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第3章 日常の中の非日常 at 京成本線・大佐倉駅
日常の中の非日常④
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その後も私たちは城跡巡りを続けた。構造物は何も残されていないけど、当時を偲ばせる遺構はそこかしこに残されていた。行きに当たった分かれ道も城の中なのだと地図を見てわかった。あの辺りはセッテイと呼ばれているらしい。ぬかるんだ道を進むと空堀の跡などを巡れるようだ。
そうして歴史のロマンに触れた私たちは北のあたりから城を出た。お城を抜けると、ちょうど田園地帯を通る京成線の線路が広がっていた。中々良い撮影スポットになるんじゃないかなと思いながら、大佐倉駅へと戻っていった。
駅からは押上方面行きの快速電車に乗って帰路についた(途中の青砥で京成上野行きの列車に乗り換える算段で)。8両編成のステンレス製の列車に乗り込んで揺られれば、京成電鉄という大手私鉄の沿線にいたのだという実感が湧き上がってくる。
大手私鉄にあんな駅があったのだ。まるで夢見心地のようだった。
「なんか信じられないよな」
東京に向かうにつれて、建物も増えてくれば高層建造物も数を増す。車窓の移り変わりが激しい中、さくらがボソッと呟いた。
「うん、わかる」
「あんな駅があるんだもんなぁ」
「そうだね。やっぱり京成の駅とは思えなかったよね」
「城跡もあるんだもんなぁ」
「のどかすぎて信じられないよね」
でも、確かにあったんだ。まるで地方私鉄のような駅も、坂東武者が夢を託して消えていった城跡も。
「あっ!」
そのとき、さくらが突然声を上げた。
「どうしたの?」
「見てくれよ、私のスニーカー!」
さくらの桜色のスニーカー。それが泥にまみれて茶色いまだら模様に染まっていた。
「そういえば、結局ぬかるみ通ったもんね」
「うわー、帰ったら洗わなきゃじゃん」
ふと、自分の足元も見てみた。デニムの裾がはねた泥で汚れている。
あーあ、私も仲間だ。こりゃ、お母さんに怒られるかもしれない。
でも、なんでだろう。絶対雷を落とされる未来が待っているのに、泥汚れに感慨を抱いてしまう。それってたぶん、今日の旅に満足しているからだ。鉄道も歴史も堪能できた、2人きりの小さな冒険に。
『日常の中に非日常をみつけた。 MIZUHO』
そうして歴史のロマンに触れた私たちは北のあたりから城を出た。お城を抜けると、ちょうど田園地帯を通る京成線の線路が広がっていた。中々良い撮影スポットになるんじゃないかなと思いながら、大佐倉駅へと戻っていった。
駅からは押上方面行きの快速電車に乗って帰路についた(途中の青砥で京成上野行きの列車に乗り換える算段で)。8両編成のステンレス製の列車に乗り込んで揺られれば、京成電鉄という大手私鉄の沿線にいたのだという実感が湧き上がってくる。
大手私鉄にあんな駅があったのだ。まるで夢見心地のようだった。
「なんか信じられないよな」
東京に向かうにつれて、建物も増えてくれば高層建造物も数を増す。車窓の移り変わりが激しい中、さくらがボソッと呟いた。
「うん、わかる」
「あんな駅があるんだもんなぁ」
「そうだね。やっぱり京成の駅とは思えなかったよね」
「城跡もあるんだもんなぁ」
「のどかすぎて信じられないよね」
でも、確かにあったんだ。まるで地方私鉄のような駅も、坂東武者が夢を託して消えていった城跡も。
「あっ!」
そのとき、さくらが突然声を上げた。
「どうしたの?」
「見てくれよ、私のスニーカー!」
さくらの桜色のスニーカー。それが泥にまみれて茶色いまだら模様に染まっていた。
「そういえば、結局ぬかるみ通ったもんね」
「うわー、帰ったら洗わなきゃじゃん」
ふと、自分の足元も見てみた。デニムの裾がはねた泥で汚れている。
あーあ、私も仲間だ。こりゃ、お母さんに怒られるかもしれない。
でも、なんでだろう。絶対雷を落とされる未来が待っているのに、泥汚れに感慨を抱いてしまう。それってたぶん、今日の旅に満足しているからだ。鉄道も歴史も堪能できた、2人きりの小さな冒険に。
『日常の中に非日常をみつけた。 MIZUHO』
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