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第三話

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「……ベネデット、お前には人の上に立つ資質は無いようだ。頼りないお前だが、優秀なアドリア嬢の支えがあれば大丈夫であろうと立太子させようと思っていたが。人を見る目も無く、意見を聞かず、真実から目を背ける愚鈍な者よ……、お前とアドリア嬢の婚約は破棄し、第二王子のテオドーロを立太子する。」
「ま、待ってください父上っ……」
「更に、まともに調べもせず男爵令嬢の言い分のみを鵜呑みにし、伯爵令嬢を衆人環視の中貶め、勝手に国外追放まで言い渡す愚行。――お前は廃嫡だ、ベネデット。只今をもって、お前は王族では無くなった。明日までに荷物を纏めて城から出て行け」
「……は?冗談でしょ?父上っ」
「冗談に聞こえるか?」
「……ぅ、嘘だ……なんで私が廃嫡……城から出て行かねばならんのだ……」

 あらあら、ベネデット様のお顔が真っ白ですわ。あぁ、もう王族ではないのだから様は入りませんわね。
 ここまで見事に血の気の引いた顔、というのは見たことがないですわ。

「さて、ロジータ嬢」

 陛下に名を呼ばれロジータがビクッと体を震わせる。

 こちらはまた、ベネデットとは違い真っ青な顔をしてますわね。

「先程の映像が立派な証拠だ。虐めをしていたのはアドリア嬢ではなく、ロジータ嬢で間違い無いな?」
「……知りません、記憶にありません」
「……なに?」
「あれは私ですが、私ではありません!……そう!無意識にしていた事なのです!あぁ、無意識とはいえなんて恐ろしい事を!私は病気なんだわ……っ‼︎」
「――ブフッ!」

 またとんでもない言い分ですわね。
 恥ずかしながら、思わず吹き出してしまいましたわ。いけない、いけない。

「……何がおかしいのですか?アドリア様」
「あら、失礼。悲壮感たっぷりに、身振り手振りを交えて仰ってますが、記憶に無いはずがないでしょう?先程、ベネデットさんが仰っていたではないですか」

“教科書を破り、すれ違い様に貴様からぶつかっておきながら『汚い』などと言い、更には昨日、階段から突き落としたではないか‼︎”

“あるとも!純粋なロジータが泣きながら私に訴えたのだ!それが証拠だ‼︎”

「泣きながらベネデットさんに訴えたのでしょう?私とロジータ嬢の立場は逆でしたが、記憶に無いことは訴えようがありませんわ」
「――あんたっ……!」
「もうやめないか!ロジータ!」
「お父様⁉︎」
「陛下、この度は娘が大変申し訳ありませんでした。こんなことになるまで、気づかなかった私にも責任がございます」
「どう責任を取るつもりかな?アッカルド男爵」
「……男爵位を返上いたします」
「ふむ、そうか。ドナーティ伯爵、アドリア嬢も、それで良いかな?」

 アッカルド男爵には多少同情しますが、妥当でしょうね。

「はい、異存ありません」

 お父様も少しは怒りを鎮めてくださったみたいですわね。青筋は消えていますし。

「はぁあ⁉︎なんで⁉︎爵位を返上したら平民じゃない‼︎お父様何考え――」

――バチン‼︎

 あらー、なかなかに勢いのある平手打ちでしたわね。ロジータが吹っ飛んでるじゃないですか。
 重めの良い音が響きましたわ。

「――っ黙れ!誰のせいでこうなったと思っている‼︎せめて最後くらい淑女らしくしなさい‼︎……陛下、失礼しました……っ」

 怒鳴られたロジータは打たれた頬を押さえたまま、アッカルド元男爵に頭を下げさせられ、連れて行かれた。

 まぁ、殿方に限りですが、愛想の良い方でしたから、平民になってもやっていけるのではないかしら。
 ベネデットとは違って。
 アレは平民の暮らしをできる気がしませんけれど、どうでもいいですわね。
 “ロジータ劇場”が繰り広げられている間に、陛下の護衛の一人に連行されていましたから、もう姿を見ることもないでしょうね。

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