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2章、ライメルス魔法学園

第7話

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 王都シャンデルまでの道のりは本当に大変なものだった。

 たった4日間の旅とナメてはいけない。馬車での移動はお尻も痛くなるし、何より魔獣が出るから街に入ってからしか休めない。

 山道で魔獣に襲われたときは死ぬかと思った。

 大きな黒豹のような魔獣が馭者に襲いかかる。護衛の騎士が倒してくれたが、あのギラリと光る肉食獣の瞳が忘れられない。

 夢かも知れないなんて甘い気持ちは、私の中から吹き飛んでいた。

 私がこれから入学するのはライメルス魔法学園だ。
 勉強するのは魔法での戦い方。学園の敷地にはダンジョンもあり、実地で戦い方を学んでいくのだ。

 ゲームとして遊んでいるときはRPG要素も入っていて面白いと思っていたけど、私、魔獣と戦うの?戦えるのー?!

 もう乙女ゲームなんてどうでもいい、まず生き延びることを優先しよう。
 攻略対象者?何、それ、おいしいの?

 確かダンジョンに潜る時はパーティーを組まされていたから、誰か強そうな人に寄生しよう。よし、小判鮫作戦だ。

 私みたいな見るからに足手まといとパーティーを組んでくれるかな、と不安にもなるけれど、私はヒロインだ。あんまり育ってなくともヒロインだから、きっとお情けでパーティーに入れてもらえるくらいの魅力はあるはず。あってくれ!

 そう言えば王都に入ってからユニコーンを見かけた。
 茂みの中から急にユニコーンが現れた時はびっくりしたけど、行き交う人々は見向きもしなかった。あれは奈良県民が鹿を見る目だ。

 ユニコーンなんてゲームや物語の中では聖獣扱いされているけれど、王都シャンデルでは珍しくないらしい。そう言えば国旗にも描かれていた。シャンデルの名物なのかも知れない。
 じっと見ていると田舎者と思われそうなので、私も見飽きている風を装った。

 馬車の窓からそれでもチラッと見つめたら、ユニコーンが馬車と並走してきた。
 これはあれか、目を合わせてはいけない獣なのかな?
 だからみんな、ユニコーンがいても見ないようにしているのかも。

 ごめんなさい、馭者の人。ユニコーンがそんな危険な獣だって知らなかったんだよ。

 王都の中心地は幾重にも道が入り組んでいる。
 なんとかユニコーンを撒くことに成功したらしい。

 魔法学園の敷地に着いた時にユニコーンがいなくなっていて、本当にホッとした。

 
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