女子2人で鉄道旅をしています

第12章 日本一のモグラ駅 at 上越線

日本一のモグラ駅①

　新潟県。元は越後国。日本最大の米どころであり、国内有数の豪雪地帯として有名な県だ。

　弓のような形をした新潟県は、北東から南西にかけて細長い地形を成している。面積は全国第5位。それゆえに、佐渡島などの島嶼部を除けば、概ね3つの地域に分けられている。

　西から順に上越じょうえつ、中越ちゅうえつ、下越かえつ。上中下は京都に近い順番に付けられているそうだ。

　西側の上越地方は直江津なおえつの湊などを有するかつての政治の中心地。かの上杉謙信が隆盛を誇ったのも、この上越地方である。

　真ん中にあるのが中越地方。県内2番目の都市にして花火大会で有名な長岡市を擁し、米どころ・魚沼平野もこの中越地方にある。

　そして、一番東側にあるのが下越地方。かつては新発田しばたを中心に栄え、現在は県庁所在地・新潟市を有する、政治・経済の中心地である。

　ところで、上越地方を通らないのに上越の名を冠する路線があることをご存じだろうか。そう、上越線と上越新幹線である。

　先にできたのは上越線。群馬県の高崎駅から北に伸び、水上みなかみを経て三国峠みくにとうげを越える。新潟県の中越地方を北上して、長岡市の宮内みやうち駅まで。列車はこの先、信越本線に乗り入れて長岡駅まで至る。新潟県内は中越地方しか通らない。

　上越新幹線は上越線のルートを南北に延長したような路線を辿る。大宮駅で東北新幹線から分岐すると、高崎、越後湯沢えちごゆざわ、長岡を経て、更にその先へ。下越地方の新潟駅まで至るのだ。こちらも上越地方は全然通らない。

　では、何故上越なのか。それは上野こうずけ（群馬県の旧国名）と越後を結ぶから。両者の頭文字をとって上越なのだ。なんともややこしい限りである。

　さて、前情報はこのくらいで良いだろうか。ここまで話せば私の現在地がおわかりかもしれない。そう、本日の舞台は上越線だ。

　今、私の目の前にはE129系が今か今かと発車を待っている。ステンレス製のボディに稲穂を思い起こさせる黄金色と朱鷺ときピンクのラインカラー。煌々と主張するフルカラーLEDの行き先表示。2014年にデビューするや、瞬く間に新潟地区の主力車両へとのし上がった最新鋭の電車である。

　うーん、しかしちょっと古めかしさの残るホームに入線していると、若干の違和感を抱いてしまうなぁ。まだ見慣れていないせいかもしれない。この車両に乗るのは今回が初めてなのだ。

　きっと新潟駅のホームとかにいればよく映えるのだろう。しかしいかんせん、ここは駅の構造物の随所にレトロっぽさが残っている。車両だけ浮いているようだ。

　ホームを下がって視野を広くすると、隣のホームに止まる211系と並び合う。ここ水上駅は上越線の境界駅。どういうことかというと、ここ水上を境に運行を担当する支社が変わるのだ。水上以南は高崎支社、水上以北は新潟支社。だから、必ず水上で乗り換えとなる。

　かたや211系は国鉄末期に製造が始まった車両。こちらデビューから10年も経っていないE129系は最新型も最新型。隣り合っているだけで隔世の感がある。

　私がここまで乗ってきたのは211系。そして、ここからはE129系へ乗り換えとなる。過去から現代へ、一気にタイムスリップしたような気分だ。

　そんな不思議な光景を写真に収めていると、E129系の扉が開いて1人の少女が身を乗り出した。大きく手を振っている。さくらだ。私を呼んでいるのだろう。

　ふと、腕時計を見ると、発車時間が迫っていた。乗り損ねたら最低2時間は待たされる。何より、これから向かう目的地での滞在時間が大幅にカットされてしまいかねない。

　私はやや小走り気味に列車へと向かう。新潟方面へと伸びる線路の向こうには、真夏の青々とした山々が広がっていた。