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後編

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「私の伴侶になってもらう事だよ」
「……」

 ……はんりょ……はんりょ……。
 ……伴侶。

「――伴侶っ⁉︎」

 何それいきなり、意味が分からない。

「自分の命を狙っている相手に何言ってんの?」
「君が好きなんだ」
「……はぁあ⁉︎」

 本当に何を言っているんだこの王太子!

「私たち初対面ですけど⁉︎」
「うん、そうだね。だけど、私は以前からシーラの事を知っていたから」
「――⁉︎なんで名前知ってんの⁉︎」

 私名乗ってないのに。
 
「隣国に遊学していた時に仕事中のシーラを偶然見かけてね。一目で恋に落ちてしまったよ。そこからシーラの事を調べ上げて」
「えっ、怖い怖い」
「シーラの生い立ちからホクロの数まで全部把握済みだよ☆」
「普通に気持ち悪いんだけど」

 顔の良さを差し引いてもヤバい奴だよ。

「生い立ちから何から知ってるんなら、私なんかが王太子の伴侶になれるわけ無いのわかるでしょう?」

 元伯爵令嬢とはいえ、今の私は暗殺者なんだから……。

「あぁ、それなら大丈夫。シーラがまだ人を殺めた事が無いのも分かっているし、身分に関しても私の派閥の貴族の養女になる手続きは済ませてあるし」
「待って話が早すぎる……――済ませてあるっ⁉︎いやいや、それに未遂とはいえ、王太子の命を狙ったわけだし……!」
「依頼主は私だから気にしないで☆」
「は?」

 いや、ニコッ!じゃないわ。

「自分の暗殺依頼を出したって事?バカなの?」

 自分で自分の暗殺依頼出すとかまともじゃないわ。
 バカなんじゃない?本当に殺されたらどうするの?

「それにシーラに殺されるなら本望だよ」

 あ、バカだ。

「あのね、確かに私が指名依頼受けたけど、私が失敗したら暗殺ギルドの別の人間が送り込まれるのよ⁉︎どうすんの⁉︎」

 私が失敗しても依頼は続行される……。

「心配してくれるなんて、シーラは優しいね。大丈夫、暗殺ギルドならもう存在しないよ」
「……は?」
「シーラが任務の為に暗殺ギルドから離れた直後に、隣国の騎士団が制圧して一網打尽にしたそうだよ」
「嘘でしょ……だって、私みたいに任務に出てる人だって……」
「うん、そいつらもちゃんと捕まえたからね。隣国も国内外で暗躍する暗殺ギルドをなんとかしたいと思ってたみたいで、こちらが協力を申し出たら喜んで受け入れてくれたよ」
「……はぁ、もう驚くのもバカらしいわ……」

 嘘をついてる様には見えないし、ニコニコ楽しそうに話すこの男ならやりかねない。
 いや、やる。必ず。

「じゃあ、私が貴方に接触した時には全部終わってたって事でしょ?もっと早く言えば良かったのに」
「シーラに誘惑されたくて☆」
「うわぁ……」

 本当、顔は良いのに中身が残念だなぁ。

「もう絶対に離してあげない。私の全てでシーラを愛すよ」
「――!……重っ」
 
 急に真剣な顔して言うものだから、心臓が変な動きしたぁ……。
 まったく……逃げ出せる気がしないし、本当に厄介な人に好かれてしまったものだわ。
 

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