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第9章 首都東京の秘境駅 at 青梅線・白丸駅

首都東京の秘境駅①

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 眼前まで迫る緑色とトンネルのコンクリートの壁が交互に視界を支配する。小刻みに揺れる車体はカーブを通る度に遠心力を私たちに伝えてきた。

 木々の緑。真っ暗なトンネル。木々の緑。真っ暗なトンネル。その繰り返し。ついこの間も見たような風景をじっくりと網膜に焼き付けながら、私たちは列車に揺られ続ける。

 私たちは再び山に来ていた。正確には山岳路線に乗っている。だけど、場所が違う。前回は秩父ちちぶ、今回は奥多摩おくたまだ。

 私たちの通う学校があるのと同じ東京都。同じ東京都だというのに、ここは緑一色が支配する。高層ビルも高い建物も何もない。ただ深い山の景色があるだけ。東京都だというのにド田舎の風景を映し出している。

 そして、何より私たちの乗っている車両だ。E233系。2006年に導入されたJR東日本が誇る最新鋭の通勤型電車だ。そんな通勤型電車に揺られながら山奥を駆けのぼる。このミスマッチ感がなんともたまらない。ちゃんとクロスシート車だった西武秩父線と比べても、その乖離ぶりは段違いだ。

 本当にここは首都東京なのか? そんな感傷が胸を支配する。

『まもなく白丸しろまる、白丸です』

 断続的に続くトンネルを抜けると、目的地を告げる車内アナウンスが流れた。私たち2人はどちらともなく腰を上げ、網棚から荷物を下ろした。

 今日も今日とて鉄道旅。本日の舞台は、青梅おうめ線です。
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