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第17章 トンネル駅と新幹線の秘境駅 at 北越急行ほくほく線・美佐島駅&上越新幹線・上毛高原駅
トンネル駅と新幹線の秘境駅②
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トンネルのど真ん中で列車が止まる。フリー切符の券面を運転士さんに見せて、ドア横のボタンを押す。プシューっと空気の抜ける音と共に、扉が開く。降り立った瞬間にひやっとした空気が肌を包んだ。
私たち以外に降車客はいない。我々3人を吐き出した列車は、何事も無かったかのように出発していった。その姿をカメラに収め、私は顔を上げた。
トンネルの中。そこにぽつんと設けられたプラットホーム。周りは全て壁。無機質なコンクリートの壁。真っ暗な切り取られた空間。闇の中に取り残されたような感覚。それがほくほく線のトンネル駅・美佐島だ。
「よし。行こう」
あまりホームに長居するわけにはいかない。気を取り直して、この場をすぐに去ることにした。
「行くよ、ひばり」
私に合わせて待合室へ繋がる扉を開くさくら。それとは対照的に、ひばりはあちらこちらに向かってシャッターを切っていた。物珍しいのだろう。だけど、のんびりしている暇は無い。私は彼女の腕を掴んだ。
「もうちょっと撮りたいわ」
「ダメ。長居してると怒られちゃうよ」
美佐島駅は、先ほども述べたとおりトンネルの中にある駅だ。
この場所は、かつて特急はくたかが超速で何本も通過していた場所。そのため、通過する時の風圧がすさまじい場所だった。その名残で、今でも列車の停車中以外のホームへの出入りは基本できないのだ。そういった場所なので、無人駅ながら遠隔カメラが設置されている。降車後長居していると、無線で退去を促されてしまうのだ。
私がやや慌ただしくしていたのは、それが理由だった。
ホームを退去し、金属製の扉を閉める。ガッチリとロックされた仰々しい仕切りは、次の列車が到着するまで開くことはない。
扉が閉じたことを確認して、もう1つの扉を開けた。まるで宇宙船のように、金属製の扉が二重に設けられている。これも列車通過時の風圧が外に飛び出ないようにするための措置なのだ。
2枚目の扉を開けると、目の前には上り階段。とはいえ、土合ほど長くはない。ゴールは見上げればすぐ見える。染み出した地下水に濡れた路面を踏みしめながら、ゆっくりゆっくりと上っていく。そして、頂上にたどり着く頃には、日の光が見えるようになっていた。
「到着ーっと」
うーんっと伸びをして、左右を見渡す。右手には待合室の入り口。そして、地域の集落や行事を紹介するパネルが設置されていた。
左手は出入り口。手動の引き戸式で、陽光が差し込むのもこちらの方だった。
とりあえず、一旦外に出ようか。ガラガラと大きな音を立てる引き戸をを動かして、いよいよ駅舎の外へと飛び出した。
日の光が眩しい。トンネルの中から外に出たから、尚更陽光が激しく感じられた。
駅舎の前には、左右に道路が横たわっていた。それ以外は緑。ひたすら緑。ただただ緑。それ以外は何もない。本当に何もない。人もいない。建物も見当たらない。驚くほどの秘境感だった。
「駅の周りは何もねえよ」
私の横をすり抜けながら、さくらが言った。
「お店とか無いの?」
「無い。マジで何も無い」
彼女がそう言うなら本当に何も無いんだろう。最近は駅周辺の探訪も楽しみだったのだが、これは期待できなさそうだ。
「わー、すごい緑ね」
ひばりが隣に立っていた。
「まだ紅葉には早かったみたいだね」
「良いじゃない。素敵よ、こういうのも」
駅周辺に色づく気配はまるでない。夏の名残のように、青々とした緑が私たちを出迎えている。
ふと、思い立って、大きく息を吸ってみた。うん、まだ緑の香りがする。日差しも暑いし、まだまだ残暑といった様相だ。
「さーてと。後はどうやって時間潰すか」
駅舎を取り終えたさくらが戻ってきた。次の列車まで約1時間。この何も無い場所で、60分以上の時を過ごさなければならない。
