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義妹とVRMMO
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6月下旬。
梅雨も明け本格的に夏の陽気となりつつあるために洗濯の時間を早朝にしたために柔らかい太陽の光を浴びながら洗濯物を干す。
「う~ん気持ちいいな」
竿に全ての洗濯物を干しその場で体を伸ばす。
つい最近、諸事情で家に居る人が増えたので地味に増えた洗濯物を尻目にリビングに向かう。すると時を同じくして1人の少女が起きてた来た。
「おはよう雫」
「おはようございます亮也さん」
彼女の名前は天音雫。
つい最近両親が多忙になるからと家で預かるようになった娘だ。水晶のような瞳に紫掛った黒い髪が特徴的な美少女である。
「今日は弁当居る日?」
「ええお願いしますわ」
「了解。そしてあのバカは?」
エプロンを身につけ冷蔵庫から朝食と弁当の材料を取り出して調理に取り掛かる。
「聖奈ならまだ起きてませんよ?」
「…期末近いはずだろ何してやがる」
聖奈とは俺―片倉亮也の義妹である片倉聖奈である。俺が幼い頃に両親が事故死したことで身寄りを無くした所に両親の親友だった義親に引き取られたという経歴がある。
「あ~最近本業に…ゲームに力が入り過ぎなんんですよあの子」
「たっく雫や愛子はきちんと出来てるのになんで美波は…」
愛子とは雫や聖奈の幼馴染である桜井愛子でありこの3人はプロゲーマーである。もう既に一般的なサラリーマンの月収を超えることがありそれこそもう高校に通う必要はないのだが彼女らのスポンサーがきちんと高校は出なさいといったため、しぶしぶ(それ聖奈だけ)高校に通っている。
「高校にすら通っていない亮也さんが言うのも少しアレだと思いますけど」
「正論過ぎて文句が出ないな。でも仕方ないだろ」
確かに雫の言う通りに本来なら高校3年生の年齢であるが諸事情故に学校には通っていない。と言うか通う必要が皆無だ。
「帰還者ってのも不便なものね」
「俺が特殊過ぎるってのもあるがな」
そう。
俺は10歳の頃に異世界に勇者として召喚され紆余曲折ありながらもなんとか魔王や邪神を殺してこの世界に帰ってきたのだがその時に得た能力が能力のために通学という行為に存在する利点を全て潰してしまっている。
それが顕著なのが食事であろう。何せほぼ全ての作物を育てる事ができるために食費という概念がほぼ存在しない。その他にも色々あるが。何にせよ既に色々な資格を軒並み取らされているので電話一本入れるだけですぐに働けるはずだ。最もそんな事も必要ない不労取得がもう既に幾つもあるのだが。
「でアイツは一体ナニしてんだか」
「今日の3時のリザルトと机に突っ伏してた聖奈で分かるでしょ?」
…徹夜かよ。しかもゲームで。プロゲーマーだから規制はしないがもう少し学生らしい生活を送って欲しいものだ。
「悪いが呼んできてくれ。せっかくの朝食が冷めそうだ」
「良いわよ。にしても料理くらい私もできるわよ?」
「夕食は任せてるだろ。そこまで気を使わんで良い」
というかキッチンを魔改造しすぎて他人に扱わせたくないのが現状だ。まあ幼馴染3人娘なら扱わせても良いが1人は令嬢でもう1人は致命的なまでに料理センスがない。どっちもお菓子は作れるのだが。
「それに前に襲われかけたからな~」
「何してるのかしら貴方達」
いや普通に怖かったからね。急に襲ってきた時はつい本気で押し返して仕舞う所だった。幸にして亜音速で動きベットに引き込むように倒れたから事なきを得たが運悪くその瞬間を愛子に見られて一時期そういう関係だと思われていた。
「じゃあ行ってくるわ。ついでに着替えてもくるから」
「そう言えばまだパジャマだったな」
薄ピンクの花柄のパジャマである。
その花の花言葉知っているのだろうかこの子。
「今更なの?まあ下着含めて洗濯しているのだからこんなんじゃ劣情も抱かない?」
「朝から生々しいのは辞めい。ってかそれ何処で売ってた?」
よく見れば素材もアレだし。何してんだろうかね。
「さあ?母さんが用意したものだし。何コッチには興味があるの?」
