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第23章 来て見て発見天浜線 at 天竜浜名湖鉄道天竜浜名湖線
来て見て発見天浜線⑦
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天竜二俣を後にした私たちは、新所原方面の列車に乗り込んだ。そのまま降りることなく1両編成のディーゼルカーに揺られる続け、終点の新所原へと至る。これにて天浜線、全線完乗である。
新所原からは東海道本線に乗り換え、浜松方面へと向かった。1泊2日の鉄道旅も終わりを告げようとしている。
「ねえ、2人はお土産何買ったの?」
313系の転換クロスシートをボックス状にして座り合う。このタイプの313系は名古屋圏で使われているもので、静岡県内に乗り入れる運用もあるんだと感じている次第だ。
「私はやっぱり切符だよ」
さくらが取り出したのは、アニメキャラの描かれた台紙に載せられた硬券だった。確か、人気アニメの聖地になったことで発売されたコラボ商品だ。
「さくら、それ見てたっけ?」
「ううん。よくわかんないけど、硬券だから買っちった」
何だ、そりゃ。作品のファンが聞いたら怒られるぞ。
「私はね、転車台マドレーヌを買ったの」
続いて、ひばりの番。
「あっ、それ私も買ったよ!」
その名の通り、天竜二俣駅の転車台をイメージして作られたマドレーヌだ。売上ナンバーワンの超大人気商品なんだとか。
「しかし、お菓子メーカーのお嬢様がお菓子を買うとはな」
「あら、さくらさん。私だって自社の製品以外も食べたくなるときだってあるわ。それに、パパにあげれば、味の研究になるかもしれないじゃない」
「ははっ、自分ちの会社のことまで考えてるの?」
「まさか。冗談よ」
良かった。お土産なんて自分の欲しいものを買えば良いんだ。他人に忖度する必要なんてない。少なくとも、私たちは学生なのだから。
「で、みずほは何買ったんだよ?」
「私はね……」
お土産袋の中からいくつもの商品が出てくる。
「さっきの転車台マドレーヌでしょ。こっちは列車型のマグネット。お母さんが冷蔵庫にメモ貼ってるからさ、それに使えないかなって。あと、こっちはお箸ね。キハ20カラーリングと、天浜線カラーリング。これでご飯食べたら絶対美味しいと思うんだよね。あとは――」
「ストップストップ! お前、買いすぎだろ」
「えー、だって我孫子さんに売上に貢献しますって言っちゃったし。それに、面白そうな商品沢山あったんだよ」
だからってさあ、と若干引き気味のさくら。愉快そうに笑うひばり。取り出した商品をしまう私。三者三様だ。
そう、本当に私たちは個性が違う。バラバラなんだ。そんな3人で出かける鉄道旅だからこそ面白い。楽しいし、一種の化学反応が生まれるのだ。
時は年末。もうすぐ年の瀬。早いものでもうすぐ今年も終わる。
この1年が充実していたのは、間違いなくこの2人がいたからこそだ。
来年も再来年も、この3人で鉄道旅ができますように。暮れなずむ静岡県の街並みに向かって、私自身の願いが溶けていった。
『歴史いっぱい、魅力いっぱい。一度はおいでよ、天浜線。 MIZUHO』
新所原からは東海道本線に乗り換え、浜松方面へと向かった。1泊2日の鉄道旅も終わりを告げようとしている。
「ねえ、2人はお土産何買ったの?」
313系の転換クロスシートをボックス状にして座り合う。このタイプの313系は名古屋圏で使われているもので、静岡県内に乗り入れる運用もあるんだと感じている次第だ。
「私はやっぱり切符だよ」
さくらが取り出したのは、アニメキャラの描かれた台紙に載せられた硬券だった。確か、人気アニメの聖地になったことで発売されたコラボ商品だ。
「さくら、それ見てたっけ?」
「ううん。よくわかんないけど、硬券だから買っちった」
何だ、そりゃ。作品のファンが聞いたら怒られるぞ。
「私はね、転車台マドレーヌを買ったの」
続いて、ひばりの番。
「あっ、それ私も買ったよ!」
その名の通り、天竜二俣駅の転車台をイメージして作られたマドレーヌだ。売上ナンバーワンの超大人気商品なんだとか。
「しかし、お菓子メーカーのお嬢様がお菓子を買うとはな」
「あら、さくらさん。私だって自社の製品以外も食べたくなるときだってあるわ。それに、パパにあげれば、味の研究になるかもしれないじゃない」
「ははっ、自分ちの会社のことまで考えてるの?」
「まさか。冗談よ」
良かった。お土産なんて自分の欲しいものを買えば良いんだ。他人に忖度する必要なんてない。少なくとも、私たちは学生なのだから。
「で、みずほは何買ったんだよ?」
「私はね……」
お土産袋の中からいくつもの商品が出てくる。
「さっきの転車台マドレーヌでしょ。こっちは列車型のマグネット。お母さんが冷蔵庫にメモ貼ってるからさ、それに使えないかなって。あと、こっちはお箸ね。キハ20カラーリングと、天浜線カラーリング。これでご飯食べたら絶対美味しいと思うんだよね。あとは――」
「ストップストップ! お前、買いすぎだろ」
「えー、だって我孫子さんに売上に貢献しますって言っちゃったし。それに、面白そうな商品沢山あったんだよ」
だからってさあ、と若干引き気味のさくら。愉快そうに笑うひばり。取り出した商品をしまう私。三者三様だ。
そう、本当に私たちは個性が違う。バラバラなんだ。そんな3人で出かける鉄道旅だからこそ面白い。楽しいし、一種の化学反応が生まれるのだ。
時は年末。もうすぐ年の瀬。早いものでもうすぐ今年も終わる。
この1年が充実していたのは、間違いなくこの2人がいたからこそだ。
来年も再来年も、この3人で鉄道旅ができますように。暮れなずむ静岡県の街並みに向かって、私自身の願いが溶けていった。
『歴史いっぱい、魅力いっぱい。一度はおいでよ、天浜線。 MIZUHO』
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