「とりあえず、待合室行こっか」
流石に直射日光の下で過ごすのは勘弁したかった。
「それが一番無難だな」
「私も賛成よ」
満場一致。私たちは再度駅舎の中へと向かうことにした。
私たち以外に降車客はいない。我々3人を吐き出した列車は、何事も無かったかのように出発していった。その姿をカメラに収め、私は顔を上げた。
トンネルの中。そこにぽつんと設けられたプラットホーム。周りは全て壁。無機質なコンクリートの壁。真っ暗な切り取られた空間。闇の中に取り残されたような感覚。それがほくほく線のトンネル駅・美佐島だ。
「よし。行こう」
あまりホームに長居するわけにはいかない。気を取り直して、この場をすぐに去ることにした。
「行くよ、ひばり」
私に合わせて待合室へ繋がる扉を開くさくら。それとは対照的に、ひばりはあちらこちらに向かってシャッターを切っていた。物珍しいのだろう。だけど、のんびりしている暇は無い。私は彼女の腕を掴んだ。
「もうちょっと撮りたいわ」
「ダメ。長居してると怒られちゃうよ」
美佐島駅は、先ほども述べたとおりトンネルの中にある駅だ。
この場所は、かつて特急はくたかが超速で何本も通過していた場所。そのため、通過する時の風圧がすさまじい場所だった。その名残で、今でも列車の停車中以外のホームへの出入りは基本できないのだ。そういった場所なので、無人駅ながら遠隔カメラが設置されている。降車後長居していると、無線で退去を促されてしまうのだ。
私がやや慌ただしくしていたのは、それが理由だった。
ホームを退去し、金属製の扉を閉める。ガッチリとロックされた仰々しい仕切りは、次の列車が到着するまで開くことはない。
扉が閉じたことを確認して、もう1つの扉を開けた。まるで宇宙船のように、金属製の扉が二重に設けられている。これも列車通過時の風圧が外に飛び出ないようにするための措置なのだ。
2枚目の扉を開けると、目の前には上り階段。とはいえ、土合ほど長くはない。ゴールは見上げればすぐ見える。染み出した地下水に濡れた路面を踏みしめながら、ゆっくりゆっくりと上っていく。そして、頂上にたどり着く頃には、日の光が見えるようになっていた。
「到着ーっと」
うーんっと伸びをして、左右を見渡す。右手には待合室の入り口。そして、地域の集落や行事を紹介するパネルが設置されていた。
左手は出入り口。手動の引き戸式で、陽光が差し込むのもこちらの方だった。
とりあえず、一旦外に出ようか。ガラガラと大きな音を立てる引き戸をを動かして、いよいよ駅舎の外へと飛び出した。
日の光が眩しい。トンネルの中から外に出たから、尚更陽光が激しく感じられた。
駅舎の前には、左右に道路が横たわっていた。それ以外は緑。ひたすら緑。ただただ緑。それ以外は何もない。本当に何もない。人もいない。建物も見当たらない。驚くほどの秘境感だった。
「駅の周りは何もねえよ」
私の横をすり抜けながら、さくらが言った。
「お店とか無いの?」
「無い。マジで何も無い」
彼女がそう言うなら本当に何も無いんだろう。最近は駅周辺の探訪も楽しみだったのだが、これは期待できなさそうだ。
「わー、すごい緑ね」
ひばりが隣に立っていた。
「まだ紅葉には早かったみたいだね」
「良いじゃない。素敵よ、こういうのも」
駅周辺に色づく気配はまるでない。夏の名残のように、青々とした緑が私たちを出迎えている。
ふと、思い立って、大きく息を吸ってみた。うん、まだ緑の香りがする。日差しも暑いし、まだまだ残暑といった様相だ。
「さーてと。後はどうやって時間潰すか」
駅舎を取り終えたさくらが戻ってきた。次の列車まで約1時間。この何も無い場所で、60分以上の時を過ごさなければならない。
「とりあえず、待合室行こっか」
流石に直射日光の下で過ごすのは勘弁したかった。
「それが一番無難だな」
「私も賛成よ」
満場一致。私たちは再度駅舎の中へと向かうことにした。
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