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第7章 アルバイトを始めよう
アルバイトを始めよう③
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「じゃあ、戦国時代の成り立ちのところから始めるね」
私は戦国時代に関する文献を広げながら話を始めた。ちょうど午前中に中世史の講義があって、そのテキストとして購入した書籍だ。戦国期なら大好きな時代だし、詳しいからいくらでも話すことができる。ちょうど良いだろう。
「まず、戦国時代の始まりは応仁の乱からって言われるよね。これはまず将軍家の後継争いが絡んでくるわけ。8代将軍・義政は跡継ぎに恵まれなくて、弟の義視を跡継ぎにしていたの。ところが、それを決めた直後に義政に男の子が産まれちゃうんだよね。これが後の9代将軍・義尚なんだけど、これで将軍家内で後継者問題が生じちゃうの。だけど、大きな問題はもっと別にあって、それが将軍の権威の低さなんだよね。そもそも室町将軍家って3代の義満くらいしか圧倒的な権威を持ってる人っていなくて、大体は将軍の下につく管領や守護大名の権力が強くて、彼らの意向が政治に大きく反映されていたわけ。そうすると、守護大名間の権力争いとか頻繁に起こるし、同じ一門の家内でも後継者問題が常につきまとってくるの。これがまた厄介な問題で、このときは畠山家と斯波家に家督問題が生じ始めるんだよね。特に畠山家の問題が根強くて、当時有力な守護大名だった細川勝元と山名宗全は畠山家の後継者問題について意見が対立していたの。ちょうどその頃、今日を追放されていた畠山義就が大群を率いて上洛してきたんだけど、あっ、この義就ってのは山名宗全が支援してるんだけどね、なんと義政は義就を指示しちゃうわけよ。そうなってくると、今の畠山家当主を支持してる細川勝元側は──」
「ストップストッーーープ!!!」
あれ、話の途中で止められちゃった。まだまだこんなものじゃ終わらないのに。序盤の序盤だよ?
「何か問題あった?」
「あるよ! 大ありだよ!」
ビシッと人差し指の先が突きつけられた。
「まず、お前のは全っ然教えることになってねえ! ただ知識並べて話してるだけだろうが!」
「そうだけど……。ダメなの?」
「ダメだよ! ダメダメ! 全然ダメ! まず、教えてもらう側ってのは、知識もなければ時代の流れも理解してないんだから、ただあったことを並べて話したって理解なんかしてもらえねえよ。もっとわかりやすく、要点を伝えないと。あと、お前、話してる間、私のこと一切見てねえだろ?」
ああ、確かに。
「教えるってことは、教えられる側が理解できて初めて成り立つんだよ。だから、相手の反応とか逐一見て、その都度臨機応変に対応したり、きちんと対話してやらないと置いてけぼりになっちまうだろ。その辺の配慮が全然足りてねえの」
うわ、辛辣。でも、言ってることは理解できる。正論です。ぐうの音も出ません。
「じゃあ、塾の先生も向いてないかぁ……」
「まあ、矯正すればなんとかなるだろうけど……。お前の場合は時間かかりそうだな」
あーあ、折角良い選択肢に出会えたと思ったのに。全然ダメだ。結局ふりだしに戻っちゃった。
ていうか、私働くの向いてなさすぎじゃない? うわ、今から就活が憂鬱。
「やっぱり諦めて接客業に挑戦してみるのが良いんじゃねえか? あと、ほら。少数だけど事務の仕事とかもあるしさ」
それからもアルバイト探しは続けたけど、結局ピンとくるものと出会うことはできずに終わった。
私は戦国時代に関する文献を広げながら話を始めた。ちょうど午前中に中世史の講義があって、そのテキストとして購入した書籍だ。戦国期なら大好きな時代だし、詳しいからいくらでも話すことができる。ちょうど良いだろう。
「まず、戦国時代の始まりは応仁の乱からって言われるよね。これはまず将軍家の後継争いが絡んでくるわけ。8代将軍・義政は跡継ぎに恵まれなくて、弟の義視を跡継ぎにしていたの。ところが、それを決めた直後に義政に男の子が産まれちゃうんだよね。これが後の9代将軍・義尚なんだけど、これで将軍家内で後継者問題が生じちゃうの。だけど、大きな問題はもっと別にあって、それが将軍の権威の低さなんだよね。そもそも室町将軍家って3代の義満くらいしか圧倒的な権威を持ってる人っていなくて、大体は将軍の下につく管領や守護大名の権力が強くて、彼らの意向が政治に大きく反映されていたわけ。そうすると、守護大名間の権力争いとか頻繁に起こるし、同じ一門の家内でも後継者問題が常につきまとってくるの。これがまた厄介な問題で、このときは畠山家と斯波家に家督問題が生じ始めるんだよね。特に畠山家の問題が根強くて、当時有力な守護大名だった細川勝元と山名宗全は畠山家の後継者問題について意見が対立していたの。ちょうどその頃、今日を追放されていた畠山義就が大群を率いて上洛してきたんだけど、あっ、この義就ってのは山名宗全が支援してるんだけどね、なんと義政は義就を指示しちゃうわけよ。そうなってくると、今の畠山家当主を支持してる細川勝元側は──」
「ストップストッーーープ!!!」
あれ、話の途中で止められちゃった。まだまだこんなものじゃ終わらないのに。序盤の序盤だよ?
「何か問題あった?」
「あるよ! 大ありだよ!」
ビシッと人差し指の先が突きつけられた。
「まず、お前のは全っ然教えることになってねえ! ただ知識並べて話してるだけだろうが!」
「そうだけど……。ダメなの?」
「ダメだよ! ダメダメ! 全然ダメ! まず、教えてもらう側ってのは、知識もなければ時代の流れも理解してないんだから、ただあったことを並べて話したって理解なんかしてもらえねえよ。もっとわかりやすく、要点を伝えないと。あと、お前、話してる間、私のこと一切見てねえだろ?」
ああ、確かに。
「教えるってことは、教えられる側が理解できて初めて成り立つんだよ。だから、相手の反応とか逐一見て、その都度臨機応変に対応したり、きちんと対話してやらないと置いてけぼりになっちまうだろ。その辺の配慮が全然足りてねえの」
うわ、辛辣。でも、言ってることは理解できる。正論です。ぐうの音も出ません。
「じゃあ、塾の先生も向いてないかぁ……」
「まあ、矯正すればなんとかなるだろうけど……。お前の場合は時間かかりそうだな」
あーあ、折角良い選択肢に出会えたと思ったのに。全然ダメだ。結局ふりだしに戻っちゃった。
ていうか、私働くの向いてなさすぎじゃない? うわ、今から就活が憂鬱。
「やっぱり諦めて接客業に挑戦してみるのが良いんじゃねえか? あと、ほら。少数だけど事務の仕事とかもあるしさ」
それからもアルバイト探しは続けたけど、結局ピンとくるものと出会うことはできずに終わった。
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