36 / 184
第7章 アルバイトを始めよう
アルバイトを始めよう②
しおりを挟む
「さてとっと」
さくらに連れられてやってきたのは大学の生協だった。丸形テーブルに座らされて待つこと数分、彼女はある冊子を手にして戻ってきた。
「求人誌?」
それはアルバイトの求人冊子だった。
「生協ってこういうのも置いてあるんだね」
「そうそう。お前、使ったことないだろ?」
うっ……。図星です。
「まっ、これ今月入ったやつだし、最新の情報は載ってるはずだぜ」
「でも、ネットの方がもっと情報新しくない?」
「まあ、そうなんだけどな」
冊子をペラペラとめくりながら
「でも、みずほみたいに何やりたいのかすら決まってないやつには、こっちの方が向いてんだよ」
見開いて私に向けてきた。
「バイトっつったら、定番はやっぱ接客業だよな。コンビニとかファミレス。カラオケ、ネカフェ。色々あるぜ」
うーん……。
「接客業、か……」
パラパラとページをめくっていく。確かに求人数は多い。ジャンルもよりどりみどりだ。アルバイトの定番っていう感じもする。なんだけど……。
「なんだよ。乗り気じゃなさそうだな」
「うん……。私、緊張しいだし口下手だし、不安だなぁ……」
そう、私は人付き合いが得意ではない。むしろ苦手な方なのだ。大体、友達なんか小中高、そして今も数えるほどしかいない。その中で本当に気の合う親友はさくら1人だけだ。冗談でもなくこれはマジ。そんな人間が接客業? 不安しかない。
「そいや、お前友達少なかったもんな」
「それハッキリ言う?」
事実なんですけどね。反論のしようもございません。
「接客業に不安があるなら、客と関わらない仕事とかもあるぜ」
続いて見せられたページ。何々? 工場、引っ越し作業、警備員、夜間見回り、工事現場……。
「って、これ力仕事じゃん!」
ますます私から遠すぎる!
「無理無理無理! こういうのは絶対無理! 私インドア派だよ!?」
「乗り鉄はアウトドア派だろ」
「そういうことじゃなくて!」
まじめに言ってるのかふざけてるのか図りかねない。こういうとこ、ホント適当で困るなあ、もう。
「とにかくこれは却下!」
「じゃあ、やっぱり接客業じゃね?」
「それもなし!」
「お前、わがまますぎだろぉ」
それ、さくらにだけは言われたくないんだけど?
「ていうかさ、さくらは何してるのさ」
「私?」
「そう。さくらのアルバイト」
そういえば、彼女がどんなバイトをしてるのか、聞いたことがなかった。
「私は家庭教師だよ」
「家庭教師?」
ふと、想像してみた。さくらが家庭教師? ええ……イメージつかない……。
「お前、失礼なこと考えてるだろ」
うげ、バレてる。なんで? 顔に出やすいのかな、私。
って、そうじゃなくて。
「本当に家庭教師やってるの?」
「マジだよ。本当に失礼なやつだな、お前」
若干呆れながらため息をついて
「私は登録制のやつ。割と柔軟性あるから使い勝手良いんだよ」
へー、そういうのもあるんだ。
「まあ、今はもう登録締め切られちゃってると思うけど。あっ、でもみずほは頭良いもんな。そしたら、塾の先生とかもありなんじゃね?」
そう言って見せてくれたのは学習塾の募集ページだった。小学生から高校生まで年代も幅広い。
「特にほら、お前歴史とか好きだろ? 社会科だったら教えられるんじゃね?」
そっか。特に日本史は詳しいし、テストでも常に上位の成績だったからできるかも。
「よーし! じゃあ、早速模擬授業やってみようぜ!」
「え、ここで!?」
本当に唐突だ。彼女らしいといえばらしいのだが。
「そうそう。1対1で私に教える感じでさ、やってみなよ。家庭教師の私が採点してやるからさ」
「……よ、よーし」
折角だから乗ってみることにしよう。大丈夫、自分の得意分野の話だから。問題ない。どんと来いだ。
さくらに連れられてやってきたのは大学の生協だった。丸形テーブルに座らされて待つこと数分、彼女はある冊子を手にして戻ってきた。
「求人誌?」
それはアルバイトの求人冊子だった。
「生協ってこういうのも置いてあるんだね」
「そうそう。お前、使ったことないだろ?」
うっ……。図星です。
