上 下
127 / 184
第21章 津軽・ザ・ウェイ at 津軽鉄道津軽鉄道線

津軽・ザ・ウェイ①

しおりを挟む
 ブー、ブー。ピピピピ、ピピピピ。

 けたたましいアラーム音が鳴り響く。眠りの中にいた私の意識は一瞬にして現実世界へと引き戻された。

 もぞもぞと動きながら手を伸ばす。どこだ、スマホ。スマホ、スマホ、スマホ……。

 ああ、なんか固いのに当たった。これだな。薄目を開けながら画面を見やる。まだ陽も出ていないような時間を示していた。

 うーん? それにしても、私のスマホってこんな大きかったっけ。もうちょっと小さかった気がする。色もなんか違う。そもそもロック画面が、こないだの『HIGH RAIL』の写真になっているのはおかしい。私のロック画面は鉄道オンリーだったはずだ。

 あれ? 上体を起こしてようやく気付いた。私の枕元に自分のスマホが置かれている。んん? じゃあ、私が持ってるこれは……?

 と、その瞬間だった。暗闇の中から真っ白い腕が伸びてきた。それは即座に私の手を掴む。

「うわー!?」

 思わず悲鳴を上げてしまった。隣に並ぶ膨らんだ布団が動く。巨大な芋虫のようなそれは、掛け布団がずり落ちてその姿を顕わにする。絹のような金髪がさらりと流れ落ちた。前言撤回。芋虫なんて失礼だ。羽化した蝶のようだった。

「う……ん……。みずほしゃん……?」

 目元をこすりながら起き上がるのはひばりだった。もう片腕はしっかりと私の手を握り続けている。

「お、おはよう」

「んん……おはよう、ごじゃいま……しゅ……」

 要するに、私は間違ってひばりのスマホを握ってしまったのだ。自分のスマホは持ち主不在の状態でビービー鳴り続けている。

 つか、うるさいな。アラームを止めよう。まずは、自分のスマホから。続いて、ひばりのスマホ。

 2つのアラームを消して、それでもなおアラームは止まらない。全く、この野郎は。心の中で悪態をつきながら、足元に転がるもう1つの布団を蹴り飛ばした。「痛っ」と小さな呟きに続いて、アラームが止まる。

「痛ってえな……。蹴ることねえだろ」

 のっそりと起き上がったのはさくらだ。お前がいつまでもアラーム鳴らし続けてるのが悪い。

「ん? 何? どういう状況?」

 目をこすりながら、私とひばりを交互に見やっていた。

 そういえば、今の状況を寝起きの人間に説明するのは難しいかもしれない。何しろ、ひばりのスマホを私が握っていて、その手をひばりが握りしめているのだ。既に覚醒した私と、ぺたんこ座りで目を閉じてボーッとしているひばりという対照的な姿も、意味不明さに拍車をかけている。

「あー、うん。なんかね、私もよくわからない」

 と、そのときだった。ひばりが支えを失ったように倒れ込む。それも私の胸に向かって。

 ポスッ。

「うぇ!?」

 ひばりが私の胸の中に飛び込んでくるような形。しかも、甘えてくる小動物のようにすりすりとしてくるではないか。

 ひばりは普段からスキンシップは多い方だ。ことあるごとに、くっついてきたり、とにかく距離感が近い。だけど、ここまで他人に甘えるような素振りは見せたことがない。よりによって、それを私にやるか。この、私に。

 全身の血流が沸騰していく。これは良くない。朝から理性が保ちそうにない。

「ん……あと5分……」

「あ、やば……。幸せすぎる……」

 ひばりの頭頂部に顔を埋める。そのまま深く呼吸をすれば、彼女の華やかで甘い香りに包まれていった

 ああ、もうこのまま一生寝てても良いかもしれない。その瞬間の私は本気でそう感じてしまったのだ。すぐにさくらにぶっ叩かれて引き離されたわけなんだけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

女の子なんてなりたくない?

我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ――― 突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。 魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……? ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼ https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113

処理中です...