女子2人で鉄道旅をしています

第8章 薫風かおる秩父路 at 西武秩父線

薫風かおる秩父路①

　山間を単線の線路が通過していく。曲がりくねり、うねり、まるでへびのように曲線を描きながら山の中を突き進んでいく。

　左手には山肌、右手には新緑。深い緑が視界を支配する。すると、真っ暗なコンクリートの壁が一瞬で視界を覆った。トンネルだ。すぐに緑が復活する。即座にまたトンネル。その繰り返し。

　断続的に続くトンネルを次々と通過し、山肌を縫っていく。青々とした稜線が空をなぞるように描かれていた。これぞまさに山岳路線という様相。日本全国色んな所に行ったことがあるけれど、山越えの鉄道路線はどこも似たような顔を持っている。その特徴が車窓を支配すると、「ああ、こんな遠くまでやってきたんだな」と旅情に浸ってしまうのだ。

　が、今回はそれら前例とは違う。何故なら、私は生まれ育ち住み慣れた埼玉県から一歩も外に出ていないからだ。

　白地に青赤緑のラインカラーの車体が駆け抜ける。それは西武鉄道を象徴するカラーリングだ。

　そう、私は今、西武線に乗っている。関東を代表する大手私鉄のローカル路線、西武秩父ちちぶ線が今回の旅の舞台である。