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執事からただの男性になる為に

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朝から青空が広がり、孤児院の子供たちが駆け回り笑い声が響く中、懺悔室の扉は開かれました。

司祭は迷える子羊の為に、小窓を開きます。

「改心を呼びかけておられる神の声に心を開いてください。神のいつくしみに信頼して、あなたの罪を告白してください。」

「はい。私はお嬢様に恋焦がれる哀れなる愛の奴隷。」

(なんでしょう……既視感を感じます。)

「私は、このままお嬢様のお側に居られたら良いと思っておりました。しかし、日が経つにつれ美しくなっていくお嬢様、お嬢様という蝶に近づく害虫どもに私の我慢は限界に達しそうです。」

「まずは落ち着きましょう。」

司祭は一度宥めました。

「私の落ち着いております。」

(落ち着いていないと思います!!)

「私は決断しました。お嬢様の側を離れようと思います。」

(英断!英断ですよ!!)

「よくぞ辛き道に足を踏み入れる決心をしました。神もさぞお喜びでしょう。」

「ありがとうございます。私はお嬢様の側を離れ、徹底的に害虫駆除をしてこようと思います。」

(あぁ……神よ……)

「敵は中々に強力で、今の私には太刀打ちできません。なので、私はお嬢様のお側を離れてでも必ず奴をお嬢様に近づけない。私のお嬢様に触れて良いのはやはり私だけです!!
しかし、私がお側にいない間に羽虫がお嬢様に近寄らないか不安に思っております。私はどうすれば良いでしょうか。」

(どうすれば?!どうしよう……)

「貴方は、愛する人の為に、固い決意の元ここに足を踏み入れました。ここに来たのは迷っているのではなく、神に決意をみせる為なのではないですか?」

「やはり……総て見透かされてしまうのですね……」

(いいえ。私には理解が及びませんでした。)

「神よ、いつくしみ深くわたしを顧み、豊かなあわれみによって私をお許し下さい。私は、私の愛を貫くためにこの身が悪に堕ちようとも信じた道を貫き通します。もし、神罰を落とされると言うのであれば甘んじてお受けいたしましょう。
しかし、それはお嬢様に寄る害虫総てを駆除した後にしていただきたい。その後なら私はどのような罰もお受けします。」

(なんて、美しいくらい真っ直ぐな愛でしょう……)

「わたしは父と子と聖霊の御名によって、あなたをゆるします。これから貴方の身には多くの試練が立ちはだかる事でしょう。しかし、神は乗り越えられる試練しかお与えになりません。」

「ありがとうございます。」

懺悔室の扉は開かれ、迷える子羊は旅立ちました。
司祭は神の像に彼の行く末の明るさを祈りました。
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