銃と少女と紅い百合

久藤レン

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転校生ちゃんと不審者さん

4-3 華皇学園

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 華皇学園、小中高一貫の女子校であり、所謂お嬢様学校である。広い敷地は最先端のセキュリティで守られており、お金持ちのお嬢様方は日々安全に学生生活を送っている。校舎はとても綺麗で見ただけでは西洋のお城と勘違いしてもおかしくない様な建物だった。そんな大きなお城がいくつか敷地内に建っている。

 その中の一つ、初等部として使われている建物の二階にある教室の扉の前で花守みいなは立っている。緊張で顔を青くしながら

(うう、楽しみにはしていましたけど人前に立つのはやっぱり苦手です・・・・)

 先に教室に入った教師に呼ばれるのを待っていた。

(先生はとても優しそうな人で安心です・・唯牙さんと同じくらいの年齢ですかね・・・? そういえば唯牙さんの年齢聞いたこと無かったです・・)

 頭の中が緊張でグルグル余計な事が渦巻いている。


「それではご紹介します、みいなさん、どうぞ!」


 教室の中から声がかかる。ブンブンと頭を振り余計な考えを振り払い、背負っていたカバンの肩紐をぎゅっと握る。

「よし!」

 扉を開けて中に入ると、拍手で迎えられた。音の方を見るとクラスの生徒達が皆笑顔で迎えてくれていた。お上品な建物に相応しいおしとやかな笑顔で、拍手の音も大人しいお上品な音を響かせている。

 呼ばれた教師の横まで歩いていき、ペコリとみいなが頭を下げるとお上品な拍手は止まった。


「今日からこのクラスに転入されます、花守みいなさんです、みいなさん自己紹介お願いできますか?」

「はっ、はい」

 みいなは絶対に来るだろうなと思っていたが、いざ大勢の前で喋るとなるとなかなか勇気がいる様だ。

「は、花守、みいなです! その、あの、み! 皆さんと早く仲良くなれるといいなと思います! よろしくお願いします!!」

 言い終わり腰から大きく頭を下げてお辞儀をすると、またお上品な拍手が鳴り響いた。顔を上げると横で教師も同じく手を叩いてくれている。

「はい、みいなさんはまだこの学校の事で分からない事も多いと思います、皆さんできる限りサポートしてあげてくださいね、さあ、みいなさんの席はあちらです」

 みいなが手で案内された方を見ると窓際の一番後ろの席だった。

「はいはいはーい! 先生! 私が案内します!」

 空いている席の一つ前の少女が元気よく手を挙げている。

「案内する程の事でもないけれど・・・・そうね、奈月さんお願い」

「はーい!」

 元気よく返事をして少女は自分の机から立ち上がりみいなの元へやって来る。

「えへへ、私、宇佐美 奈月《うさみ なつき》! よろしくね! みいなちゃん」

「は、はい! よろしくお願いします」

 嬉しさと少し気恥ずかしさで顔が赤くなる。

「こっちだよ! 行こう!」

 宇佐美はみいなの手を取り歩き出す。

「ここがみいなちゃんの席です!」

 角の席まで手を引かれ、宇佐美は両手でみいなの席を示す。

「あ、ありがとうございます、えっと・・・・奈月さん・・」

「えへへ、私みんなにウサちゃんって呼ばれてるから、みいなちゃんもそう呼んでくれると嬉しいな!」

「わ、分かりました・・・う、ウサちゃん・・・」

「うん! これからよろしくね! みいなちゃん!」

 宇佐美は笑顔で迎えてくれた。

「はい! さっそく仲良くなったのは素敵ですが、朝礼を始めますよ、二人とも席について」

「は、はい!」 「は~い!」

 みいなの緊張はいつの間にか解けて、これからの学園生活にワクワクと胸を踊らせていた。

 窓の外の天気も晴れ渡った青空で、気持ちのいい新学期の始まりを感じさせ、窓から見える青々とした葉を付ける桜の木も風に揺れている。

 その桜の木の緑の中にもぞもぞと動く黒い影が。

「ちょっと! あの子いきなり馴れ馴れしいんじゃないの!?」

 真っ黒のジャージを着て葉に紛れて木にしがみついている不審者、この物語の主人公、白銀凛々奈だ。双眼鏡を手に教室の中を覗いている。

「んー、それよりみーちゃん・・朝見逃しちゃったけど! 制服似合い過ぎ! 可愛い! 尊い! 私の天使! 写真撮らなきゃ! 永久保存よ!」

 ポケットからスマートフォンを取り出して教室へカメラを向ける。

「がぁぁ~! ズームしたら死ぬほど画質が悪い!! このポンコツ!! センセの持ってるでかいカメラ持ってこればよかった!!」

 木の上で一人でわちゃわちゃしている不審者。


「この敷地内に忍び込めるなんて、いったいどこの輩なのかしら?」

 木の下から声が聞こえた。

「あん!?」

 声の方を見ようとしたその瞬間。

 ドォン! と大きな音が鳴り、凛々奈の登っていた木が大きく揺れる。

「えっ! ちょ! 待っ!!」

 双眼鏡とスマートフォンを手にしていたのでうまく枝を掴めなかった凛々奈は木からまっすぐ落下した。

 ズドンッ

「いったーい!!」

 お尻から地面に落下し打ち付けた所を手で擦る。

「ヤバッ、見つかった!」

 凛々奈はすぐに自分の置かれた状況を理解して逃走しようとするが。

 ガシッ

「あえ?」

走るために振り上げた腕を掴まれたかと思うと。

 グルンッ!

 凛々奈の視界は落ちてきた緑の葉、みいなの校舎、地面、と目まぐるしく変わっていき。

 ズドンッ!

「あだっ! お尻ばっかり痛い!!」

 またも臀部に衝撃を受けてから自分が掴まれた腕に投げられたと理解する。


「警察に突き出す前にこちらで尋問させて頂きます」

 凛々奈を投げ飛ばした相手は低い声で倒れる不審者に言った。痛みに耐えて目を開き凛々奈は相手を見る。

「あー・・・・お久しぶりっす」


「ん? え! 凛々奈さん!?」


「お世話になっとります、学園長」

 不審者は地面にひっくり返ったまま挨拶した。



 
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