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第11章 たまには1人で at 鶴見線

たまには1人で①

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 東京湾には2つの工業地帯がある。1つは京葉けいよう工業地帯。その名の通り、東京から千葉にかけて広がる工業地帯だ。もう1つが京浜けいひん工業地帯。東京から横浜にかけて広がっている。

 東京湾は2つの工業地帯にぐるりと囲まれている。海に面していることは、それだけで商業的にも工業的にも莫大な利益をもたらすのだ。それが首都・東京のお膝元であれば尚更のことである。

 だから、東京湾に沿って進んでいくと、東進しても西進しても工業地帯を眺めて進むことになる。鉄道旅だとそれが如実に現れる。自分で運転する必要が無いから、外の景色を眺め放題なのだ。

 さて、そんな前置きは置いておいて。今日の私は工業地帯の中を突き進んでいる。JR鶴見つるみ線。現在の関東において貴重な現役の205系に乗れるこの路線は、京浜工業地帯の中を縫うように進む路線である。それもそのはずで、元々は鶴見近辺の埋め立て地への貨物輸送を目的として敷設された路線だからだ。現在では、鶴見から川崎にかけての臨海工業地帯への通勤路線として機能している。

 この鶴見線、日本屈指の工業地帯を抜ける路線でありながら、どことなくローカルな雰囲気が漂う不思議な鉄道である。そもそも平成の世の中になってまで旧型国電が走っていたくらいの路線なのだ。そんなところが鉄道ファンからも愛されている由縁。今や工場オタクまでもが利用する隠れた名スポットなのだ。

 黄色、白、青の3色のラインカラーが敷かれた3両編成の列車は、工場に沿いながら進んでいく。そして、徐々に徐々にスピードが緩まっていく。まもなく終着駅だ。下りる準備をするとしよう。

 だけど、今日の私は網棚の荷物を下ろさない。それらを残したまま、カメラだけを引っさげて立ち上がる。理由は簡単で、折り返しの列車でそのまま元来た道を戻るからだ。

 列車が止まる。私が振り向くと、窓の向こうにはオーシャンビューが広がっていた。
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