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第2話

その2

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 森の中を歩くのは大好き。
 元々生まれ育った魔女の隠れ里が森の奥深くにあったから、森はわたし達にとって遊び場のようなもの。
 とはいってもこの辺りの森じゃないんだけど。
「確かこの辺りで盗賊と切りあいになったんです」
 コーウィさんが神官様に説明している。
「そうだな。間違いない。そこらに跡が残っている」
 サージェ様も森の木や草を眺めて同意している。
 ああんもう、森の中のサージェ様、ステキ!
 もちろん普段の館で会うサージェ様も、神殿で会うサージェ様も素敵なんだけど、森の中のサージェ様はまたひと味違うっていうのかな。
 木漏れ日に輝く淡い金色の髪も、緑を映す優しいグレーの瞳も、騎士の装いをしているにも関わらずまるで森の妖精がそこに立っているのかと思っちゃうもの。
 ああでも、それもちょっと違うかも。妖精なんかよりもサージェ様の方がガッシリとした素敵な体格だし。不老の妖精は見た目が若いイメージだけど、サージェ様はとってもステキなおじさまなんですもの。
 まあどちらにしても、サージェ様に森の緑がとても似合うというのは間違いなしね!
 ああ……サージェ様、ス・テ・キ……。
「……さん。エミルさんっ」
「は、はいっ」
 呼ばれているのに気が付き、慌てて返事をして振り向く。
「何か気になる事でもありましたか?」
 神官様に訊かれて慌てて首を振る。
「いいえ。すみません、ボーッとしてました」
 嘘じゃない。ボーッとサージェ様に見惚れてただけだもん。
「……そうですか。では、当日の行動を訊かせてもらって良いですか?」
 メモを取りつつ、神官様が言う。ちらりと見ると、サージェ様達も当日の行動の記録を取っているようだ。
 わたしは「んー」と考え、思いだしながら伝える。
「当日は朝から薬草採りに森に来ていて……。夢中で採ってたから、どのくらいの時間だったかは覚えてないです。サージェ様を見つけたのは……。風に乗って血の匂いが漂ってきて……。怖かったけど、気になって恐る恐る近づいてみたら倒れているサージェ様を見つけたんです。それで慌てて近づいて。服に血がついていたからせめて傷口をどうにかしなくちゃと思ってたら、コーウィさんが来たんです」
 半分以上、ほんとの事だ。
「そうです。私が仲間を呼び戻って来た時、聖女様がサージェ様を癒されていたのです」
 コーウィさんがうっとりと、わたしを見つめる。やめてほしい。
「違います。だからわたしが癒したわけじゃないんですってば」
 これはウソだけど。
「コーウィさんだって最初駆け付けた時、サージェ様の近くにいたわたしに気が付いて、サージェ様から離れろって剣を突き付けたでしょ?」
 これは本当の話。だからその時コーウィさんと一緒にというか、少し遅れて駆け付けた騎士達もその様子を知っている。
「確かにコーウィ殿は最初、エミルさんに剣を突き付けていました」
「コーウィ……。お前女性に対してそんな失礼な事をしたのか?」
 ため息交じりにサージェ様が言う。
「サージェ殿はその時は?」
「まだ意識を失っておりました。ですから以前も申し上げました通り、誰が私を癒して下さったのか、私は知らないのです」
 まだ何か言いたそうなコーウィさんを置いて、神官様は淡々と事実確認をしている。ていうか、再確認。この辺りの話はもう、散々神殿でもした事。
「ではまず、コーウィ殿がこの場所から神殿まで助けを求めに戻り、再びこの場所まで戻ってくるまでの時間を計ってみましょうか」

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