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第14章 中禅寺湖と学園祭

中禅寺湖と学園祭③

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 いろは坂を無事くぐり抜けた私たちは、ようやく観光気分で回れるようになった。華厳の滝を観瀑かんばくして、中禅寺湖の側のレストランで昼食をとる。日光といえば湯波ということで、美味しくいただかせてもらった。

 それからは、お土産を買いながら、中禅寺湖の周りを散策した。遊覧船とかボートとかはあるけど、あえてそういったものには乗らず、湖畔を歩いて回るのだ。

「おぉ……」

 静かな湖面が広がり、その向こうには男体山が雄大にそびえている。なんだか富士五湖を思い起こすような光景だった。河口湖とか、こんな感じだったかな。

 一陣の風が吹く。涼しくて爽やかな風だった。

「夏も終わりだね」

 毎日30度、35度を超えていたような日々は終わりを告げている。朝晩は冷え込みはじめ、標高の高い場所の空気は涼けさを取り戻しはじめていた。もうじき、関東平野もこうなるのだろう。秋が来て、冬が来るのだ。

「だな。気付いたら、もうすぐ夏休みも終わりだもんな」

 確かにそうだ。あと数日もしたら、大学が再開する。

「秋になったらさ、紅葉とか綺麗な場所乗りたいよな」

 全くさくらったら。ここまで来ても鉄道の話なんだから。

「どこだろうね」

「どこでも良いんじゃね。日本全国、どこにでもあるだろ」

「アバウトだなぁ」

「良いじゃん。選択肢が多いってことで」

 彼女らしくて良いと思う。日本の鉄道は山間を通る路線が多い。そもそも日本の国土の大半が山岳なのだから、当然といえば当然なのだが。必然、どこに行っても紅葉は楽しめるはずだ。

 車窓から眺める紅葉。風情がある。

「んでさ、冬になったら雪降る場所乗るんだよ」

「どこ? 北海道?」

「でも良いし、東北とか北陸とか」

「良いねぇ」

 一面の真っ白な大地を走り抜ける鉄道。雪煙を巻き上げながら突き進む車両。雪国の風物詩だ。

「大雪すぎて止まらないと良いけどね」

「そういうこと言うなよー。ロマンのカケラもねえじゃん」

「ロマンって」

 そう言って、小さく笑いながら。

 ロマン、か。まあ、妄想旅行ならロマンの1つや2つ、求めてもバチは当たらない。理想的で幻想的すぎるかもしれないけど、頭の中でくらい理想を追い求めたって良い。

「やっぱり鉄道って楽で良いよな」

「自分で運転しなくて良いから?」

「そう」

 結局、そこに落ち着くか。鉄道オタクらしいというか、なんというか。

「まっ、帰りの運転は頼んだよ」

「あいよ。それは任せとけ」

 2人並んで湖面を眺める。揺蕩う水面は、私たちの姿を揺らし続けていた。
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