「…世の中知らない方がいい事もあるよ」
花言葉は私だけを見て・夜の帳・危ない冒険・火遊びetcと言ったおおよそそう意味で使われてしまうもの。俺が訪れた世界ではどの身分も問わずにその柄のパジャマを着た女性が意中の人の部屋を訪れるということはそう言うことだ。
そうとは知らずに同時に転移した連中と紡績業を発展させた時はベイビーブームが来るとは思いもしなかった。多分雫のお母さんも知らないはずだが脳裏にチラつくとある人物は大いに高笑いしているに違いない。その由来も知ってしまっている自分が今は憎い。まあ言わなければバレることもないので大丈夫なはず。
「そう。なら呼んでくるわ」
「頼む」
パタパタとスリッパの音を立てて聖奈の部屋に向かう雫。
「朝から心臓に悪いな」
若干生地が薄いためか少しばかり下着が透けて見えており本気でヤバかった。
その記憶を頭から追い出すためにテキパキと調理しつつもオヤツも作る。今日はなんとなくクッキーの気分なので材料を混ぜて寝かせておく。するとその間に諸処の調理を終えたので〈念動〉を使い配膳して弁当を詰め込む。そして促進した生地を取り出して分けて焼いていく。
パタン。
そうこうしていると2人が来た。どちらの高校のブレザーに身を包んでいるが片方は相当に眠そうだ。
「おはようさん聖奈」
「ふわぁ~。おはよ~兄さん」
銀髪に黒目と中々に見ない組み合わせをしたのが我が義妹、聖奈。
これまでで分かると思うがかなりの廃ゲーマーなプロである。コイツもかなりの美少女である。まあその正体がコレだが。
「はいよ」
「う~んありがと」
コーヒーカップを手渡すと一気に目が覚醒していく。異世界産のかなりカフェインが強いくせいに中毒性が低いという摩訶不思議なコーヒーである。
「さてと飯にするぞ」
「は~い」
「うん、頂きます」
「ご馳走さま」
「ふぅ~食べた」
「お粗末様。〈戻れ〉」
魔力を乗せた【呪言】により使用した食器類が自動洗浄機に集まり自動で動き出す。そしてお茶でも入れようかと思っていると不意にインターホンが鳴る。
「〈誰だ?〉」
【呪言】を使い玄関口に配置した置物…ちょっとした金属細工の竜の目と視覚を共有する。居たのはこの時間には宅配に来ないはずの業者だ。ただその荷物はかなり大きい。
俺のステータスだと髪レベルに軽いだろうが。
「荷物か。少し受け取ってくる」
「じゃあ準備してくる~」
聖奈の後を追うように雫も付いていく。確かに時間のみを見ればそろそろ学校に行く時間だしな。
「すみません早朝に…」
業者のお兄さんはペコペコと頭を下げているが…コレは仕方なしか。
「いえこんな早くからご苦労様です」
基本的には家に居るとは言えども気付かない場合の方が多いから朝の方が助かるのも事実だ。
「ソレ指紋も必要だろ?」
「えぇーそうですけど。それかなり最新技術ですよね?」
確かにな。それはつい1週間前から始まったモノであり本来なら受取人が指紋を提供する必要はないが俺の都合上必要だからしてきた事だろう。
透明なボードに右手人差し指の指紋を検出すると登録が完了したので荷物を受け取り宅配のお兄さんを見送るとリビングに戻る。その間にも荷物を確認するが送り主は不明。ただし爆発物などの危険物が使われているわけでもない。言うならばファンからの贈り物が正しいだろうがあの3人娘の場合は必ず事務所を通すはず。そうなるように手を回してもいるわけだし。
「兄さんそれって?」
リビングで寛いでいた2人が運んでいた段ボールを見つめる。
「さあ?宛名も送り主の名前もないから分からん」
「…聖奈よく見て」
緊張と興奮を孕んだ声で雫が告げる。確かに煩雑な模様だったりかなり特殊な形状であり開け方もわざわざ一面を使い書いてあるほどだ。少しばかり眼を向けたがこの箱には何の仕掛けもない。素材のみが超最新の強化段ボールである程度。そしてそれの効果は空間容量の拡張。素材そもそもの特性であるが故に眼は効かない。最初からそれが分かっていたからこそ自分の手ので取りに行ったのだが。
「えっ…【アヴァロン】の…」
正体不明の会社【アヴァロン】。
その全てが謎に包まれており先の指紋認証と言った未知の技術やこの段ボールなどの新素材を開発・研究している日本の会社である。俺も新素材開発でとある研究結果を提供している。それはこの世でもっとも安定していると話題な因子関係である。