「まっ、これ今月入ったやつだし、最新の情報は載ってるはずだぜ」
「でも、ネットの方がもっと情報新しくない?」
「まあ、そうなんだけどな」
冊子をペラペラとめくりながら
「でも、みずほみたいに何やりたいのかすら決まってないやつには、こっちの方が向いてんだよ」
見開いて私に向けてきた。
「バイトっつったら、定番はやっぱ接客業だよな。コンビニとかファミレス。カラオケ、ネカフェ。色々あるぜ」
うーん……。
「接客業、か……」
パラパラとページをめくっていく。確かに求人数は多い。ジャンルもよりどりみどりだ。アルバイトの定番っていう感じもする。なんだけど……。
「なんだよ。乗り気じゃなさそうだな」
「うん……。私、緊張しいだし口下手だし、不安だなぁ……」
そう、私は人付き合いが得意ではない。むしろ苦手な方なのだ。大体、友達なんか小中高、そして今も数えるほどしかいない。その中で本当に気の合う親友はさくら1人だけだ。冗談でもなくこれはマジ。そんな人間が接客業? 不安しかない。
「そいや、お前友達少なかったもんな」
「それハッキリ言う?」
事実なんですけどね。反論のしようもございません。
「接客業に不安があるなら、客と関わらない仕事とかもあるぜ」
続いて見せられたページ。何々? 工場、引っ越し作業、警備員、夜間見回り、工事現場……。
「って、これ力仕事じゃん!」
ますます私から遠すぎる!
「無理無理無理! こういうのは絶対無理! 私インドア派だよ!?」
「乗り鉄はアウトドア派だろ」
「そういうことじゃなくて!」
まじめに言ってるのかふざけてるのか図りかねない。こういうとこ、ホント適当で困るなあ、もう。
「とにかくこれは却下!」
「じゃあ、やっぱり接客業じゃね?」
「それもなし!」
「お前、わがまますぎだろぉ」
それ、さくらにだけは言われたくないんだけど?
「ていうかさ、さくらは何してるのさ」
「私?」
「そう。さくらのアルバイト」
そういえば、彼女がどんなバイトをしてるのか、聞いたことがなかった。
「私は家庭教師だよ」
「家庭教師?」
ふと、想像してみた。さくらが家庭教師? ええ……イメージつかない……。
「お前、失礼なこと考えてるだろ」
うげ、バレてる。なんで? 顔に出やすいのかな、私。
って、そうじゃなくて。
「本当に家庭教師やってるの?」
「マジだよ。本当に失礼なやつだな、お前」
若干呆れながらため息をついて
「私は登録制のやつ。割と柔軟性あるから使い勝手良いんだよ」
へー、そういうのもあるんだ。
「まあ、今はもう登録締め切られちゃってると思うけど。あっ、でもみずほは頭良いもんな。そしたら、塾の先生とかもありなんじゃね?」
そう言って見せてくれたのは学習塾の募集ページだった。小学生から高校生まで年代も幅広い。
「特にほら、お前歴史とか好きだろ? 社会科だったら教えられるんじゃね?」
そっか。特に日本史は詳しいし、テストでも常に上位の成績だったからできるかも。
「よーし! じゃあ、早速模擬授業やってみようぜ!」
「え、ここで!?」
本当に唐突だ。彼女らしいといえばらしいのだが。
「そうそう。1対1で私に教える感じでさ、やってみなよ。家庭教師の私が採点してやるからさ」
「……よ、よーし」
折角だから乗ってみることにしよう。大丈夫、自分の得意分野の話だから。問題ない。どんと来いだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
女の子なんてなりたくない?
我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ―――
突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。
魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……?
ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼
https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる