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第26章 さくらの本音 at JR宇都宮線ヒガハス

さくらの本音①

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 呼び鈴が鳴ると同時に、パタパタと小さな足音が響く。大階段を降りたその影は、廊下を駆け抜けて一気に玄関まで辿り着いた。

「お嬢様。お帰りは?」

「そんなに遅くならないと思うわ。また連絡するわね」

 厚底のブーツを履いて、紐を締め直す。立ち上がると、ロングスカートの裾がまるで天女の着物のようにふわっと舞い上がった。

「それじゃあ、行ってくるわね」

 右肩には三脚のケース。肩掛けのショルダーバックの中身はカメラとレンズだ。見た目は華やかなお嬢様だが、その持ち物はまるで似つかわしくない。

 だが、その装備こそが、青葉=スランヴァイルプール=ひばりのアイデンティティそのものであった。

 勢いよく玄関を飛び出したひばりは、小走り気味に庭園を抜けていく。そして、開かれた門扉の先には、乗用車とそれに腰掛けた少女の姿があった。

「お待たせ、さくらさん」

「おお。相変わらず重武装だな」

 ひばりの格好を頭の先から足の先まで眺めたさくらは、率直な感想を述べた。ひばりの華奢な体つきが、余計に荷物の重量感を際立たせていた。

「仕方ないわ。写真の撮影には色々道具が必要なのよ」

「まあ、それはわかるけどな。私も似たようなもんだし」

 後部座席を指さした。三脚やカメラケースらしきものが既に搭載されている。

「後ろに載せとけよ」

「ありがとう。助かるわ」

 ひばりが後部座席に荷物を詰めているうちに、さくらは運転席へと移動して、エンジンをかけていた。

「本当にありがとう。車出してくださって」

 助手席に乗り込みながら、ひばりはそう言った。

「いや、良いよ。前にもこんなことあったしさ」

「荷物がかさばるから、公共交通機関だけで行くの大変なのよね」

「ははは。確かにそうだ」

 サイドブレーキを解除する。

「んじゃあ、行くか」

「よろしくね、さくらさん」

「あいよ。お任せください、お嬢様」

 冗談めかしながら、ウインカーをつける。前方、側方、後方と安全確認をした彼女は、滑り出すように車を発進させた。
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