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第25章 2人きりの鉄路 at 流鉄流山線
2人きりの鉄路②
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「遅くなってごめん!」
馬橋駅の跨線橋の上で私はひばりと合流した。私としたことが、乗り過ごして待ち合わせ時間に遅刻だなんて、申し訳が立たない。まして、相手はひばりだ。余計に罪悪感が募る。
「平気よ。河童の川流れ、弘法も筆の誤り、上手の手から水が漏る。そういうときだってあるわよ」
はあ、ひばりは優しい。これがさくらだったら、嫌みの1つや2つでも平気で飛んできそうだ。
さくら……? いやいや、今は考えないようにしよう。折角の鉄道旅なのだから。
「さあ、行きましょう」
階段を降りていく。下りきると目の前には改札が立っていた。ちなみに、自動改札ではない。すなわち、常磐線の入り口ではないということだ。
そう、本日目的の路線はもう1つしかない。流鉄流山線だ。
流山線は千葉県内を走る私鉄で、馬橋と流山の間を結ぶ短い鉄道である。東京のベッドタウン・流山に至る路線でありながら、西武から譲り受けた2両編成の電車が走るのどかな鉄道である。都心から最も近いローカル線とも言われているそうだ。
早速乗ってみよう。古めかしい車両に乗り込むと、ここが東京都心にほど近い首都圏であることを忘れてしまいそうだ。
「はあ……。予定の電車の1本次のに乗れて助かったよ」
「良かったわね。本数の少なくない路線で」
いや、ほんとその通り。流山線はローカル線といえども短い路線だし、その上首都圏を走る鉄道だ。日中でも20分間隔で走っているので、ある程度のリカバリーが効いたのだ。これが本当に閑散としたローカル線だったら悲惨も悲惨である。
それに、ひばりの話し方には嫌みがない。本当に良かったと思っているのが伝わってくるのだ。もし、これがさくらだったら、同じ言葉でも嫌みが混じってくるだろう。あいつはそういうやつなのだ。
……さくらか。いないんだよね、この場に。次にあいつと一緒に出かけられるの、いつになるんだろう。そんな日は果たしてやってくるのだろうか。あいつが機嫌を直してくれないと……。
「みずほさん?」
「へ!?」
「どうしたの? もう発車してるわよ?」
「え? あっ、本当だ」
気付かぬ間に流山へ向けて発進していたようだ。私としたことが、こんなことにも気付かないなんて。
「珍しいわね、走ってるのに俯いてるなんて」
「え? ああ、ちょっとね」
いかんいかん。流山線に乗るのは初めてなんだ。周囲の景色をちゃんと目に焼き付けておかないと。
馬橋駅の跨線橋の上で私はひばりと合流した。私としたことが、乗り過ごして待ち合わせ時間に遅刻だなんて、申し訳が立たない。まして、相手はひばりだ。余計に罪悪感が募る。
「平気よ。河童の川流れ、弘法も筆の誤り、上手の手から水が漏る。そういうときだってあるわよ」
はあ、ひばりは優しい。これがさくらだったら、嫌みの1つや2つでも平気で飛んできそうだ。
さくら……? いやいや、今は考えないようにしよう。折角の鉄道旅なのだから。
「さあ、行きましょう」
階段を降りていく。下りきると目の前には改札が立っていた。ちなみに、自動改札ではない。すなわち、常磐線の入り口ではないということだ。
そう、本日目的の路線はもう1つしかない。流鉄流山線だ。
流山線は千葉県内を走る私鉄で、馬橋と流山の間を結ぶ短い鉄道である。東京のベッドタウン・流山に至る路線でありながら、西武から譲り受けた2両編成の電車が走るのどかな鉄道である。都心から最も近いローカル線とも言われているそうだ。
早速乗ってみよう。古めかしい車両に乗り込むと、ここが東京都心にほど近い首都圏であることを忘れてしまいそうだ。
「はあ……。予定の電車の1本次のに乗れて助かったよ」
「良かったわね。本数の少なくない路線で」
いや、ほんとその通り。流山線はローカル線といえども短い路線だし、その上首都圏を走る鉄道だ。日中でも20分間隔で走っているので、ある程度のリカバリーが効いたのだ。これが本当に閑散としたローカル線だったら悲惨も悲惨である。
それに、ひばりの話し方には嫌みがない。本当に良かったと思っているのが伝わってくるのだ。もし、これがさくらだったら、同じ言葉でも嫌みが混じってくるだろう。あいつはそういうやつなのだ。
……さくらか。いないんだよね、この場に。次にあいつと一緒に出かけられるの、いつになるんだろう。そんな日は果たしてやってくるのだろうか。あいつが機嫌を直してくれないと……。
「みずほさん?」
「へ!?」
「どうしたの? もう発車してるわよ?」
「え? あっ、本当だ」
気付かぬ間に流山へ向けて発進していたようだ。私としたことが、こんなことにも気付かないなんて。
「珍しいわね、走ってるのに俯いてるなんて」
「え? ああ、ちょっとね」
いかんいかん。流山線に乗るのは初めてなんだ。周囲の景色をちゃんと目に焼き付けておかないと。
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