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チラリズムは最強説

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「髪はいつもみたいに低めの位置でバレッタでとめて服も白のブラウスにハイウェストのロングスカートで見た目は清楚にっ。」

昨日よりも少し遅くなってしまった為、カリンはバタバタと家を出た。
玄関のドアを開けると丁度家からダルが出てきてカリンは小走りしながらダルの名前を呼んだ。

「おはよう、カリン。(胸がすごい事になるし)転ぶから走るなよ。」

「おはよう、だってダル行っちゃうじゃん。」

「当たり前だろ?仕事があるんだから。」

「だから、一日頑張れるように私が元気をあげようとしてるの!」

カリンはダルに正面から抱きつきダルを見上げて笑顔で「お仕事頑張ってね。」と言うと、ダルは顔を真っ赤にしながら慌ててカリンを剥がそうとするが、意外に力が強いカリンから逃れられず藻掻くのみだった。

「だ~(胸めっちゃ当たってるから)離れろ!(しかもブラウスのボタンの隙間からみえてるしっ)」

「え~恥ずかしがってるの?ダルは可愛いなぁ。」

「違う。仕事に遅れるから離せ。」

ダルの言葉が届いてない様子のカリンにダルは一度深呼吸をして自分を落ち着かせた。
心の中で「カリンのペースに呑まれてはダメだ。」と自分を叱咤し気合いを入れてからダルはカリンの拘束を解きカリンの両肩を掴んだ。

「なっ。ダル、急にどうしたの?」

ダルは右手でカリンの頬を撫でそのまま顎をあげた。

「カリンが頑張れって言ってくれるのすっげぇ嬉しい。ありがとうな。」

カリンはダルをうっとりした眼で見詰めながら頬を赤く染めた。
まるで恋人同士のようなやり取り、仕草にカリンは眼を閉じ唇を突き出しダルからのキスを待った。
しかし、何時までたってもダルの唇の感触はなく、ゆっくりと眼を開けるとそこにダルの姿は無く、20m程先から手を振り「いってき~」と言いながらダルは遠ざかって行った。

「ダルのバカ~!」

カリンはダルに向かって大声で叫びドスドスと自分の家に戻って行った。
遠目ながらその様子を確認したダルは大きなため息をつきながらその場にしゃがみ込んだ。

「マジで危なかった……。なんだよアレ、ヤバいだろ。相手はカリンなのに…。」

カリンがキス待ちをし始めた時、ダルは無防備なカリンの姿に一瞬手を出してしまいそうになった。
柔らかそうな唇の誘惑をギリギリのところでかわし、全力で離れたが今も心の中で葛藤が残る。

「訓練頑張ろう……」

ダルは立ち上がると仕事場である王城に向かった。
兵士であるダルは今日も訓練に勤しんだ。
雑念を振り払う為に一心不乱に勤しんだ。
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