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第5話
その2
しおりを挟む王様の困った発言のせいで寝込んでしまったミナにとって、候補が減るのは何よりのお見舞いだと気付かされたタカも慌てて口を開きました。
「ウチも。……いや、ボクは候補から降りないけど、兄にはすでに婚約者がいるから、そこは安心して」
それに答えたのはお嬢様ではなく、イチヤとフツカでした。
「うーんじゃあ、候補はオレたち二人とタカの三人だけか」
「二対一ならオレたちが有利だね」
二人はきっと、自分ではなくてもどちらかが王様になれればそれで良いと思っているのでしょう。
「あー、そうそう。オレフツーにミナちゃんのコト、カワイイいとこだと思ってるから、キミらがムチャなコトしないか見に来るからネ」
軽い調子で言ったオミでしたが、その内容にスミさんは驚きました。
候補になった三人がどんな性格をしているのか、スミさんは知りません。旦那様や奥様がいる時でしたらお二人がお嬢様を守るでしょう。もちろんスミさんだってお嬢様を守りたいと思っています。
けれど相手は王族で、スミさんはただのメイドです。どんなに守ろうとしても相手が我を通せばスミさんの命など軽く踏み潰して自分の思い通りにするでしょう。
お嬢様にしても従妹とはいえ貴族でさえありませんから、無理に押されれば断るのは難しいでしょう。
だからそういう事が無いように、見に来てくれるとオミは言っているのです。
オミならば三人と身分が変わりませんから、簡単に無茶を止めることが出来るでしょう。
ただの軽い女好きだと思っていたのに、案外良い人なのでしょうか?
スミさんがちょっぴり感動していると、イチヤが肩をすくめ言いました。
「オミはオレたちがミナちゃんを手籠めにでもすると思ってるのかな」
それに続いてフツカが肩をすくめます。
「違うよ兄さん。オミはそれを口実にそこのメイドに会いに来るんだよ」
「はは。バレちゃったか。ケドホントーに目に余るコトはストップかけるからネ?」
たかがメイドの自分に会うためにお嬢様をダシに使った事をそのまま肯定したオミに、スミさんはがっかりしました。やっぱりオミはただの軽い男なのでしょうか。
お嬢様もまた、オミの話を聞いてちょっぴり嫌だなと思っていました。
お嬢様にとってスミさんは大好きな、とても大切な自分のメイドです。オミが本当のところ、どういう気持でスミさんに接しているのかは分かりませんが、軽くからかっているのも嫌でしたし、本気で愛人にしようとしているのだとしたら以ての外です。そして本気でスミさんの事が好きになったから……というのも、考えたくはありませんでした。
十三歳のお嬢様にこんな婚約話が出ているのです。十六歳のスミさんに結婚の話がいつ出てもおかしくはありません。
けれどお嬢様はスミさんと離れたくはありませんでした。
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