女子2人で鉄道旅をしています

第3章 日常の中の非日常 at 京成本線・大佐倉駅

日常の中の非日常①

　郊外の住宅地と田園風景の中を8両編成の列車が走り抜ける。車窓に木々が生い茂り始めると、ガクンと慣性が働いてスピードが落ち始めた。ゆるゆると速度を落とす列車はホームへと滑り込んでいく。駅の姿を確認した私たちは、網棚から荷物を降ろして扉へ向かった。

　完全に停車。自動で開くドア。降り立つ私たち。

　ホームに着地した瞬間、私は伸びをした。旅の疲れを癒やすため。そして、目的地に到着した達成感を頭の先から放出するために。

「着いっ、たー！」

　背後でドアが閉じた。間髪入れずにブレーキの解除音。そして、私たちを乗せてきた列車は終点へ向かって発車していく。私たちのことなんかお構いなしに。

　列車が走り去った後には私たち2人だけが残された。いや、感覚的には取り残されたというような表現が近いかもしれない。

　大きく息を吸って、この場所の空気を取り込んだ。そして、周囲を見渡してみる。

　緑色だ。一面緑色が映えている。木々に囲まれ、まるで森の中に駅があるような錯覚さえ抱く。周辺に民家がいくつかあるが、駅前にはそれ以外何もない。百貨店も駅ビルも商店街もない。

「すげえ。関東にこんなところがあるんだな」

「うん、本当にね」

　口々に交わしながらカメラのレンズは周囲の風景を捉えていた。駅を、周りの風景を、データの中に落とし込んでいく。私たちがここに来た証拠を、降り立った証を小さなメモリーカードに刻んでいく。

　あっ、駅名標えきめいひょうだ。これも撮っておこう。まさしくこの駅にやってきた証拠なのだから。

　本日の旅は、京成電鉄けいせいでんてつ・大佐倉おおさくら駅です。