甘い言葉を囁いて

聖 りんご

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じゅういち

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「はい、結構ですわ。ミシュミラン様。本日はここまでと致しましょう。」

「ありがとうございました。」

侯爵家に来てからひと月、私には家庭教師が付けられました。
最初は恐れ多いとお断りしたけれど婚約者として必要と言われてはお断りは不可。
付けてもらうからには怠慢は許されないけれど、本が読めないので予習復習はヘン…ハリー様が付き合ってくれています。

「ミシュ、授業は終わった?」

「はい。今調度終わりました。」

「今日の予定はもう無かったよね。この後の時間は全て僕にくれないかな。」

「は…はい。分かりました。」

ハリー様は私に話をする時膝まづいて手を取って話をしてくれるのだけれど…最後は必ず手にキスをされるから凄く凄く恥ずかしい!
それはハリー様のお母様やお父様が居ても変わらないからもうどうしたら良いのか…。
早く耐性を付けるしかないのかしら。





「お嬢様は黄金の御髪に陶器の肌をお待ちなので透け感のあるこちらのレースなど如何でしょうか。」

「そうだね…ミシュの綺麗な肌が他人の目に触れるのは許容し難いが…良く似合いそうだ。」

「あら、なら角度によって変わるように重ねてみたらどう?」

「奥様!それは素敵にございます!!」

今話されているのは私のデビュタントのドレスについて。
今までレン兄さまと街に行く以外は家の外には出たことなかったのだけれどその話をした途端にロードウィン一家は真っ青になってハリー様のお母様には力いっぱい抱きしめられたわ。

そしていつの間にか一月後にデビュタントをしようという話が決まったようで、授業とハリー様の下りが終わりハリー様に車椅子を引かれて入った部屋でドレスの図案が出来上がっているみたい。

私…ここに入って挨拶以降一言も話をしていないわ。
私の眼が見えたらこの仲間に入れたのかしら…。
ううん。きっと無理。だって…会話のスピードが早すぎて聞き取るだけでやっとだもの。

「ミシュ。この後は商人に宝石を見せてもらうからね。」

「こ…この後にですか…?」

結局、商人の後にも車椅子の職人が呼ばれてドレスに相応しいものをって話をして終わったのは日が沈む頃。
世の女性達は頻繁にこのような事をしてるなんて思うと尊敬してしまいます。

どこからこんなパワーが出てくるのかしら。
凄く不思議だわ。

「あ、ミシュちゃん。明日は普段着を追加で作りましょうか。」

「いいですね。母上、僕も同席します。」

「あ、明日はダンスのレッスンがですね…。」

「大丈夫。レッスンの相手を務めるのも僕だ。一日中一緒に居られて嬉しいよ。」

レン兄さま。
ミシュは少しだけ前の暮らしが懐かしく思います。
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