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4章、弟がやって来た

第30話

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 ウォルターと約束をした日、最近体調が良かった体がまた愚図りはじめた。
 一度体を壊してしまうとなかなか元に戻らないみたいだ。
 もしかしたら一生このままかもしれないと少し悲しくなった。

 学園寮の前まで迎えに来てくれたウォルターに断りを入れた。
 本当は一緒にハベル流の道場を覗いてみる約束だったのに。

 「せっかく迎えに来てくれたのにごめんね」
 「気にしなくていいよ。一人で道場を覗いてみるから。
 ハベルさんはいるんだよね」
 「うん、ガイは休日はいつも道場だって言ってた」
 「ハベルさん、どんなトレーニングしているんだろう」
 「たぶん私が観ているだけで疲れてしまうような、凄いのだと思う」
 ウォルターと二人で想像して笑ってしまった。

 「じゃあ姉さんは寮で無理しないようにね」
 ウォルターが私にマフラーを巻き付けてきた。
 「まだそんなに寒くないよ」
 「いつもこの位の時期に風邪を引いてるだろう」
 「ホーン男爵領と違って王都はまだ暖かいよ」
 「それでも姉さんは体が弱いんだから気をつけて」

 ウォルターもガイも心配性だ。ライメルス王国の男性の国民性かな?

 寮の自分の部屋へと戻った。
 誰もいない部屋。侍女のニーナも今日は休んでいる。
 ウォルターとハベル流の道場に行くつもりだと教えておいたから、今頃先回りして道場を覗いているのかもしれない。

 誰もいない部屋には慣れない。
 なつめの時は家族の誰かがいつもそばにいた。男爵令嬢になってからは侍女が側にいる。
 完全にひとりになったことが殆んどない。

 ひとりになるとつい色々考えてしまう。
 ウォルターが言っていた。私は怖がりで人を信じないと。

 心あたりはある。自分が異質だから人と親しくなるのが怖いのだ。
 私はいつもなつめとして考えている。ライメルス王国の人とどこか違っていても分からない。
 もし仲良くなってから私の異質なところがバレてしまったら?心を許したあとで拒絶されるのは怖い。

 それなのに、どうしてガイは平気なのか?
 ガイだからとしか言いようがない。

 私はガイの判断基準を信頼している。ライメルスの人だから私と考え方が違っても、ガイという人は信用できる。

 それに何となくガイは私が異質でも拒絶しないような気がする。一度懐に入れた人は最後まで守ろうとする人だ。

 結局私はどこまでもガイの優しさに甘えてしまっていた。

 

 
 

 
 
 
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