「コレ【AWO】の…」
「AWO?」
語感的にAnother World Onlineを略したのだろうか。確かに昨年末に届いた荷物にもこんな風のデザインだった気がする。
「【Another World Online】。1月から5月までオープンβテストが行われていたVRMMOね」
「と言うことはお前らがその間かなりの間部屋に篭っていたのは…」
「ええ。そう言うことね。にしてもコレ…」
「兄さん宛。でも何で?」
確かに。宛先は俺の名前。そして現在の書類上の同居人は聖奈1人であり義理の両親は2人ともアメリカで技術者をしている。
「…まさかな。もう9年は前だぞ」
「えっそっち?」
異世界召喚前では俺は聖奈のFPSの狙撃観測者として一時期だがプレーしており武器絞りにおける全ての種類でトップ10に入るほど。故に聖奈同様にスカウトされたがその直後に異世界召喚にあったので有耶無耶になり帰還後の少しの間以外は国の研究機関にいたしその後は虚空戦争とも呼ばれる大犯罪や異能者同士の戦争や拐われた愛子の奪還などがあり結局この状態である。
「で如何なんだその【AWO】は」
「現行のフルダイブの数世代は先を行くとは思うよ。何から何まで」
「はっ?…マジかよ」
流石は【アヴァロン】とでも言うべきか。まあ楽しみでもある。
「…ちなみに聖奈が今日もこんな感じだったのは明日から正式稼働の【AWO】にいた五聖使徒の銃皇【クロノ・クラウン】と魔導女帝【チェリア・マギステル】に対抗するため」
「…」
「…」
ジト目で聖奈を見たら目を逸らされた。事実かよ。まあどっちもコイツに取っては自分の十八番を奪われた形になるからか。
「ってまあ良いや。そろそろ学校行くぞ」
普段なら未だ家にいる時間だが今日は用事がある。
「アレここって桜井神社だよね?」
「そうだな」
2人と荷物を乗せて車を走らせる事数分。地域でも最大の神社である桜井神社である。ここの一人娘が2人の幼馴染である愛子である。
しばらくしていると1人の少女と数人の料理人が来た。
「おはようございます皆さん」
「ああ、おはよう愛子」
その少女は桜井愛子。白髪に碧眼という日本人ではあり得ない髪をしているが事桜井家では珍しくもない。
「藤宮さんコッチが今回分のだ」
彼女を後部座席に入れるとそのまま料理人に荷物を渡す。俺が育てている農作物などである。とある契約上でこうしていつもながらに農作物を納品している。
「じゃあ頼みますね。亮也殿」
「ええ勿論」
そんなこんながあり夕方。
「…」
「…」
「…」
「…マジか…」
リビングで今朝届いた荷物を開封して出てきたのはマジックボックスでありその中から幾つものフルダイブ環境下のプロ仕様のゲーミングベッド。
この場にいる3人娘と俺は絶句である。ちなみに愛子は週一のお泊まりである。彼女も一式を家に置いてあるがこの8つという数は俺には心覚えがある。それを示す目印も俺にしか分からないようにしてあるから確信的だ。なので今は必要ない4つはそのまま収納した。
「誰だよ…。まあそう言うことなんだろうけどさ」
俺用の機体には全てのベッドに件の【AWO】がインストールされているらしい。一体何処まで見通しているのやら。
「えっ…と如何言うことですか?」
「これの送り主は俺を知り過ぎている。最終的に8つのダイブ環境が必要になることとその内3人がプロゲーマーである“姫巫女”であること」
姫巫女とは3人娘のチーム名である。それにしてもコッチは分かりやすいな。
「その緑の枕が愛子で紫が雫に灰色が聖奈か」
「えっなんで私が灰色?」
「…」
「亮也さんまさか…」
俺の表情を見て愛子は悟ったらしい。流石は神社の一人娘。ただそれが何であるかわかる故にかあり得ないという表情を浮かべている。全く同じ心境だ。
「魔力の色…」
「ああ。じゃないと説明が付かない」
そう考えるならこの妙に色鮮やかな俺の固体も理解できる。
「取り敢えず明日の予定は決まりだな」
その呟きに3人娘の顔がキラリと輝いたのを俺は生涯忘れないだろう。
