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第20章 HIGH RAIL星空探訪 at 小海線
HIGH RAIL星空探訪①
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軽妙なメロディが車内に響き渡る。続いて、流れる機械的なアナウンス。
『まもなく、小淵沢です』
一通りの自動放送の後に、車掌の肉声が響く。乗り換え案内だ。それを小耳に挟みながら、荷物をまとめていく。
列車が減速する頃には、すでにデッキに到達していた。プシューという空気の抜ける音と共に扉が開く。降り立つと、肌寒い空気が全身を包み込んだ。
小淵沢駅、か。ここに来るのは今年2度目だ。前回は私1人。今回は……。
「意外と冷えるのね」
「羽織るもの持ってきておいて正解だったな」
さくらとひばりが一緒だ。いつぞや小海線に乗った帰りに交わした約束がこんなすぐに叶うとは。
「こっちこっち。跨線橋渡るんだよ」
階段を上がって、跨線橋を抜けた先に改札口が待ち構えている。自動改札は無い。ICカードのタッチ機は設定されているけど。
私たちはここで途中下車だ。駅員さんに切符を見せて、晴れて駅の外へ。
小淵沢駅は、2017年に新しく立てられた駅舎が使用されている。確かに、随所に新築っぽさが滲み出ている。くたびれた感じが無いのだ。所々輝いていて、若々しさを感じさせる。
内装は木材をふんだんに使っていて、温かみを感じさせた。なんだか木の匂いが香ってきそうだ。
「見ろよ、みずほ」
右手を指さすさくら。何々? 展望台だって?
「駅舎の屋上に展望台があるみたいだぜ」
「まあ、素敵! 行ってみましょう!」
この2人、本当に好奇心旺盛だ。まあ、良いけどね。
展望台まで上がってみると、既に夜の帳が降りていた。まだ遠くの山並みに紫色が残っているけど、ほぼ日が落ちていると言っても過言ではない。
「うわー、何も見えねえな」
「そうだね」
昼間であれば八ヶ岳の方まで臨めたのだろうか。ちょっと残念だ。夜には夜で、別の趣はあるとはいえ、流石に街灯りもまばらなほど真っ暗だと見応えが無いというか、何というか。
「でも、駅は見下ろせる場所にあるよ」
下を覗き込んでみると、3面分のホームの上屋が理路整然と並んでいる。人工的な光が漏れ出ていて、これはこれで面白いと思うのだが。
「うーん、でもこれだと写真も撮れないわね」
指で四角形を作って視界を切り取るひばり。
確かに、ここからだと上屋に邪魔されて車両は上手く撮れない。駅へと向かう線路ならば撮影しやすいかもしれないが、そこは最早漆黒に覆われていた。
「……戻ろっか」
私の提案に、2人は揃って頷いた。
オッケーオッケー。別に構わないのだ。機会があれば、また晴れた日の昼間にでも来れば良い。
それよりも……。
上空を見上げる。月明かりも星明かりもほとんど見えやしない。つまり、上空には雲がかかっているということだ。
うーん、この空模様だと……。ちょっとこの先心配だなぁ……。
『まもなく、小淵沢です』
一通りの自動放送の後に、車掌の肉声が響く。乗り換え案内だ。それを小耳に挟みながら、荷物をまとめていく。
列車が減速する頃には、すでにデッキに到達していた。プシューという空気の抜ける音と共に扉が開く。降り立つと、肌寒い空気が全身を包み込んだ。
小淵沢駅、か。ここに来るのは今年2度目だ。前回は私1人。今回は……。
「意外と冷えるのね」
「羽織るもの持ってきておいて正解だったな」
さくらとひばりが一緒だ。いつぞや小海線に乗った帰りに交わした約束がこんなすぐに叶うとは。
「こっちこっち。跨線橋渡るんだよ」
階段を上がって、跨線橋を抜けた先に改札口が待ち構えている。自動改札は無い。ICカードのタッチ機は設定されているけど。
私たちはここで途中下車だ。駅員さんに切符を見せて、晴れて駅の外へ。
小淵沢駅は、2017年に新しく立てられた駅舎が使用されている。確かに、随所に新築っぽさが滲み出ている。くたびれた感じが無いのだ。所々輝いていて、若々しさを感じさせる。
内装は木材をふんだんに使っていて、温かみを感じさせた。なんだか木の匂いが香ってきそうだ。
「見ろよ、みずほ」
右手を指さすさくら。何々? 展望台だって?
「駅舎の屋上に展望台があるみたいだぜ」
「まあ、素敵! 行ってみましょう!」
この2人、本当に好奇心旺盛だ。まあ、良いけどね。
展望台まで上がってみると、既に夜の帳が降りていた。まだ遠くの山並みに紫色が残っているけど、ほぼ日が落ちていると言っても過言ではない。
「うわー、何も見えねえな」
「そうだね」
昼間であれば八ヶ岳の方まで臨めたのだろうか。ちょっと残念だ。夜には夜で、別の趣はあるとはいえ、流石に街灯りもまばらなほど真っ暗だと見応えが無いというか、何というか。
「でも、駅は見下ろせる場所にあるよ」
下を覗き込んでみると、3面分のホームの上屋が理路整然と並んでいる。人工的な光が漏れ出ていて、これはこれで面白いと思うのだが。
「うーん、でもこれだと写真も撮れないわね」
指で四角形を作って視界を切り取るひばり。
確かに、ここからだと上屋に邪魔されて車両は上手く撮れない。駅へと向かう線路ならば撮影しやすいかもしれないが、そこは最早漆黒に覆われていた。
「……戻ろっか」
私の提案に、2人は揃って頷いた。
オッケーオッケー。別に構わないのだ。機会があれば、また晴れた日の昼間にでも来れば良い。
それよりも……。
上空を見上げる。月明かりも星明かりもほとんど見えやしない。つまり、上空には雲がかかっているということだ。
うーん、この空模様だと……。ちょっとこの先心配だなぁ……。
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