上 下
3 / 4

後編

しおりを挟む
(コンコン)

「どうぞ」

「失礼しますっ!団長、詐欺師の聴取終わりました。」

「わかった。キャリーは来たか?」

「さっき見かけたのでもうすぐこちらに来るかと思います。」

「ありがとう。休憩してくれ。」

「ハッ!失礼しました。」

団員が部屋から出ていくとアランは息を吐いて椅子の背もたれに身を預けた。
詐欺師レイヴンは何人もの女性から被害届が出ていた手練の詐欺師で捕まえることが出来たのはとても大きな手柄だった。キャリーには特別ボーナスを出さなくてはならない。

キャリーには大変厄介な体質がある。それは男運が悪く惚れた男は百パーセントのクズ男という事。詐欺師は今回で二人目で他は窃盗常習犯にギャング崩れ、自称善良な実業家など何故次から次へとホイホイできるのか謎でならない。

キャリーは確かに可愛らしい。しかしそれが理由ならば世の美人は全員ホイホイだ。そして一番厄介なのはそんなキャリーに惚れた自分である事は間違いないだろう。
既に数回告白しているが断られている。

「団長にはときめかないもの。」

ときめかれたらクズ男の仲間入りだ。しかしときめいて貰わなければ愛は届かない。不毛。早く諦めるべきこの恋をアランは手放せないでいた。

(コンコン)

「どうぞ。」

「失礼します。」

「キャリー、この度はお手絡だった。」

「…恐れ入ります。」

この言葉がキャリーにとって適切では無い事は分かっているがアランは立場上そう言わざる負えない。どちらも微妙な顔をしてはいるが理解はしている。

「ここからは職務とは関係ない。プライベートな事だからかしこまらないでくれ。」

「……ではお言葉に甘えさせていただきます。」

アランは手でキャリーにソファに座るように促した。
キャリーは躊躇いなくソファに座ると深いため息をついた。そんなキャリーの隣に座ったアランはキャリーの頭を優しく撫でる。

「今回もダメだったな…。」

「“も”って言わないで下さいよ~!私めちゃめちゃ落ち込んでるんですよ?!」

「分かっている。だからソレにつけ込んでそろそろ私にしとかないか?」

「ゔ~・・・。」

「ときめいて無くてもいいさ。チャンスが欲しいんだ。一度でいいから君を独占する権利を、この手に包み込む権利をくれないかい?一度試して本当にダメだったならその時は二度と君にせまりはしない。」

キャリーは真剣に悩んだ。
いつもなら軽くお断りして終わりだが今回はこれが最後だと言われた。キャリーも自分の男運の悪さは分かっているしアランが最高の男性だと言う事も分かってはいる。顔もキャリーの好みに入るし艶やかな翠の髪の触り心地を試してみたいと思う時もある。
しかし、キャリーの本能が危険だと言っているのだ。
今までの元彼達はキュンッとして単純に私が守ってあげたいという感情が強かった。しかしアランは捕食されてる感が強いのだ。

何度告白を断っても諦めず口説いてくるアラン。確かに単に上司というには別の感情がなくも無い。でも恋愛では無いとは思うがこれが最後と言われると寂しい心がある気もする。

「わ…わかりました。お気持ちを受けます。」

「本当か!!撤回は許さないぞ?!」

「わ、わかってますよ!ただ、幻滅しても知りませんよ!!」

「そんなものしないさ。全ての愛を捧げる。覚悟してくれ。」

キャリーは一瞬早まったかもしれないと後悔した。そんなキャリーをアランはもう逃がさないというように強く強く抱き締めた。


そして、二人の結婚式が行われたのはその半年後だった。

FIN
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

【完結】夫もメイドも嘘ばかり

横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。 サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。 そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。 夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

妹の妊娠と未来への絆

アソビのココロ
恋愛
「私のお腹の中にはフレディ様の赤ちゃんがいるんです!」 オードリー・グリーンスパン侯爵令嬢は、美貌の貴公子として知られる侯爵令息フレディ・ヴァンデグリフトと婚約寸前だった。しかしオードリーの妹ビヴァリーがフレディと一夜をともにし、妊娠してしまう。よくできた令嬢と評価されているオードリーの下した裁定とは?

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

処理中です...