梅雨も明け本格的に夏の陽気となりつつあるために洗濯の時間を早朝にしたために柔らかい太陽の光を浴びながら洗濯物を干す。
「う~ん気持ちいいな」
竿に全ての洗濯物を干しその場で体を伸ばす。
つい最近、諸事情で家に居る人が増えたので地味に増えた洗濯物を尻目にリビングに向かう。すると時を同じくして1人の少女が起きてた来た。
「おはよう雫」
「おはようございます亮也さん」
彼女の名前は天音雫。
つい最近両親が多忙になるからと家で預かるようになった娘だ。水晶のような瞳に紫掛った黒い髪が特徴的な美少女である。
「今日は弁当居る日?」
「ええお願いしますわ」
「了解。そしてあのバカは?」
エプロンを身につけ冷蔵庫から朝食と弁当の材料を取り出して調理に取り掛かる。
「聖奈ならまだ起きてませんよ?」
「…期末近いはずだろ何してやがる」
聖奈とは俺―片倉亮也の義妹である片倉聖奈である。俺が幼い頃に両親が事故死したことで身寄りを無くした所に両親の親友だった義親に引き取られたという経歴がある。
「あ~最近本業に…ゲームに力が入り過ぎなんんですよあの子」
「たっく雫や愛子はきちんと出来てるのになんで美波は…」
愛子とは雫や聖奈の幼馴染である桜井愛子でありこの3人はプロゲーマーである。もう既に一般的なサラリーマンの月収を超えることがありそれこそもう高校に通う必要はないのだが彼女らのスポンサーがきちんと高校は出なさいといったため、しぶしぶ(それ聖奈だけ)高校に通っている。
「高校にすら通っていない亮也さんが言うのも少しアレだと思いますけど」
「正論過ぎて文句が出ないな。でも仕方ないだろ」
確かに雫の言う通りに本来なら高校3年生の年齢であるが諸事情故に学校には通っていない。と言うか通う必要が皆無だ。
「帰還者ってのも不便なものね」
「俺が特殊過ぎるってのもあるがな」
そう。
俺は10歳の頃に異世界に勇者として召喚され紆余曲折ありながらもなんとか魔王や邪神を殺してこの世界に帰ってきたのだがその時に得た能力が能力のために通学という行為に存在する利点を全て潰してしまっている。
それが顕著なのが食事であろう。何せほぼ全ての作物を育てる事ができるために食費という概念がほぼ存在しない。その他にも色々あるが。何にせよ既に色々な資格を軒並み取らされているので電話一本入れるだけですぐに働けるはずだ。最もそんな事も必要ない不労取得がもう既に幾つもあるのだが。
「でアイツは一体ナニしてんだか」
「今日の3時のリザルトと机に突っ伏してた聖奈で分かるでしょ?」
…徹夜かよ。しかもゲームで。プロゲーマーだから規制はしないがもう少し学生らしい生活を送って欲しいものだ。
「悪いが呼んできてくれ。せっかくの朝食が冷めそうだ」
「良いわよ。にしても料理くらい私もできるわよ?」
「夕食は任せてるだろ。そこまで気を使わんで良い」
というかキッチンを魔改造しすぎて他人に扱わせたくないのが現状だ。まあ幼馴染3人娘なら扱わせても良いが1人は令嬢でもう1人は致命的なまでに料理センスがない。どっちもお菓子は作れるのだが。
「それに前に襲われかけたからな~」
「何してるのかしら貴方達」
いや普通に怖かったからね。急に襲ってきた時はつい本気で押し返して仕舞う所だった。幸にして亜音速で動きベットに引き込むように倒れたから事なきを得たが運悪くその瞬間を愛子に見られて一時期そういう関係だと思われていた。
「じゃあ行ってくるわ。ついでに着替えてもくるから」
「そう言えばまだパジャマだったな」
薄ピンクの花柄のパジャマである。
その花の花言葉知っているのだろうかこの子。
「今更なの?まあ下着含めて洗濯しているのだからこんなんじゃ劣情も抱かない?」
「朝から生々しいのは辞めい。ってかそれ何処で売ってた?」
よく見れば素材もアレだし。何してんだろうかね。
「さあ?母さんが用意したものだし。何コッチには興味があるの?」
「…世の中知らない方がいい事もあるよ」
花言葉は私だけを見て・夜の帳・危ない冒険・火遊びetcと言ったおおよそそう意味で使われてしまうもの。俺が訪れた世界ではどの身分も問わずにその柄のパジャマを着た女性が意中の人の部屋を訪れるということはそう言うことだ。
