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4章、弟がやって来た

第32話

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 両親が王都へ着いた翌日、クーリエ先生が両親に私の症状を説明してくれた。

 今回私が倒れたのはある植物の根から取れる猛毒を飲まされた為だった。致死量を遥かに超えていたという。
 たまたま毒物に詳しいクーリエ先生がいた為、吐き出させ、毒物も直ぐに特定できた。
 少しでも処置が遅ければ内臓がやられて助からなかったらしい。

 「今回は処置も早く、毒物が特定出来たため無毒化出来ました。
 けれど問題は別にあります。ジュリアさんが毒を飲まされたのはこれが初めてではありません。もう何年も毒を与えられ続けていたことが今回の精密検査で解りました」

 「何年も、ですか?」
 両親が呆然とした顔でクーリエ先生を見つめた。
 「ええ、今回の毒物と違い致死毒ではありません。
 鉱物の毒が少しずつ与えられていたようです。ジュリアさんの髪の毛を調べたところ、もう何年も毒物が蓄積されていました。
 この毒は死には至りません。ただ蓄積すると虚弱になり病気にかかりやすくなります。ジュリアさんのようにね」
 「ジュリアの虚弱体質は毒のせいだったと言うの!」
 「残念ながら彼女は誰かに毒を盛られていた。
 王都に来る前からだ。今回は致死毒でしたが犯人が別人だとは考えにくい」

 「それがウォルターだと言うのか?」
 お父様が苦い顔をした。
 「その可能性が高いと取り調べ官は思っています」

 ウォルターではない。もし私を殺したいなら川で私が溺れた時に見殺しにすればよかったのだ。では誰がと考えた時、いつも私に寄り添っている侍女の顔が思い浮かんだ。

 「ニーナ、侍女のニーナだわ。彼女なら私の食べ物に毒を入れられる」

 私がそう言った時、病室の扉が開き取り調べ官だと名乗る男たちが入って来た。
 「はじめまして、ジュリアさん。
 私は取り調べ官をしているテリー・サンドールです」
 サンドールさんが帽子を取り会釈した。
 「先程の話ですが、私どもも馬鹿ではない。侍女のニーナの身柄は既に確保してあります。実行犯はニーナで間違いないでしょう」
 「では何故ウォルターの身柄が解放されないのですか?」
 「私は実行犯はと言いました。ニーナは自白しましたよ。
 ウォルターに頼まれてジュリアさんに毒を与えていたとね」

 「あなた!」
 そう叫んでお母様が気を失った。
 お父様が倒れたお母様を抱きしめながら私の顔を見つめた。
 「ウォルターが、そんな馬鹿な‥‥」

 「ウォルターが私に毒を盛るなんて、私は絶対に信じないわ」

 「まだそう言いますか?
 家族仲が良いのは結構ですが、ウォルターもじきに自白するでしょう。その時になれば貴女にも何が正しかったか判ると思いますよ」
 「ウォルターに会わせてください。何故こんなことになったのか、ウォルターなら分かるかも知れません」
 私の言葉に取り調べ官がため息をついた。

 「まあ、いいでしょう。ウォルターも罪の意識を感じて自白するかも知れませんしね」

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