私が尽くす貴女は絶対

聖 りんご

文字の大きさ
上 下
5 / 16

しおりを挟む
ジルはハナの巣を旅立つと不死の書を手に入れる為に東の森の外れにある墓場に向かった。
墓場とは称されはいるが手入れする者は居らず、墓石は汚れ雑草が生え放題の荒地でリッチが住みつく危険区域でもあった。

そんな土地にも関わらず、ジルは怯える様子もなく普通に降り立ちむしろリッチに姿を現すように呼びかけた。

「この地に住みつくリッチ、出て来なさい。さもなくばココを更地にしますよ。」

半分脅すように何回か呼びかけると辺りが霧に包まれ一つの影が浮かび上がった。

「ダレだ……我を呼ぶ不届きな奴は……。その命、我の糧としてく…れ……」

「久しぶりですね。」

「ジ、ジルさん!ち、ちーっす。お疲れ様です!!こわんな寂れた所に来て下さるなんて感激ッス!!!」

リッチはジルを視認するとペコペコ頭を下げながら挨拶し始めた。
口調も変わり先程までとは別人のようで、遠巻きに見ているリッチの配下達は目を丸くした。

「お、お前らもキチンと挨拶しろっ!ジルさんはな~消滅させられそうになった俺を助けてくれた恩人だ!!」

「まぁ消滅させようとしていたのは私の主ですけどね。」

配下達は地面に座りひれ伏した。
その様子に満足したリッチはジルに向き直り要件をきいた。

「実は不死の書が欲しいのです。」

「え゛っ。」

「何か?」

「あの…その……不死の書はちょっと……渡せないかなぁ~なんて……。」

「何故でしょうか。」

リッチは言いづらそうにしながらジルにそっと不死の書の扉をみせた。
そこには一行【花売りのアイリちゃんに捧ぐ想い】と書かれており、ジルはリッチが嫌がる意味を理解した。
が、引き下がるわけにはいかない。

「ようは片想い日き「シーッ!シーッ!!」不死の書の中が読めない状態なら良いのですね?」

「ジルさんの頼みですから……。」

「ページを塗り潰すのはダメですか?」

「文字に力がありますんでソレしたらただの本です。」

力を持つほどの内容がどの様なものなのか気になったジルだが下手に盗み見てリッチに拗ねられてはいけないので好奇心はしまい込んだ。

考えた結果、超強力瞬間接着剤で全ページをくっつける事でリッチを納得させ不死の書を手にしたジルは再生の短剣を求めて墓地を後にした。

ジルが旅立った後、ジルから譲り受けた超強力瞬間接着剤のあまりをもらったリッチは、ジルに渡した不死の書①の続きの②~④を配下達の目を盗みこっそり超強力瞬間接着剤で封印する事に成功し、感謝と安堵の涙を流した。
しおりを挟む

処理中です...