上 下
15 / 69
2章、ライメルス魔法学園

第15話

しおりを挟む
 記憶って何だろう?

 私にジュリアだった記憶は残っていない。
 それなのに私はライメルス語の読み書きが出来る。

 最初はあまりに自然に話していたからライメルスの言葉を喋っているって気付かなかった。
 でもやっぱり日本語と違うわけ。巻き舌とかをよく使うの。向こうの言葉だとイタリア語に近い響きがする。

 文字はさすがに日本語じゃないとすぐに分かった。
 日本語じゃない、でも普通に読めるし書くこともできる。
 ライメルスの文字はとても変わっている。ちょっと見、楽譜みたい。五線譜に文字を書いているからね。

 でもその楽譜みたいな文字を私は普通に読んでいる。

 私はジュリアの蓄えた知識を使っているのかな?
 それとも私は最初からジュリアでそれを忘れてしまっているのかな?
 佐倉なつめって本当にいたのかな?
 私はなつめだって思い込んでいる頭のおかしくなったジュリアじゃないよね。

 ちょっと考えると頭の中がぐるぐるしてくる。

 隣の席にはガイが座っている。ガイを見ると私の気持ちが少し落ち着いてきた。
 
 私たちのクラスは1年1組、1年の時は成績は関係なくクラスはランダムにわけられている。2年から1組から6組の順に成績順に集められるようになる。

 魔法学園には貴族しかいない。席順も家の爵位の高さで前中央から座っている。
 つまり前列の中央に王族が、いなければ公爵家、侯爵家の高位貴族から座っていく。
次に伯爵家、子爵家、男爵家は最後尾の席。

 だから男爵家の私の隣に伯爵家のガイがいるのは本来ならおかしなことなのだが、ガイの体が大きくて後ろが見え難くなることを理由にガイは私の隣の席に追いやられた。

 本当は私の保護者の様になっているガイをみんなが私の隣につけてくれたのだ。
 私は細くて小さくって、見ている周りの人が心配になるみたい。

 私のガイ依存が進んでいる。
 初めて見たものを親と思い込む雛鳥のようにガイの後ろに着いて行きたくなる。
 ガイの側にいると安心する。

 実際に私がジュリアになって最初に見たのは侍女のニーナだしホーン男爵家の家族なのだが、あの時はまだ全ては夢だと思っていた。

 私が現実を受け止めて初めて出来た友達がガイだ。
 ガイは優しくて面倒見がいい。私はちょっと心配になる。
 このまま私のガイ依存が進んだらマズいんじゃないかな?

 私は体力がなくてすぐにヘバる。すぐにガイに頼りたくなる。体力的にも精神的にも。

 ガイにだって魔法学園でやりたいことがあるだろう。
 顔が広いし知り合いだって沢山いるみたいだ。

 これ以上ガイにべったりしていないで自立しなければ。

 まず女性の友達を作ることから始めてみよう、そう思った。
 

 
 



 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

処理中です...