下町育ちの侯爵令嬢

ユキ団長

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風評被害[ギルバート視点]

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  短い冬休みが終わった。その冬休みの間にユインティーナ様が少し変わった。何だか色っぽくなったのだ。
  元々ユインティーナ様は美少女だったが隠し切れない何かがあり、残念な美少女だった。それが新学期が始まってから時々何かを思い出してはため息をついたりしている。
  その色香に迷った男達がユインティーナ様に次々と告白した。
 「ごめんなさい。恋人がいるの。」と彼女が断る。
  その度に琥珀の髪飾りに気付いた男に睨みつけられた。
  
  琥珀の髪飾りについては新学期の初日にエドガー兄さんから贈られたものだと聞いていた。
 「エドガー兄さんと婚約したの?」
 「婚約は成人してからになったの。」
 「どうして?自分の色のアクセサリーを贈るのはプロポーズだろう。兄さんだったら家格的にも能力的にも問題ないのに。」
 「お母様が婚約したら成人前に妊娠させられそうだからって。」
 「お前なぁ、女なんだからもう少し言葉を選べよ。でも婚約してないと面倒だな。」
 「えっ、何が?」
 「婚約しないとアクセサリーを貰った相手の名前を明かせないんだよ。そうでないと貰ってもいないアクセサリーを貰ったと言い出す女がいるだろ。」
 「そうなんだ。あっ、じゃあギルバートに言ったのもダメだった?」
 「おれは親族だからギリギリあり。それより嫌な予感がする。」

  おれの嫌な予感は的中した。みんなが琥珀の髪飾りとおれを結びつけて考えたのだ。エドガー兄さんがユインティーナ様と親しいことを知っている人は学園に殆どいない。
サポート役で常にユインティーナ様と一緒に行動しているおれは兄さんと同じ琥珀色の瞳をしている。疑うなと言う方が無理だ。

  否定しても否定しても信じてもらえない。ユインティーナ様が成人したら婚約すると言ったので、あと一年の辛抱だな、と肩を叩かれたりする。
  幼馴染のニールがやって来て「お前、スゴイな!」と言った。
 「あのユインティーナ様に何をしたらあんなに色っぽくできるんだよ。」
 「おれは何もしていない。」
 「またまた、そんな事言っちゃって。あんなに色っぽくなるならオレも口説いてみればよかったな。」
  まるで自分でも落とせると思っているようなニールの言動に腹がたつ。エドガー兄さんが相手でも同じことが言えるのかよ。
  他の男たちもおれがライバルならいけると思うようで、ユインティーナ様を狙う男は後を絶たない。
  
  おれが一番堪えたのはソフィアにまで冷たい目で見られたことだ。
  今までユインティーナ様という問題児をカバーするために協力し合ってきた。その相棒が冷たい口調で言った。
 「試験前に随分と長い時間ユインティーナ様と二人で勉強していると思ったら、下心がおありでしたのね。」
 「違うんだ。おれはユインティーナ様に髪飾りなんて渡してない。」
 「アンベール家なら家格にも問題ありませんし、どうせ成人したらお披露目するんでしょう。サポート役として隠し事は嬉しくありませんが、家のことがありますから仕方ないですわね。」
  まるっきり信じてもらえない。

  おれはエドガー兄さんに言いたい。アクセサリーを渡すにしてもどうして髪飾りなんて目立つものにしたんだよ。男避けのつもりだろうけど、むしろ男を惹き寄せているから。
  兄さんがユインティーナ様に何をしたのかは聞かない。だけどおれを巻き込むのは、もうやめてくれよ。
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