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第20章 HIGH RAIL星空探訪 at 小海線
HIGH RAIL星空探訪②
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展望台から降りた私たちは、階段を降りて1階へと降り立った。階段のすぐ右手には売店がある。さて、ここで一旦買い物をしていこう。
小淵沢といえば、駅弁が有名だ。駅舎がリニューアルされてからも、駅弁屋さんは元気に営業している。私たちもここで1つ、何か買っていこうか。
店内入って、すぐに駅弁売り場へ。ここはお土産屋も兼ねているから、お弁当以外にも様々なものが売られているのだ。
「うわ、結構売り切れてんな」
POPには完売や売り切れの表記が目立つ。並んでいるお弁当の数も、心なしか少なかった。
うーん、流石に駅弁で有名な小淵沢なだけはある。日も暮れるくらいの時間帯になってくると、残るものも残らないか。特に有名どころは軒並み在庫が無くなっている。
「まあ、仕方ないね。残ってるものを買おう」
とはいえ、さてどれにするか。残り物といえど、目を引くものが並んでいる。
これは鳥めしか。駅弁といえば鳥めしという方程式が私の中には成り立っている。なるほど、これは甲州みそを使って味付けしてあるのか。
こっちは、山賊焼き弁当だ。山賊焼きといえば、信州のご当地グルメとして有名だ。小淵沢から進むとすぐに長野県に入る。その立地も活かして、信州名物もお弁当に取り入れているようだ。
その隣は、甲州ワインを使ったお弁当。直接ワインが入ってるわけではないけど、ワインの一大産地・山梨県では調理にワインを使うことも多い。甲州ワインビーフとかもあるしね。
さて、どれにするかな。懐具合とも相談して……。そうだな……。
よし、鳥めしにしよう。やっぱり駅弁といえば鳥めしなのだ。リーズナブルで美味しくて栄養もある。それが、鳥めしの最大の強みなのだ。
三者三様、手元にはそれぞれ別のお弁当が携えられていた。なんだか私たちらしいなと思った。
「何笑ってんだよ、気持ち悪いな」
「ううん、何でも」
お会計を済ませて、さあ準備は万端だ。
「ん? ちょっと待った。気持ち悪いってどういうこと!?」
「そのままの意味だろ」
「どこが気持ち悪いのさ!」
「1人で突然ニヤつき出したらキモいだろ」
「うっ……。それは確かにそうかも……」
相も変わらずさくらと口論しながら改札へと上がっていく。その様子を、ひばりが微笑ましそうに眺めるところまでがセットだ。
さて、時間もちょうど良い感じ。改札口を抜けて、跨線橋を一番奥まで渡っていく。突き当たりの階段を降りると小海線のホームだ。
先日も訪れた小海線のホーム。5番線には既に私たちが乗る予定の列車が停泊していた。
キハ100とキハ110の混血編成。だけど、この子は普通列車ではない。地元の足として走るのではなく、観光列車として走るために改造された車両。小海線の観光列車『HIGH RAIL 1375』である。
グリーンを基調とした原色とは異なり、青色をメインとしたカラーリング。星空をイメージしてデザインされた車体は、側面に銀河を思わせるような意匠も施されている。
車内に入ってみよう。一般的なセミクロスシートの車内とは大きく異なり、内部も改造が施されている。
まずは、1号車から。
こちらは車端部に固定式のボックスシートが2つ、8席分あり、車両中央には1人席と2人席が設置されている。
右手が1人席。こちらはリクライニングシートのようだ。
左手に2人席、こちらは固定式。
どちらも外に向かって座席が配置されている。進行方向に向かって配置される一般的なクロスシートとは趣を異にしていた。
2号車は、一般的な特急車両の車内を思わせる席配置のリクライニングシートだった。そして、運転台のすぐ真後ろに、この車両の最たる特徴である設備が備わっている。それこそがプラネタリウムだ。
この『HIGH RAIL』は、最も天空に近い場所を走る列車というコンセプトのもと生み出されている。それゆえに、星空をイメージした装飾が施されているのだ。
その最たるものがこのプラネタリウム。実際に星空を眺めるような体験を列車内で味わえるのだから実に面白い。
さて、私たちの席は1号車のボックス席だ。が、席に着く前に……。
「ひばり、ちょっと」
ひばりを連れて2人席へと向かう。発車時間までまだあるせいか、車内の人はまばらだ。今のうちに、ちょっとだけ。
「こっち座ってもらえる?」
「……? 良いわよ?」
困惑するひばりを座らせ、その隣に私が陣取る。
「わ、わあ……!」
2人席でひばりと一緒。まるで私たち2人だけの世界が車内に生み出されたようだ。
ひばりとほぼゼロ距離。彼女の腕と触れ合えるほどのレベル。なんなら、美しいブロンズヘアまでもが、私の首筋をくすぐるかのようだ。
「幸せ……」
ちょっとだけ、ほんとちょっとだけなら良いよね。ひばりにもたれかかってみる。ふんわりと、フローラルの香りがした。甘く爽やかな香り。これがひばりの匂い。これが彼女の香り……!
