上 下
18 / 69
3章、貴族も楽じゃない

第18話

しおりを挟む
 魔力開封の儀式が終わると順番に大きな水晶のようなものに触れていく。

 このシーンはゲームの中と同じだ。魔力開封の儀式はゲームには無かったけど。
 この世界とあの乙女ゲームの関係はどうなっているんだろう?

 私の番になり水晶に触れると金色の光が瞬いた。
 水晶の光によって魔力量がわかる。
 青が一番低く緑、黄色、オレンジ色、赤、最高の魔力量が金色だ。

 見守っていた全員がどよめいた。

 今年の1年生の中に他に金色に光ったものはいなかった。
 一番魔力量が多いのが男爵家の私である。
 だってヒロインだもの。ちょっと泣きたくなった。

 「王族以外のものが金色に光らせるのは珍しいな。
 確か先代のルアーノ公爵ぶりか、王族でも金色になるのは少ない。
 私も赤止まりだ」
 ジェームズ王太子の言葉に私は青くなった。
 殿下が声を立てて笑った。
 「別に責めているわけではない。
 王国の貴族が強い魔力を持つことは良いことだ。
 それにしても男爵家の者とはな」

 王太子が私をじっと見つめてくる。
 ジュリアのバランスの悪さが嫌になる。
 体力は最弱、魔力は最高。でも魔力って戦う為にあるんだよね。魔物の前で貧血で倒れたりしたら殺されちゃうと思う。

 「ジュリア・ホーン、其方にはまた会いたい」
 王太子は王宮へ去るときそう言ったが私はもう会いたくない。

 ジェームズ王太子はたぶん攻略対象者ではない。
 権力的には最高だけど乙女ゲーム的にはちょっと地味な感じ。第2王子のエドワードに比べてイケメン度が低い。

 でもそんなの関係なく王族との付き合いは遠慮したい。
 恋愛でなくとも、たとえ友人だとしても、そんな権力者とまともに付き合えるスキルが自分にあるとは思えない。

 「ジュリアは凄いな。金色の魔力を持つ男爵令嬢なんて聞いたことがない」
 「ガイはオレンジ色だったよね。髪の色とおんなじだ」
 「髪の色は魔力を表すからな。金髪や銀髪の人間は魔力が高い。青い髪は体力はあるが魔力に恵まれないと聞いている」
 「ふーん、そうなんだ」
 私はエドワード王子の護衛をしていた青い髪の騎士のことを思い出していた。

 エドワード王子は2年生、その護衛の彼も2年生だから今ここにはいない。
 王子の護衛を任されるくらいだ、相当強いのだろう。でも魔力は最弱の青い髪。一体どれほどの努力をしたのか?

 私はずっと睨み付けていた感じの悪い彼の評価を、少しだけ上方修正した。
 

   



 
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?

蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」 ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。 リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。 「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」 結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。 愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。 これからは自分の幸せのために生きると決意した。 そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。 「迎えに来たよ、リディス」 交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。 裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。 ※完結まで書いた短編集消化のための投稿。 小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~

けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。 秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。 グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。 初恋こじらせオフィスラブ

【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

処理中です...