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ガールズトーク(?)でルート選択出来るかな? その2
しおりを挟むだけどわたしの中に迷いが生じる。棗ちゃんには言っても良いのかも。というか、嘘ついてもバレそうだよね?
だから意を決し、口を開く。
「けど、うん。内緒だよ?」
棗ちゃんの方へと顔を寄せ、打ち明ける。
「わたしも、あの四人の内の誰かじゃないかと思ってる」
声を顰めて言うと、棗ちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべた。女の子同士、恋バナを打ち明けあった時に見せる、あの表情。
「やっぱりそうなんですね!」
自分の予想が当たったと言わんばかりの晴れやかな表情で、でも声は顰めたまま叫ぶ。
「で、誰が一番有力候補なんですか?」
純粋にわくわくした表情の棗ちゃんを見て、ほっとした。この感じじゃ棗ちゃんの好きな人は本当にわたしの知らない人なんだろう。もし四人の中に好きな人がいるんならもっと不安気な顔になる筈だもん。
「んー。それがね、まだよく分からないのよ」
棗ちゃんの質問に答えられず、わたしは腕を組んだ。
「とりあえず、剛毅は違うんじゃないかなー、と」
棗ちゃんにいう事によって剛毅を選択肢に戻さない事にする。うん、いい考えかも。
ていうかこの際だから棗ちゃんに相談しながら誰にするか決めちゃおうかしら。
そんなわたしの思惑に気づいてるのかいないのか、棗ちゃんが真剣な顔をして呟く。
「そっか剛毅は違うのか。じゃあ透見と園比と戒夜さんの三人が可能性ありなんですね。でも、どうして剛毅は違うと思ったんですか?」
訊かれて、ちょっと困った。まさか剛毅を本気で好きな子がいるから横取りするのは気が引けるって言うのも変だし……。
でも待てよ。
「ほら、剛毅ってけっこうモテるでしょ? だから街中で女の子に囲まれてるところ見たことあるんだけど、それ見て特にそこまで嫌な気持ちとかってしなかったんだよね」
うん、これは本当の事。
「もし剛毅が〈唯一の人〉だったら、そんな場面見たらわたしきっとヤキモチ妬いちゃうかなーって……」
現実では面倒臭いからカレシなんていらなーいと言ってるわたしだけど、自分がヤキモチ妬きだという自覚は実はある。
「ああ、そうですよね。たとえ浮気はしてなくても、恋人があんな風に女の子達に群がられてたらいい気持ちはしないですよね」
なるほど、と棗ちゃんも頷いてくれる。だよね。女の子はそう思う人、多いよね?
「でもそれで言ったら園比も違うんじゃないですか?」
棗ちゃんの言葉に、わたしはきょとんとしてしまった。
「なんで?」
理由が分からず素直に尋ねる。
「だって園比がどのくらい姫様の前で女の子にちょっかいかけるのを我慢してたか知らないけど、この間わたしにベタベタ触ろうとしてた時、姫様いましたよね? その時の姫様別にヤキモチを妬いてる風には見えませんでした。どっちかというと困った弟だなーとか困った息子だなーって感じで見てましたよ?」
なるほど。
「確かにそうかも……」
ああいうキャラは嫌いじゃない。けど、確かに恋人としてよりも、キャラ萌え的な気持ちの方が強いかも……。
もっともわたし押しに弱いから本気でぐいぐい来られたら、好きになっちゃうかもだけど。
でも今んとこ園比、わたしの事はあくまで女の人の中の一人で〈救いの姫〉としか思ってないだろうから、うんそうだね。特別な人と思ってない今のままじゃ可能性薄いかも。
「という事は、戒夜と透見のどっちかかぁ……」
わたしの呟きに棗ちゃんは『それでどっちなの?』って瞳をキラキラさせてわたしを見た。ああ、かわいいなぁ棗ちゃん。
