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しおりを挟むそんな卒業パーティーから数日。
あっという間に貴族の間で卒業パーティーのことが噂になった。
ううん、貴族たちだけじゃない。平民たちの間にもその噂は広まっていた。
その噂は、『第一王子はカワイイだけの令嬢にうつつを抜かしたダメ王子』だったり『どんなに愛する女性が出来たからといっても、王子が約束事を破るようでは不安だ』とか。
ふふ。カワイイだなんて、照れちゃう。
そして計画どおりに、わたしと両親は王宮に呼ばれた。当然そこには国王夫妻とユークリフ様、第二王子のルイス王子、それから公爵夫妻とレティーシャ様がいた。
召使い達をみんな下がらせしっかりとドアを閉めると、王様はひと呼吸置いてからわたしの両親を見た。そして一言。
「恩に着る」
そう言って頭を下げた。
お父様は渋い顔をしてつぶやく。
「このようなこと、娘が望まなければお引き受けはしませんでした」
「もちろんすぐには無理だが、必ず男爵家と令嬢の名誉回復は約束する」
本当だったら王様に頭を下げさせるなんてとんでもないことだけど、これは王様が望んだことなんだよね。
つまり、この間の婚約破棄騒動は王様が計画したお芝居ってこと。
ユークリフ様は、正義感が強くてまっすぐな清廉潔白な王子様だ。それはとても素晴らしいことだけれど、まっすぐすぎるのは問題。
そのことにユークリフ様自身気が付いているのだけれど、短気なところがある彼はカッとなるとつい自分の正義を優先させてしまう。
冷静になって直そうとしたことは何度もあるらしいけれど、どうしても直らないらしい。
この国では本来学園を卒業したら、第一王子は王太子となる。だけどその性格ではやがて国を治めることなど出来ないと、本人が国王陛下に進言。王様はそれに頷いて今回の計画を立てた。
このことは、今この部屋に集まっている人達だけが知ってる事実。
「では明日、第一王子の王位継承権剥奪と、第二王子とレティーシャ嬢の婚約を発表する」
つまり、ルイス王子が学園を卒業する時王太子になる。レティーシャ様が未来の王太子妃っていうのは変わらない。
「お待ち下さい。兄上本人も自覚しているのです。せめて私が学園を卒業するまで様子をみて、王太子をどちらにするかお決めになられてはいかがでしょう?」
仲良し兄弟だから、ルイス王子はユークリフ様から王太子という立場を奪ってしまうことに抵抗があるみたい。でもね。
「いや。自覚して何度も直そうとしたが、直らなかったのだ。一年や二年では直るまい」
ユークリフ様は短気な上に頑固なところもある。そのユークリフ様が覚悟を決めて自ら王様に進言したんだもん、覆すはずがない。
「しかしそうすると、兄上はこの先どうなるのですか?」
普通にただ王太子になれなかった王子なら、そのまま王族の一員としていられる。だけどユークリフ様の場合は王位継承権を剥奪された形を取る。
「詳細はまだ決まっていないが、おそらくどこかの貴族の養子になるだろう」
ルイス王子にそう言った後、ユークリフ様はすまなそうにわたしを見た。
「フィオナ、しばらくの間迷惑をかける。ほとぼりが冷めたら必ず良い縁談を持ってくるから、待っていてくれ」
はあ? 何言ってんの?
「酷いです、ユークリフ様。わたしを捨てるつもりなんですか?」
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