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3章、貴族も楽じゃない
第19話
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魔法学園の校舎は学年ごとに違う。
1年生は東棟、2年生は西棟、3年生は北棟。その真ん中に有る中央棟で繋がっている。
上級生と会うのは中央棟の食堂へ行く時くらいなのだが、私は定期的に医務室に通っている。医務室は西棟よりにあるので自然と2年生を見る機会が増える。
クーリエ先生に貰った貧血の薬はすごく効く。毎日薬を飲むようになってから私が倒れる回数が激減した。
クーリエ先生が相変わらず揶揄ってくるので医務室に行く回数を減らしたいのだが、この薬の効能が作って3日しか持たない。どうしても3日ごとに医務室に通うことになる。
その日も医務室で貧血の薬を貰った帰りだった。
医務室を出てすぐの所に西棟と中央棟を結ぶ廊下がある。
私が医務室を出るとその声が聞こえてきた。
「平民が何で魔法学園にいるんだかな」
「まさか魔法学園で青髪を見ることになるなんて思わなかったよ」
「お前さあ、殿下の護衛が下級魔法3発しか打てないなんて恥ずかしくないの?」
「エドワード殿下も何がよくて青髪なんか連れ歩いているんだか?」
エドワード王子の護衛が3人の生徒たちに囲まれていた。いつも一緒にいる王子が今日はいない。
「いくら剣術が優れていたって青髪じゃあな」
3人がイヤな顔をして笑っていた。
イジメだ。こういうの大っ嫌い。
青髪の護衛は慣れているのか平然とした顔をしていた。でも不快に思っているのは見ていて分かる。
「あら、青髪をバカにしてるからどんな素晴らしい髪色かと思ったら、よくある茶髪でしたのね」
貴族で一番多いのは茶髪だ。私には青髪の方がよっぽどレアで高級そうに見える。
私は自分の銀髪をサラリと見せつけた。
ククッと青髪の護衛が笑った。
「銀髪に言われたら誰も何も言えないな」
「男爵令嬢が出しゃばるなよ。家格の上下も分からない田舎者のくせに」
一人が今度は身分を持ち出してきた。
「家格なら俺が一番だ。
カイル・ビスナード侯爵令息だと知って青髪だ何だと因縁を付けてきたのなら、侯爵家に遺恨があるのかな?ダイン伯爵令息」
「覚えていろよ」
ダイン伯爵令息たちが私を睨み付けて去って行った。
どこの世界でも悪役の捨て台詞はいっしょだな。
「ビスナード侯爵家に擦り寄りたいのかな?」
カイル・ビスナードが皮肉げな笑みを浮かべて私を見つめた。
「田舎者なので貴方がビスナード侯爵家の子息だと知りませんでした」
「じゃあ何故俺を庇うようなことを?」
「キライなんです。大勢で一人を囲むようなやり方」
「ホーン男爵令嬢は気が強いバカなんだな」
カイルがまた皮肉げな笑みを浮かべた。
「何で言われたままでいたんですか?
高位貴族ならさっさとやっつければ良かったのに」
「あいつらが言ったのは本当のことだ。いちいち反論するのもバカらしい」
カイルが胸に手を当て頭を下げた。
「今までの無礼を謝る。ホーン男爵令嬢が身分も弁えず殿下をねらっているのだと思っていた」
「私はエドワード王子に興味はありません」
「そのようだな。馬車で送られることも断ったしあれから近づくこともない」
「わかっていただけて良かったです」
「ダイン伯爵令息には気を付けろ。あれは根に持つ男だ。まあ、そいつが護衛に付いているから大丈夫か」
カイルの視線の先にガイがいた。
「帰ってくるのが遅いから、また倒れたのかと心配した」
ガイが走りよって来た。
「ガイ・ハベル、お前のお姫様は存外気が強い。気を付けろ」
カイルが去り際に言って寄越した。
1年生は東棟、2年生は西棟、3年生は北棟。その真ん中に有る中央棟で繋がっている。
上級生と会うのは中央棟の食堂へ行く時くらいなのだが、私は定期的に医務室に通っている。医務室は西棟よりにあるので自然と2年生を見る機会が増える。
クーリエ先生に貰った貧血の薬はすごく効く。毎日薬を飲むようになってから私が倒れる回数が激減した。
クーリエ先生が相変わらず揶揄ってくるので医務室に行く回数を減らしたいのだが、この薬の効能が作って3日しか持たない。どうしても3日ごとに医務室に通うことになる。
その日も医務室で貧血の薬を貰った帰りだった。
医務室を出てすぐの所に西棟と中央棟を結ぶ廊下がある。
私が医務室を出るとその声が聞こえてきた。
「平民が何で魔法学園にいるんだかな」
「まさか魔法学園で青髪を見ることになるなんて思わなかったよ」
「お前さあ、殿下の護衛が下級魔法3発しか打てないなんて恥ずかしくないの?」
「エドワード殿下も何がよくて青髪なんか連れ歩いているんだか?」
エドワード王子の護衛が3人の生徒たちに囲まれていた。いつも一緒にいる王子が今日はいない。
「いくら剣術が優れていたって青髪じゃあな」
3人がイヤな顔をして笑っていた。
イジメだ。こういうの大っ嫌い。
青髪の護衛は慣れているのか平然とした顔をしていた。でも不快に思っているのは見ていて分かる。
「あら、青髪をバカにしてるからどんな素晴らしい髪色かと思ったら、よくある茶髪でしたのね」
貴族で一番多いのは茶髪だ。私には青髪の方がよっぽどレアで高級そうに見える。
私は自分の銀髪をサラリと見せつけた。
ククッと青髪の護衛が笑った。
「銀髪に言われたら誰も何も言えないな」
「男爵令嬢が出しゃばるなよ。家格の上下も分からない田舎者のくせに」
一人が今度は身分を持ち出してきた。
「家格なら俺が一番だ。
カイル・ビスナード侯爵令息だと知って青髪だ何だと因縁を付けてきたのなら、侯爵家に遺恨があるのかな?ダイン伯爵令息」
「覚えていろよ」
ダイン伯爵令息たちが私を睨み付けて去って行った。
どこの世界でも悪役の捨て台詞はいっしょだな。
「ビスナード侯爵家に擦り寄りたいのかな?」
カイル・ビスナードが皮肉げな笑みを浮かべて私を見つめた。
「田舎者なので貴方がビスナード侯爵家の子息だと知りませんでした」
「じゃあ何故俺を庇うようなことを?」
「キライなんです。大勢で一人を囲むようなやり方」
「ホーン男爵令嬢は気が強いバカなんだな」
カイルがまた皮肉げな笑みを浮かべた。
「何で言われたままでいたんですか?
高位貴族ならさっさとやっつければ良かったのに」
「あいつらが言ったのは本当のことだ。いちいち反論するのもバカらしい」
カイルが胸に手を当て頭を下げた。
「今までの無礼を謝る。ホーン男爵令嬢が身分も弁えず殿下をねらっているのだと思っていた」
「私はエドワード王子に興味はありません」
「そのようだな。馬車で送られることも断ったしあれから近づくこともない」
「わかっていただけて良かったです」
「ダイン伯爵令息には気を付けろ。あれは根に持つ男だ。まあ、そいつが護衛に付いているから大丈夫か」
カイルの視線の先にガイがいた。
「帰ってくるのが遅いから、また倒れたのかと心配した」
ガイが走りよって来た。
「ガイ・ハベル、お前のお姫様は存外気が強い。気を付けろ」
カイルが去り際に言って寄越した。
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