「棗ちゃんは二人にどんな印象持ってるの?」
「わたしですか?」
話を振ると、棗ちゃんはキョトンとわたしを見た。
「うん。棗ちゃんの方が付き合い長いからわたしの知らない二人を知ってるでしょう?」
決して棗ちゃんに決めてもらうとかじゃないんだけど、二人の『こんな一面もあるんだ』ってのを聞いてから決めても遅くないよね。
けど棗ちゃんは「んー」と考え、言う。
「昔から二人共、あのまんまですよ? 戒夜さんは頭堅くてちょっと人のこと小馬鹿にするとこあったし、透見はぼやっとしてるかと思ったら本を読んでたり……」
……棗ちゃんから見た二人って、そうなんだ。まあ仲の良い幼馴染みだったりすると辛辣なこと言ったりもするよね。
けどついわたしが苦笑いしてしまったのか、慌てて棗ちゃんがフォローを入れる。
「もちろん二人共、良いところもありますよ? 戒夜さんはほら、一見策略家タイプで自分では動かなさそうですけど、実際はちゃんと身体鍛えて一緒に闘ってくれますし、透見も一番年下なのに誰よりも姫様や〈唯一の人〉について調べて皆を引っ張ってくれています」
これはわたし向けのフォローなんだろう。普通は闘いなんてないし、伝説を調べるのが長所になるのかどうかはビミョーだと思うし。
て、あれ?
「透見って一番年下なの?」
ゲーム買っても取説ってちらっとしか見ないから覚えてなかった。自己紹介の時も特に年齢は言わなかった気がするし。てっきり園比が一番年下だと思ってたよ。
わたしの考えに気づいたのか、棗ちゃんが笑いながら言う。
「ぱっと見は園比の方が下に見えますよね。まあ、ひとつしか違わないからそう変わらないかもしれませんけど」
「あはは。まあ、園比は自分でそう仕向けてるしね」
わたしが笑うと棗ちゃんは「ほんと困った奴よね」と呟いた。
「で、どっちが有力そうですか?」
再び瞳をキラキラさせ、棗ちゃんがわたしを見た。
「え、どっちだろ……」
眉をしかめ、考える。
しばらく思い悩んだ後、わたしは躊躇いがちに答えた。
「透見、かな」
それを聞いた棗ちゃんは「おお」と声を上げ、手を合わせる。
「あ、でもあくまで候補だよ? 今んトコ一番可能性が高いかなってだけで」
慌てて付け加える。途中で気が変わる可能性もあるから今はまだ確定は避けたい。
そのくらい透見と戒夜は僅差だった。で、考えた結果、冷たい戒夜より優しい透見の方が一緒にいて楽かなーと。
「はい、分かってます。けどそうかぁ、透見かぁ……。なんか納得出来るかも」
棗ちゃんの呟きに、疑問符が浮かんだ。
「どうして?」
「え? はい。ほら透見は昔から、それこそ誰もが知ってるけどこの伝承にそんなに興味を持っていなかった頃から一人で必死に調べ回って……。透見がいなかったらわたしたち誰も姫様の守護者になりたいなんて思わなかったと思うんですよね」
そういえば透見、夏休みの自由研究がきっかけで伝承調べだしたとか言ってたもんね。
「無自覚とはいえ〈唯一の人〉だったからここまでわたし達を引っ張ってきたと考えると、透見が〈唯一の人〉ってのがなんか納得出来たんです」
「なるほど」
棗ちゃんの言い分にありえるかもと思ってしまった。剛毅がメインヒーローっぽいと思ってたけど、案外透見がメインだったりして? だとしたら神社から見下ろす景色が懐かしい理由とかも、分かるかなぁ。
「棗ちゃん」
すっと背を正し、棗ちゃんを見る。何かを感じたらしい棗ちゃんも、すっと背を正しわたしを見た。
「確定はしないけど、確認するために透見に絞っていきたいと思うんだけど、協力してくれる?」
わたしの言葉に棗ちゃんは嬉しそうに頷いてくれた。
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