は変わるものだ。ジュリアさんは魔法学園で別の男性と親しくなった。
ウォルターくんは気が気ではなかったはずだ」
確かに姉さんに仲の良い男が出来て面白い筈がない。しかし、それは今は関係ない話だ。
それなのにテリー・サンドールと名乗った取り調べ官は意味あり気に微笑んだ。
「ジュリアさんも酷いことをする。ウォルターくんと言う婚約者とも言える存在がいるのに心変わりするなんて。君には同情するよ。でも毒はいけなかった、それは犯罪なんだよ」
取り調べ官が何を言いたいのかやっと分かった。俺が姉さんとハベルさんの仲に嫉妬して姉さんを殺そうとしたと言いたいのだ。
「俺はやっていません。ちゃんと調べてもらえれば分かってもらえるはずだ」
「犯罪を犯した人はみんな最初はそう言うんだ。
ウォルターくんはまだ未成年だしホーン男爵家も婚約不履行に近いことをしている。殺人未遂は重い罪だが、君には同情される余地がある。すぐに自白すれば軽い罰で済むかもしれない」
取り調べ官は全く俺の話を聞いてくれない。永遠と同じような会話を繰り返していた。
俺のことを可哀想だと言いながら、俺がジュリア姉さんに毒を盛ったと決めつける。腹が立った。
その日の夜遅く、別の取り調べ官が来てサンドール氏に耳打ちした。
「ウォルターくん、残念だったね。ジュリアさんの侍女が自白したよ。ジュリアさんを殺したら結婚してあげるって約束したんだって。
ジュリアさんだけでなく君も浮気をしてたのか。これで同情の余地もなくなった」
「一体何を言っているんですか?」
「まだしらを切る気かい、ウォルターくんもしぶといね。
君の共犯者のニーナが自白した。
君に頼まれてジュリアさんに毒を盛ったとね。
毒物はニーナの持ち物から出てきた。ジュリアさんに使われた毒物と同じものかどうか、すぐに照合出来るだろう。いい加減に君も認めるんだな」
侍女のニーナが犯人だった。
俺を共犯者として道連れにしようとしている。
「俺は、俺は本当に何もしていないんだっ!」
俺が叫んだ言葉は取り調べ室に虚しく消えていった。
騎士たちに取り囲まれた俺は、そのまま犯罪調査室に連行された。
そうして初めてジュリア姉さんが毒を飲まされたこと、その容疑が俺にかかっていることを知らされた。
「俺がジュリア姉さんに毒を盛るなんて有り得ません」
何故俺に容疑がかかっているのか解らない。ジュリア姉さんは猛毒を飲まされて意識が無いらしい。すぐに姉さんの元へ駆けつけたかった。
「ウォルターくん、君は元々ジュリアさんの婿養子になる予定でホーン男爵家に引き取られたんじゃないのかい?」
「一応そんな話は出ましたが、まだ子供だったので保留にしてあります」
「ウォルターくんは中々の色男だ。子供の頃はジュリアさんも満更でもなかった。
しかし人は変わるものだ。ジュリアさんは魔法学園で別の男性と親しくなった。
ウォルターくんは気が気ではなかったはずだ」
確かに姉さんに仲の良い男が出来て面白い筈がない。しかし、それは今は関係ない話だ。
それなのにテリー・サンドールと名乗った取り調べ官は意味あり気に微笑んだ。
「ジュリアさんも酷いことをする。ウォルターくんと言う婚約者とも言える存在がいるのに心変わりするなんて。君には同情するよ。でも毒はいけなかった、それは犯罪なんだよ」
取り調べ官が何を言いたいのかやっと分かった。俺が姉さんとハベルさんの仲に嫉妬して姉さんを殺そうとしたと言いたいのだ。
「俺はやっていません。ちゃんと調べてもらえれば分かってもらえるはずだ」
「犯罪を犯した人はみんな最初はそう言うんだ。
ウォルターくんはまだ未成年だしホーン男爵家も婚約不履行に近いことをしている。殺人未遂は重い罪だが、君には同情される余地がある。すぐに自白すれば軽い罰で済むかもしれない」
取り調べ官は全く俺の話を聞いてくれない。永遠と同じような会話を繰り返していた。
俺のことを可哀想だと言いながら、俺がジュリア姉さんに毒を盛ったと決めつける。腹が立った。
その日の夜遅く、別の取り調べ官が来てサンドール氏に耳打ちした。
「ウォルターくん、残念だったね。ジュリアさんの侍女が自白したよ。ジュリアさんを殺したら結婚してあげるって約束したんだって。
ジュリアさんだけでなく君も浮気をしてたのか。これで同情の余地もなくなった」
「一体何を言っているんですか?」
「まだしらを切る気かい、ウォルターくんもしぶといね。
君の共犯者のニーナが自白した。
君に頼まれてジュリアさんに毒を盛ったとね。
毒物はニーナの持ち物から出てきた。ジュリアさんに使われた毒物と同じものかどうか、すぐに照合出来るだろう。いい加減に君も認めるんだな」
侍女のニーナが犯人だった。
俺を共犯者として道連れにしようとしている。
「俺は、俺は本当に何もしていないんだっ!」
俺が叫んだ言葉は取り調べ室に虚しく消えていった。
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