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第二話
しおりを挟むいよいよ、今日はお城で舞踏会が開かれます。
ただ、少し変わったものになるようです。
招待状を元義母に燃やされた私ですが、水色の清楚なデザインのドレスを身に纏い、お城の中にいます。
舞踏会の開かれるホールは、色とりどりのドレスを纏った令嬢達で華やかです。
期待に満ちた令嬢達の視線の先、大階段の上にレナルド王子が現れます。
「本日は私のためにお集まりいただき、ありがとうございます」
ホールからは、令嬢達の黄色い声が聞こえてきます。
「しかし、謝らねばならぬことがあります」
黄色い声がどよめきに変わりました。
「この舞踏会が開かれる前に、運命の人に出会ってしまったのです」
どよめきが大きくなります。
「よって、今日の舞踏会は花嫁探しではなく、花嫁披露の場とさせていただきます」
どよめきが悲鳴に変わりました。無理もありません。自分が選ばれるかもしれないと期待していたのに、すでに相手が決まったと言われたのですから。
「さあ、こちらへ」
レナルド王子が横を向き手を伸ばします。
そして、その手を掴むのは……。
「紹介します。私の婚約者、シンシア・ペンバートン子爵令嬢です」
そう、私です。
私がレナルド様の手を取り、並んだ瞬間、聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえてきました。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁあああっっっ‼︎‼︎嘘よぉぉぉぉお‼︎‼︎」
「何でこんなとこにいるのよあんたぁぁっっ‼︎⁉︎」
令嬢達の中にいた、元義妹と元義母です。
その異様さに、周りにいた令嬢達が距離を取り、二人の周りだけ空間が出来ています。
「お久しぶりですね、キャロリンさん、アビゲイルさん」
「はぁぁあ⁉︎そんなとこで何してんのよシンシア⁉︎私の王子様に触ってんじゃないわよっっ‼︎‼︎」
レナルド様はいつからアビゲイルのものになったのでしょうか?
「シンシア!アビゲイルと変わりなさい‼︎」
「お断りします」
「キーーーーッッ‼︎母親の言うことが聞けないのかいっっ‼︎‼︎」
「私は、貴女の娘ではありませんし、言うことを聞く義理もありません」
ダルトリー伯爵家を追い出された時から、すでに義理の親子ではありません。
「なんですって⁉︎あんた何様よ‼︎‼︎」
「――貴女こそ何様ですか?」
レナルド様が凛とした声を響かせました。
「あ、レナルド王子、違うんです!そのシンシアはグズで、うちの娘のアビゲイルの方がっ……」
「そうですレナルド王子!シンシアは言われたことも出来ないグズです!そんな女より私をお側に――」
「私の婚約者に対してグズとは」
怒気を含んだレナルド様の声に、辺りが静まりかえります。さすがの二人も黙りました。
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レナルド様の声で、衛兵の方達がキャロリンとアビゲイルの二人を拘束しました。
二人は衛兵の方達に引き摺られ、ホールを出るまでずっと何かを喚きながら連行されて行きました。
「レナルド様、私の元義母と義妹が大変失礼いたしました」
「気にしないで。シンシアから聞いていた通りの人達だったね」
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