私のドラゴンライフ

聖 りんご

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特別措置

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マリアに突き放されたライラは自国の自室で塞ぎ込んでいた。

姉のように慕ってきたマリア。
いつも一緒に過ごしていた二人だったが国外追放されたのはライラは高熱を出し寝込んでいる日だった。
騒ぎを聞いたのは数日後、マリアが国を出て行方が分からなくなった後でどうしようも出来なかった。

しばらく泣いて塞ぎ込んだライラだったが、大好きなマリアとの日々を取り戻す為に頑張った。
マリアを貶めた者達を調べ国外追放の取り消しまでこぎつけ、後はマリアを探し出して戻ってきて貰いさえすれば全てが元通りになるはずだった。

「なんで…なんでですか……マリアンヌ様……。」

ベッドに倒れ込み真っ暗な部屋で天井を眺める。
月明かりのみが部屋を照らしていた。
もう、マリアとの日々は戻って来ないのだと自覚などしたくなくて、ライラは流れそうになる涙を我慢している。

「マリアンヌ様……。」

「ライラ……。」

聞こえないはずの声がしてライラは勢いよく起き上がった。
暗闇の中、月明かりに照らされるマリアの姿にライラは幻ではないかと疑念を抱きながらも近づく。

「ほんもの…?」

「ええ。紛れもない本物です。」

「マリアンヌ様~!!」

ライラはマリアに抱きつき泣いた。
そんなライラをマリアは頭を撫で宥めるがしばらく泣き止まなかった。

「ごめんなさい。貴女を悲しませたくはなかったけれど…国に帰る気が無いのは本当なの。」

マリアの言葉はライラの胸を再び抉った。
きっと最後に自分に会いに来てくれたのだろう。そう思ってまた涙が溢れそうになってきたライラだったが、マリアは優しく涙を拭うとニコリと笑う。

「国には帰りませんけれど、ライラと会えなくなるのはすごく寂しいのでコレを。」

マリアは収納から鏡を取り出すとライラに手渡した。

「私の今いる場所に貴女を呼ぶことはできないの。だけど、この鏡ごしに話す事や街でお買い物やお茶をする事はできるわ。それで、我慢してくれる…?」

「も、もちろんです~!!!!」

マリアは鏡を抱きしめてまた泣き出したライラに困った顔をしながらまた頭を撫でた。
やっと落ち着いたところでマリアは里に帰り蒼の元に向かった。

「蒼、姿をみせてくれる?」

湖の底から現れた蒼は湖の上に浮かびながらマリアの明るい表情に上手くいったようだと安心した。

「その様子だと悩みは解決したのかな。」

「ええ、貴方のおかげよ。ありがとう。」

「マリアは笑っている顔が一番だよ。だけど必ず約束は守ってね。」

蒼がマリアにした提案はマリアが里に住む事になった時にした行動制限の緩和をする代わりに、もしマリアの過失で人間が里に攻め込んできた場合はマリア自身が手をくだす事だった。

蒼はドラゴンを統べる立場であり、マリアを里に連れてきたドラゴンでもある。
蒼には感謝してもしきれない。

「私が貴方のとの約束を破る事なんて有り得ないわ。」

「信じているよ。…君を心配していた子達にも元気な姿を見せてあげてね。」

片付けを言い渡し放置していた事を思い出したマリアはすぐに自分の家に戻るのだった。
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