「まるでカップルシートみたいね」
「そ、そうだね!」
や、やだなあ、もう。カ、カップルだなんて。そんな、ひばり、そういうの良くないよ。ひばりからそんなこと言っちゃダメだよ。えへへ。
「おい」
と、その瞬間、私の悦楽を打ち破るかのように、頭をひっぱたかれた。見上げるとさくらだった。
「何してんだよ、お前」
「え? いや、ちょっと……。ね?」
待て待て待て。そんな害虫を見るような目をするな。いや、ほんの出来心だから。別にやましい気持ちなんて無いから。本当だから。
「私らの席こっちだから」
「はい」
低い声で言われてしまっては、従わざるをえない。私はいそいそと本来の席へ戻ることにした。
小淵沢といえば、駅弁が有名だ。駅舎がリニューアルされてからも、駅弁屋さんは元気に営業している。私たちもここで1つ、何か買っていこうか。
店内入って、すぐに駅弁売り場へ。ここはお土産屋も兼ねているから、お弁当以外にも様々なものが売られているのだ。
「うわ、結構売り切れてんな」
POPには完売や売り切れの表記が目立つ。並んでいるお弁当の数も、心なしか少なかった。
うーん、流石に駅弁で有名な小淵沢なだけはある。日も暮れるくらいの時間帯になってくると、残るものも残らないか。特に有名どころは軒並み在庫が無くなっている。
「まあ、仕方ないね。残ってるものを買おう」
とはいえ、さてどれにするか。残り物といえど、目を引くものが並んでいる。
これは鳥めしか。駅弁といえば鳥めしという方程式が私の中には成り立っている。なるほど、これは甲州みそを使って味付けしてあるのか。
こっちは、山賊焼き弁当だ。山賊焼きといえば、信州のご当地グルメとして有名だ。小淵沢から進むとすぐに長野県に入る。その立地も活かして、信州名物もお弁当に取り入れているようだ。
その隣は、甲州ワインを使ったお弁当。直接ワインが入ってるわけではないけど、ワインの一大産地・山梨県では調理にワインを使うことも多い。甲州ワインビーフとかもあるしね。
さて、どれにするかな。懐具合とも相談して……。そうだな……。
よし、鳥めしにしよう。やっぱり駅弁といえば鳥めしなのだ。リーズナブルで美味しくて栄養もある。それが、鳥めしの最大の強みなのだ。
三者三様、手元にはそれぞれ別のお弁当が携えられていた。なんだか私たちらしいなと思った。
「何笑ってんだよ、気持ち悪いな」
「ううん、何でも」
お会計を済ませて、さあ準備は万端だ。
「ん? ちょっと待った。気持ち悪いってどういうこと!?」
「そのままの意味だろ」
「どこが気持ち悪いのさ!」
「1人で突然ニヤつき出したらキモいだろ」
「うっ……。それは確かにそうかも……」
相も変わらずさくらと口論しながら改札へと上がっていく。その様子を、ひばりが微笑ましそうに眺めるところまでがセットだ。
さて、時間もちょうど良い感じ。改札口を抜けて、跨線橋を一番奥まで渡っていく。突き当たりの階段を降りると小海線のホームだ。
先日も訪れた小海線のホーム。5番線には既に私たちが乗る予定の列車が停泊していた。
キハ100とキハ110の混血編成。だけど、この子は普通列車ではない。地元の足として走るのではなく、観光列車として走るために改造された車両。小海線の観光列車『HIGH RAIL 1375』である。
グリーンを基調とした原色とは異なり、青色をメインとしたカラーリング。星空をイメージしてデザインされた車体は、側面に銀河を思わせるような意匠も施されている。
車内に入ってみよう。一般的なセミクロスシートの車内とは大きく異なり、内部も改造が施されている。
まずは、1号車から。
こちらは車端部に固定式のボックスシートが2つ、8席分あり、車両中央には1人席と2人席が設置されている。
右手が1人席。こちらはリクライニングシートのようだ。
左手に2人席、こちらは固定式。
どちらも外に向かって座席が配置されている。進行方向に向かって配置される一般的なクロスシートとは趣を異にしていた。
2号車は、一般的な特急車両の車内を思わせる席配置のリクライニングシートだった。そして、運転台のすぐ真後ろに、この車両の最たる特徴である設備が備わっている。それこそがプラネタリウムだ。
この『HIGH RAIL』は、最も天空に近い場所を走る列車というコンセプトのもと生み出されている。それゆえに、星空をイメージした装飾が施されているのだ。
その最たるものがこのプラネタリウム。実際に星空を眺めるような体験を列車内で味わえるのだから実に面白い。
さて、私たちの席は1号車のボックス席だ。が、席に着く前に……。
「ひばり、ちょっと」
ひばりを連れて2人席へと向かう。発車時間までまだあるせいか、車内の人はまばらだ。今のうちに、ちょっとだけ。
「こっち座ってもらえる?」
「……? 良いわよ?」
困惑するひばりを座らせ、その隣に私が陣取る。
「わ、わあ……!」
2人席でひばりと一緒。まるで私たち2人だけの世界が車内に生み出されたようだ。
ひばりとほぼゼロ距離。彼女の腕と触れ合えるほどのレベル。なんなら、美しいブロンズヘアまでもが、私の首筋をくすぐるかのようだ。
「幸せ……」
ちょっとだけ、ほんとちょっとだけなら良いよね。ひばりにもたれかかってみる。ふんわりと、フローラルの香りがした。甘く爽やかな香り。これがひばりの匂い。これが彼女の香り……!
「まるでカップルシートみたいね」
「そ、そうだね!」
や、やだなあ、もう。カ、カップルだなんて。そんな、ひばり、そういうの良くないよ。ひばりからそんなこと言っちゃダメだよ。えへへ。
「おい」
と、その瞬間、私の悦楽を打ち破るかのように、頭をひっぱたかれた。見上げるとさくらだった。
「何してんだよ、お前」
「え? いや、ちょっと……。ね?」
待て待て待て。そんな害虫を見るような目をするな。いや、ほんの出来心だから。別にやましい気持ちなんて無いから。本当だから。
「私らの席こっちだから」
「はい」
低い声で言われてしまっては、従わざるをえない。私はいそいそと本来の席へ戻ることにした。
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