甘い言葉を囁いて

聖 りんご

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「フラット様…?そんなに笑われてどうされたのですか?」

「ああ…話を中断してすまないね。続けてくれ。」

何だろう…このフラット様って人の声。興味がまったく無さそうな感じがする。
サラと浮気していたのに何でこの話に興味が無いんだろう…。

「それでは…サラ、婚約は君の有責で破棄させてもらうよ。金輪際、俺達に関わらないでくれ。」

「レン…ごめんなさい。私は真実の愛に目覚めてしまったの。こればかりは誰にもコントロールできないの。だから分かってちょうだい。フラット様、そうですよね。」

「ん?ああ、サラはレンと別れてしまうんだね。だったら僕ともお別れだね。」

「え?」

あれ?何だか予想外の展開になってる気がするわ。

「僕は君が婚約者がいるにも関わらず近寄って来るのが面白くて一緒にいたからね。別れてしまうならただの擦り寄ってくる女でしょう?興味なんてないよ。」

「そんな!嘘よっ!!」

「僕は君みたいに嘘なんてつかないよ。僕は君に愛してるなんて言った?キスやハグをしたかな?自分に酔ってないでちゃんと聞いていたら分かったはずだよ。」

サラもこのフラットって人も酷い…。
人の心を弄ぶなんて最低!

「あ、あぁ…レ、レン!私フラット様に騙されていたのっ!やっぱり私の理解者は貴方だけっ!!」

「気安く呼ばないでくれ。先程の言葉が覆ることは無い。」

「あ…そんな……。」

レン兄さま意外と平気そうな声をしているわね。
良かった。次は素敵な人を見つけて欲しいな。

「レン兄さま、帰りましょう。」

「ミシュ、ごめんよ。こんな醜い場面に立ち会わせてしまった。帰ろう。ヘンリーもすまない。」

「いや、気にするな。それよりレンの悪縁が切れた事を喜ぼう。」

しゃがみこむサラを無視してレン兄さまは私の車椅子を押した。緩やかな坂だけど帰りは傾きが少し怖いな。車椅子から落ちてしまいそう…。

「レン、車椅子で下るのは些か危ない。ミシュミラン嬢を抱き抱えても良いか?」

「ヘンリー…それは俺が担当するから車椅子を頼む。」

「………分かった。」

何だろう。今のやり取り…ヘンリー様の言葉の起伏が激しかったけどレン兄さまはまた怖い感じだったわ。
実は二人は仲が良くないのかしら…。

レン兄さまに横抱きにされると落ちないように首に腕をまわす。

「ああ、待ってくれ。」

私たちを呼び止めたのはサラの浮気相手のフラットだった。
立場的にはフラットの方が上なので無視する事もできず、レン兄さまは仕方なく身体ごと振り返り私もフラットに向き合うかたちになってしまった。

「君の名前を教えてくれないか?」

「俺……ですか?」

「…分かっていて言ってるね?」

何だか二人とも怖い空気だしてる…。

「ああ、僕が名乗っていないのが悪いのか。僕はフラット・バルリヲだ。兄思いの君の名前を教えてくれないかい?」

「私はミシュミラン・ブルノットと申します。」

「ミシュミラン嬢。次は爽やかな空気の場所で会おう。」
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