そうとは知らずに同時に転移した連中と紡績業を発展させた時はベイビーブームが来るとは思いもしなかった。多分雫のお母さんも知らないはずだが脳裏にチラつくとある人物は大いに高笑いしているに違いない。その由来も知ってしまっている自分が今は憎い。まあ言わなければバレることもないので大丈夫なはず。
「そう。なら呼んでくるわ」
「頼む」
パタパタとスリッパの音を立てて聖奈の部屋に向かう雫。
「朝から心臓に悪いな」
若干生地が薄いためか少しばかり下着が透けて見えており本気でヤバかった。
その記憶を頭から追い出すためにテキパキと調理しつつもオヤツも作る。今日はなんとなくクッキーの気分なので材料を混ぜて寝かせておく。するとその間に諸処の調理を終えたので〈念動〉を使い配膳して弁当を詰め込む。そして促進した生地を取り出して分けて焼いていく。
パタン。
そうこうしていると2人が来た。どちらの高校のブレザーに身を包んでいるが片方は相当に眠そうだ。
「おはようさん聖奈」
「ふわぁ~。おはよ~兄さん」
銀髪に黒目と中々に見ない組み合わせをしたのが我が義妹、聖奈。
これまでで分かると思うがかなりの廃ゲーマーなプロである。コイツもかなりの美少女である。まあその正体がコレだが。
「はいよ」
「う~んありがと」
コーヒーカップを手渡すと一気に目が覚醒していく。異世界産のかなりカフェインが強いくせいに中毒性が低いという摩訶不思議なコーヒーである。
「さてと飯にするぞ」
「は~い」
「うん、頂きます」
「ご馳走さま」
「ふぅ~食べた」
「お粗末様。〈戻れ〉」
魔力を乗せた【呪言】により使用した食器類が自動洗浄機に集まり自動で動き出す。そしてお茶でも入れようかと思っていると不意にインターホンが鳴る。
「〈誰だ?〉」
【呪言】を使い玄関口に配置した置物…ちょっとした金属細工の竜の目と視覚を共有する。居たのはこの時間には宅配に来ないはずの業者だ。ただその荷物はかなり大きい。
俺のステータスだと髪レベルに軽いだろうが。
「荷物か。少し受け取ってくる」
「じゃあ準備してくる~」
聖奈の後を追うように雫も付いていく。確かに時間のみを見ればそろそろ学校に行く時間だしな。
「すみません早朝に…」
業者のお兄さんはペコペコと頭を下げているが…コレは仕方なしか。
「いえこんな早くからご苦労様です」
基本的には家に居るとは言えども気付かない場合の方が多いから朝の方が助かるのも事実だ。
「ソレ指紋も必要だろ?」
「えぇーそうですけど。それかなり最新技術ですよね?」
確かにな。それはつい1週間前から始まったモノであり本来なら受取人が指紋を提供する必要はないが俺の都合上必要だからしてきた事だろう。
透明なボードに右手人差し指の指紋を検出すると登録が完了したので荷物を受け取り宅配のお兄さんを見送るとリビングに戻る。その間にも荷物を確認するが送り主は不明。ただし爆発物などの危険物が使われているわけでもない。言うならばファンからの贈り物が正しいだろうがあの3人娘の場合は必ず事務所を通すはず。そうなるように手を回してもいるわけだし。
「兄さんそれって?」
リビングで寛いでいた2人が運んでいた段ボールを見つめる。
「さあ?宛名も送り主の名前もないから分からん」
「…聖奈よく見て」
緊張と興奮を孕んだ声で雫が告げる。確かに煩雑な模様だったりかなり特殊な形状であり開け方もわざわざ一面を使い書いてあるほどだ。少しばかり眼を向けたがこの箱には何の仕掛けもない。素材のみが超最新の強化段ボールである程度。そしてそれの効果は空間容量の拡張。素材そもそもの特性であるが故に眼は効かない。最初からそれが分かっていたからこそ自分の手ので取りに行ったのだが。
「えっ…【アヴァロン】の…」
正体不明の会社【アヴァロン】。
その全てが謎に包まれており先の指紋認証と言った未知の技術やこの段ボールなどの新素材を開発・研究している日本の会社である。俺も新素材開発でとある研究結果を提供している。それはこの世でもっとも安定していると話題な因子関係である。
「コレ【AWO】の…」
「AWO?」
語感的にAnother World Onlineを略したのだろうか。確かに昨年末に届いた荷物にもこんな風のデザインだった気がする。
