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第21章 津軽・ザ・ウェイ at 津軽鉄道津軽鉄道線
津軽・ザ・ウェイ①
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ブー、ブー。ピピピピ、ピピピピ。
けたたましいアラーム音が鳴り響く。眠りの中にいた私の意識は一瞬にして現実世界へと引き戻された。
もぞもぞと動きながら手を伸ばす。どこだ、スマホ。スマホ、スマホ、スマホ……。
ああ、なんか固いのに当たった。これだな。薄目を開けながら画面を見やる。まだ陽も出ていないような時間を示していた。
うーん? それにしても、私のスマホってこんな大きかったっけ。もうちょっと小さかった気がする。色もなんか違う。そもそもロック画面が、こないだの『HIGH RAIL』の写真になっているのはおかしい。私のロック画面は鉄道オンリーだったはずだ。
あれ? 上体を起こしてようやく気付いた。私の枕元に自分のスマホが置かれている。んん? じゃあ、私が持ってるこれは……?
と、その瞬間だった。暗闇の中から真っ白い腕が伸びてきた。それは即座に私の手を掴む。
「うわー!?」
思わず悲鳴を上げてしまった。隣に並ぶ膨らんだ布団が動く。巨大な芋虫のようなそれは、掛け布団がずり落ちてその姿を顕わにする。絹のような金髪がさらりと流れ落ちた。前言撤回。芋虫なんて失礼だ。羽化した蝶のようだった。
「う……ん……。みずほしゃん……?」
目元をこすりながら起き上がるのはひばりだった。もう片腕はしっかりと私の手を握り続けている。
「お、おはよう」
「んん……おはよう、ごじゃいま……しゅ……」
要するに、私は間違ってひばりのスマホを握ってしまったのだ。自分のスマホは持ち主不在の状態でビービー鳴り続けている。
つか、うるさいな。アラームを止めよう。まずは、自分のスマホから。続いて、ひばりのスマホ。
2つのアラームを消して、それでもなおアラームは止まらない。全く、この野郎は。心の中で悪態をつきながら、足元に転がるもう1つの布団を蹴り飛ばした。「痛っ」と小さな呟きに続いて、アラームが止まる。
「痛ってえな……。蹴ることねえだろ」
のっそりと起き上がったのはさくらだ。お前がいつまでもアラーム鳴らし続けてるのが悪い。
「ん? 何? どういう状況?」
目をこすりながら、私とひばりを交互に見やっていた。
そういえば、今の状況を寝起きの人間に説明するのは難しいかもしれない。何しろ、ひばりのスマホを私が握っていて、その手をひばりが握りしめているのだ。既に覚醒した私と、ぺたんこ座りで目を閉じてボーッとしているひばりという対照的な姿も、意味不明さに拍車をかけている。
「あー、うん。なんかね、私もよくわからない」
と、そのときだった。ひばりが支えを失ったように倒れ込む。それも私の胸に向かって。
ポスッ。
「うぇ!?」
ひばりが私の胸の中に飛び込んでくるような形。しかも、甘えてくる小動物のようにすりすりとしてくるではないか。
ひばりは普段からスキンシップは多い方だ。ことあるごとに、くっついてきたり、とにかく距離感が近い。だけど、ここまで他人に甘えるような素振りは見せたことがない。よりによって、それを私にやるか。この、私に。
全身の血流が沸騰していく。これは良くない。朝から理性が保ちそうにない。
「ん……あと5分……」
「あ、やば……。幸せすぎる……」
ひばりの頭頂部に顔を埋める。そのまま深く呼吸をすれば、彼女の華やかで甘い香りに包まれていった
ああ、もうこのまま一生寝てても良いかもしれない。その瞬間の私は本気でそう感じてしまったのだ。すぐにさくらにぶっ叩かれて引き離されたわけなんだけど。
けたたましいアラーム音が鳴り響く。眠りの中にいた私の意識は一瞬にして現実世界へと引き戻された。
もぞもぞと動きながら手を伸ばす。どこだ、スマホ。スマホ、スマホ、スマホ……。
ああ、なんか固いのに当たった。これだな。薄目を開けながら画面を見やる。まだ陽も出ていないような時間を示していた。
うーん? それにしても、私のスマホってこんな大きかったっけ。もうちょっと小さかった気がする。色もなんか違う。そもそもロック画面が、こないだの『HIGH RAIL』の写真になっているのはおかしい。私のロック画面は鉄道オンリーだったはずだ。
あれ? 上体を起こしてようやく気付いた。私の枕元に自分のスマホが置かれている。んん? じゃあ、私が持ってるこれは……?
と、その瞬間だった。暗闇の中から真っ白い腕が伸びてきた。それは即座に私の手を掴む。
「うわー!?」
思わず悲鳴を上げてしまった。隣に並ぶ膨らんだ布団が動く。巨大な芋虫のようなそれは、掛け布団がずり落ちてその姿を顕わにする。絹のような金髪がさらりと流れ落ちた。前言撤回。芋虫なんて失礼だ。羽化した蝶のようだった。
「う……ん……。みずほしゃん……?」
目元をこすりながら起き上がるのはひばりだった。もう片腕はしっかりと私の手を握り続けている。
「お、おはよう」
「んん……おはよう、ごじゃいま……しゅ……」
要するに、私は間違ってひばりのスマホを握ってしまったのだ。自分のスマホは持ち主不在の状態でビービー鳴り続けている。
つか、うるさいな。アラームを止めよう。まずは、自分のスマホから。続いて、ひばりのスマホ。
2つのアラームを消して、それでもなおアラームは止まらない。全く、この野郎は。心の中で悪態をつきながら、足元に転がるもう1つの布団を蹴り飛ばした。「痛っ」と小さな呟きに続いて、アラームが止まる。
「痛ってえな……。蹴ることねえだろ」
のっそりと起き上がったのはさくらだ。お前がいつまでもアラーム鳴らし続けてるのが悪い。
「ん? 何? どういう状況?」
目をこすりながら、私とひばりを交互に見やっていた。
そういえば、今の状況を寝起きの人間に説明するのは難しいかもしれない。何しろ、ひばりのスマホを私が握っていて、その手をひばりが握りしめているのだ。既に覚醒した私と、ぺたんこ座りで目を閉じてボーッとしているひばりという対照的な姿も、意味不明さに拍車をかけている。
「あー、うん。なんかね、私もよくわからない」
と、そのときだった。ひばりが支えを失ったように倒れ込む。それも私の胸に向かって。
ポスッ。
「うぇ!?」
ひばりが私の胸の中に飛び込んでくるような形。しかも、甘えてくる小動物のようにすりすりとしてくるではないか。
ひばりは普段からスキンシップは多い方だ。ことあるごとに、くっついてきたり、とにかく距離感が近い。だけど、ここまで他人に甘えるような素振りは見せたことがない。よりによって、それを私にやるか。この、私に。
全身の血流が沸騰していく。これは良くない。朝から理性が保ちそうにない。
「ん……あと5分……」
「あ、やば……。幸せすぎる……」
ひばりの頭頂部に顔を埋める。そのまま深く呼吸をすれば、彼女の華やかで甘い香りに包まれていった
ああ、もうこのまま一生寝てても良いかもしれない。その瞬間の私は本気でそう感じてしまったのだ。すぐにさくらにぶっ叩かれて引き離されたわけなんだけど。
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