12 / 48
捨てられた少女
少女は出し抜かれ不服である
しおりを挟む
男爵領に着くと殺伐としていた。
心なしか店も少なくなった気がする。
屋敷の近くの広場に差し掛かるといつもとは別の賑わいをみせていた。
人々は広場に簡易の舞台を作り、その舞台を取り囲むようにたくさんの人が集まっている。
『良いタイミングで到着したみたいね。』
「プリマ様はご存知だったのですか?」
『ジルに報告させていたから知っていたわ。だからワザワザ出向いたのよ。』
どうやらこの舞台は男爵家を裁くための場のようで、舞台上では檻に入れられた一家が喚いていた。
そして丁度良い事に、ミラを嵌めた役人の一人が領民側にいるので男爵を裏切ったのであろう。
「これに割って入るの気が引けますね。」
『こういう時の為に彼を連れてきたのよ。』
プリマは同行者に視線で出番である事を告げた。
彼はそれに黙って頷き広場に響く大きな声で叫んだ。
「善良なる民たちよ。私はこの国の第二王子である。この騒ぎの代表者は名乗りでよ。」
その言葉に数十秒の静寂がうまれ、舞台の上から男が一人降りてきて頭を下げた。
「アスランと申します。」
「面をあげよ。アスラン、此度の騒ぎは何事か。」
「壇上におります男爵一家の暴挙に耐え兼ねた者がここに集まっております。
私は役人をしておりますので男爵家に裁きを与えるためにおります。」
「役人。そうであったか。では男爵家の罪とは何か。」
「男爵たちは高い税を払わせ搾取し、気に入らなければ暴力をふるう最低の人間です。」
「男爵家には数日前に追放された者がいたようだが、その者は裁かれないのか。」
「その者は横領と不貞の罪により追放され行方がわかりません。もし発見しましたらまだ問われていない罪があるか調べなくてはなりません。」
「では、調べる前に私のお話を聞いてくださいませんか?」
アスランと第二王子の話にタイミングよく割り込んだミラはアスランに微笑み、壇上へと歩いていく。
アスランはその美しさに見惚れていた。
王子もミラの後に続いて壇上へと上がる。
壇上では男爵家の面々がミラを凝視して顔を青ざめた。
「お久しぶりにございます。元家族の皆様。お元気そうで何よりでございます。」
「元気なもんか!早く私を助けろ。このノロマ!」
「そうです。家に置いてやった恩も忘れて!早くここから出すように言いなさい!!」
「何を呑気に挨拶をしている!お前の夫がこんな酷い目に遭ってるんだぞ!!」
「ちょっと!早く助けなさいよ!!そんな綺麗な格好生意気よ!早く私に差し出しなさい!!」
口々にミラを罵りながら助けを求める一家にミラは覚めた眼差しを向けた。
「なぜ私がその様な事をする必要があるのですか?私は真実を話す為にこの場に来ました。
私は、男爵に無実の罪をきせられて追放されました。証拠はここにあります。」
ミラは証拠資料を王子に渡し、それに眼を通した王子は眉間にシワを寄せた。
「今、ミラ嬢より提出された書類は男爵家の裏帳簿と脱税、それに関与した者が載ったものだった。そこには、男爵とその婦人、役人のアスランの名前もある。」
その言葉を聞いたアスランは全力で逃げようとしたが、領民たちに囲まれ取り押さえられた。
「男爵とアスランの身は私が預かり必ず裁こう。その間、この領地は王族預かりとし、後に新しい領主を遣わす。この場は解散せよ。」
領民たちは渋々広間から撤収していった。
今までされてきた仕打ちを思うと到底納得できる結末ではないが、王族に逆らうなどできるはずがない。
ミラも不完全燃焼で納得できずにいると、今まで静観していたプリマが『ぬるい。』と一言呟いた。
心なしか店も少なくなった気がする。
屋敷の近くの広場に差し掛かるといつもとは別の賑わいをみせていた。
人々は広場に簡易の舞台を作り、その舞台を取り囲むようにたくさんの人が集まっている。
『良いタイミングで到着したみたいね。』
「プリマ様はご存知だったのですか?」
『ジルに報告させていたから知っていたわ。だからワザワザ出向いたのよ。』
どうやらこの舞台は男爵家を裁くための場のようで、舞台上では檻に入れられた一家が喚いていた。
そして丁度良い事に、ミラを嵌めた役人の一人が領民側にいるので男爵を裏切ったのであろう。
「これに割って入るの気が引けますね。」
『こういう時の為に彼を連れてきたのよ。』
プリマは同行者に視線で出番である事を告げた。