「【Another World Online】。1月から5月までオープンβテストが行われていたVRMMOね」
「と言うことはお前らがその間かなりの間部屋に篭っていたのは…」
「ええ。そう言うことね。にしてもコレ…」
「兄さん宛。でも何で?」
確かに。宛先は俺の名前。そして現在の書類上の同居人は聖奈1人であり義理の両親は2人ともアメリカで技術者をしている。
「…まさかな。もう9年は前だぞ」
「えっそっち?」
異世界召喚前では俺は聖奈のFPSの狙撃観測者として一時期だがプレーしており武器絞りにおける全ての種類でトップ10に入るほど。故に聖奈同様にスカウトされたがその直後に異世界召喚にあったので有耶無耶になり帰還後の少しの間以外は国の研究機関にいたしその後は虚空戦争とも呼ばれる大犯罪や異能者同士の戦争や拐われた愛子の奪還などがあり結局この状態である。
「で如何なんだその【AWO】は」
「現行のフルダイブの数世代は先を行くとは思うよ。何から何まで」
「はっ?…マジかよ」
流石は【アヴァロン】とでも言うべきか。まあ楽しみでもある。
「…ちなみに聖奈が今日もこんな感じだったのは明日から正式稼働の【AWO】にいた五聖使徒の銃皇【クロノ・クラウン】と魔導女帝【チェリア・マギステル】に対抗するため」
「…」
「…」
ジト目で聖奈を見たら目を逸らされた。事実かよ。まあどっちもコイツに取っては自分の十八番を奪われた形になるからか。
「ってまあ良いや。そろそろ学校行くぞ」
普段なら未だ家にいる時間だが今日は用事がある。
「アレここって桜井神社だよね?」
「そうだな」
2人と荷物を乗せて車を走らせる事数分。地域でも最大の神社である桜井神社である。ここの一人娘が2人の幼馴染である愛子である。
しばらくしていると1人の少女と数人の料理人が来た。
「おはようございます皆さん」
「ああ、おはよう愛子」
その少女は桜井愛子。白髪に碧眼という日本人ではあり得ない髪をしているが事桜井家では珍しくもない。
「藤宮さんコッチが今回分のだ」
彼女を後部座席に入れるとそのまま料理人に荷物を渡す。俺が育てている農作物などである。とある契約上でこうしていつもながらに農作物を納品している。
「じゃあ頼みますね。亮也殿」
「ええ勿論」
そんなこんながあり夕方。
「…」
「…」
「…」
「…マジか…」
リビングで今朝届いた荷物を開封して出てきたのはマジックボックスでありその中から幾つものフルダイブ環境下のプロ仕様のゲーミングベッド。
この場にいる3人娘と俺は絶句である。ちなみに愛子は週一のお泊まりである。彼女も一式を家に置いてあるがこの8つという数は俺には心覚えがある。それを示す目印も俺にしか分からないようにしてあるから確信的だ。なので今は必要ない4つはそのまま収納した。
「誰だよ…。まあそう言うことなんだろうけどさ」
俺用の機体には全てのベッドに件の【AWO】がインストールされているらしい。一体何処まで見通しているのやら。
「えっ…と如何言うことですか?」
「これの送り主は俺を知り過ぎている。最終的に8つのダイブ環境が必要になることとその内3人がプロゲーマーである“姫巫女”であること」
姫巫女とは3人娘のチーム名である。それにしてもコッチは分かりやすいな。
「その緑の枕が愛子で紫が雫に灰色が聖奈か」
「えっなんで私が灰色?」
「…」
「亮也さんまさか…」
俺の表情を見て愛子は悟ったらしい。流石は神社の一人娘。ただそれが何であるかわかる故にかあり得ないという表情を浮かべている。全く同じ心境だ。
「魔力の色…」
「ああ。じゃないと説明が付かない」
そう考えるならこの妙に色鮮やかな俺の固体も理解できる。
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だが、ゲームを攻略していく様は凄まじく、視聴者を楽しませる。
次第に視聴者は嫌でも気づいてしまう。
自分が観ているのは底辺配信者なんかじゃない。
伝説のプレイヤーなんだと――。
(なろう、カクヨム、アルファポリスで掲載しています)
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