彼はそれに黙って頷き広場に響く大きな声で叫んだ。
「善良なる民たちよ。私はこの国の第二王子である。この騒ぎの代表者は名乗りでよ。」
その言葉に数十秒の静寂がうまれ、舞台の上から男が一人降りてきて頭を下げた。
「アスランと申します。」
「面をあげよ。アスラン、此度の騒ぎは何事か。」
「壇上におります男爵一家の暴挙に耐え兼ねた者がここに集まっております。
私は役人をしておりますので男爵家に裁きを与えるためにおります。」
「役人。そうであったか。では男爵家の罪とは何か。」
「男爵たちは高い税を払わせ搾取し、気に入らなければ暴力をふるう最低の人間です。」
「男爵家には数日前に追放された者がいたようだが、その者は裁かれないのか。」
「その者は横領と不貞の罪により追放され行方がわかりません。もし発見しましたらまだ問われていない罪があるか調べなくてはなりません。」
「では、調べる前に私のお話を聞いてくださいませんか?」
アスランと第二王子の話にタイミングよく割り込んだミラはアスランに微笑み、壇上へと歩いていく。
アスランはその美しさに見惚れていた。
王子もミラの後に続いて壇上へと上がる。
壇上では男爵家の面々がミラを凝視して顔を青ざめた。
「お久しぶりにございます。元家族の皆様。お元気そうで何よりでございます。」
「元気なもんか!早く私を助けろ。このノロマ!」
「そうです。家に置いてやった恩も忘れて!早くここから出すように言いなさい!!」
「何を呑気に挨拶をしている!お前の夫がこんな酷い目に遭ってるんだぞ!!」
「ちょっと!早く助けなさいよ!!そんな綺麗な格好生意気よ!早く私に差し出しなさい!!」
口々にミラを罵りながら助けを求める一家にミラは覚めた眼差しを向けた。
「なぜ私がその様な事をする必要があるのですか?私は真実を話す為にこの場に来ました。
私は、男爵に無実の罪をきせられて追放されました。証拠はここにあります。」
ミラは証拠資料を王子に渡し、それに眼を通した王子は眉間にシワを寄せた。
「今、ミラ嬢より提出された書類は男爵家の裏帳簿と脱税、それに関与した者が載ったものだった。そこには、男爵とその婦人、役人のアスランの名前もある。」
その言葉を聞いたアスランは全力で逃げようとしたが、領民たちに囲まれ取り押さえられた。
「男爵とアスランの身は私が預かり必ず裁こう。その間、この領地は王族預かりとし、後に新しい領主を遣わす。この場は解散せよ。」
領民たちは渋々広間から撤収していった。
今までされてきた仕打ちを思うと到底納得できる結末ではないが、王族に逆らうなどできるはずがない。
ミラも不完全燃焼で納得できずにいると、今まで静観していたプリマが『ぬるい。』と一言呟いた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
【完結】では、なぜ貴方も生きているのですか?
月白ヤトヒコ
恋愛
父から呼び出された。
ああ、いや。父、と呼ぶと憎しみの籠る眼差しで、「彼女の命を奪ったお前に父などと呼ばれる謂われは無い。穢らわしい」と言われるので、わたしは彼のことを『侯爵様』と呼ぶべき相手か。
「……貴様の婚約が決まった。彼女の命を奪ったお前が幸せになることなど絶対に赦されることではないが、家の為だ。憎いお前が幸せになることは赦せんが、結婚して後継ぎを作れ」
単刀直入な言葉と共に、釣り書きが放り投げられた。
「婚約はお断り致します。というか、婚約はできません。わたしは、母の命を奪って生を受けた罪深い存在ですので。教会へ入り、祈りを捧げようと思います。わたしはこの家を継ぐつもりはありませんので、養子を迎え、その子へこの家を継がせてください」
「貴様、自分がなにを言っているのか判っているのかっ!? このわたしが、罪深い貴様にこの家を継がせてやると言っているんだぞっ!? 有難く思えっ!!」
「いえ、わたしは自分の罪深さを自覚しておりますので。このようなわたしが、家を継ぐなど赦されないことです。常々侯爵様が仰っているではありませんか。『生かしておいているだけで有難いと思え。この罪人め』と。なので、罪人であるわたしは自分の罪を償い、母の冥福を祈る為、教会に参ります」
という感じの重めでダークな話。
設定はふわっと。
人によっては胸くそ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる