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【先導者】

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 全員の【天職】が確認し終えたところでそれぞれに付いていたメイドがエリスシア皇女の元に報告に行く。
 今の感じならバレてないな。俺の最大の秘密は。
「それでは皆さまの【天職】を確認し終えたので今後の方針についてお伝えします。数ヶ月はこの皇宮にてこちらの世界の座学及び最低限の自衛や【天職】のレベル上げをして貰います」
 だよな。普通から程遠い連中が多いこのクラスでも何も情報のないこの世界で全員で生き延びて行くのは無理がある。それこそ勇などのその家の始祖から外れていないと。
「それが終わり次第、直ぐ近くの【迷宮ダンジョン】での実戦訓練などに移ります」
 そこまで締めくくるとエリスシア皇女の元にいた3人が立ち上がる。1人は白銀の鎧に身を包んだ壮年の男性。その頬には十字の刀傷があり焼けたその肌にある無数の切り傷は歴戦の強者であることを示している。あと2人は女性。1人は紫紺のロングローブに袖を通して眼鏡を掛けている。もう1人は純白の貫頭衣…というか司祭服を着ておりその手には打撃しやすそうな流暢な杖がある。
「彼らが主に皆さまの教育を担当します。右から順にライオネル・ブリュッセン、システィーナ・リザリア、ユニ・グローリアです。【天騎士】【聖女】【魔女王】の【天職】をそれぞれ授かっておりその超級職にも就いています」
 なるほど。超級職の【天職】だから選ばれたのか。全員が全纏う気配がここに居る騎士や魔法士たちよりも遥かに格が違う。まるで何度も死線を潜り抜けてきた。そんな印象を抱かせるには十分なほどに。
「強いわね彼ら」
「ああ。僕でも1人取れたら良い方だろう」
「嘘でしょ!?」
 隣の会話が物騒すぎるがそれはそれで驚きだ。何せ勇の実家である近衛家は天皇親衛隊隊長の始祖の血がかなり強く流れており銃という飛び道具が開発・改良されていくこのご時世でも10本指に入るほどの強さを誇っておりその中でも神童と謳われるのが勇なのだ。その勇が1人として殺せないと言うのが流石に怖くもある。
「まあ幸い強くなる手段は得たんだ。それなりにはやるさ」

 それ死亡フラグにならないのか?

 あの後は直ぐに夕食となり【勇者】一行の歓迎会が行われその際に王様からも直々に世界救済を依頼されたが戦うことを強制しないとも言われた。先生はそのことに明らかに安堵していた。あの人の立場上色々と思うところもあったらしい。

「ふぅ。飲み過ぎたな」
 この世界では15歳から飲酒が許されるらしくワインがあったのでつい呑んでしまったのだがこれが絶品でありかなりの量を呑んでしまい少しトイレに立った。

 すぐ近くのバルコニーから夜風が流れ込む。空を見上げると蒼い月が夜空に輝き無数の星々がその周囲を彩る。現代の地球では絶対に見られないその光景に見惚れているとバルコニーから誰かに手招きされる。
「如何ですかこの世界は?」
「良い世界だと思うよ。【魔帝】が居なければ旅行してみたいくらいには」
 優雅に紅茶を嗜む彼女にそう返す。
「新一さん。貴方は【勇者】を授かった近衛勇さんの親友と聞きます」
「耳が良いんだな。エリスシアさまは」
 夜景をバックに見る彼女は暴力的なまでに美しく映えている。
「ええ。私の【天職】はそう言う系統ですから。斥候の真似事くらいは出来るんですよ」
「それで?」
 彼女の真意がイマイチ読めない。いや俺が読もうとするのを拒否している。
「勇者召喚の儀で現れた皆さんの中でそれほど驚かずに居たり私以外に感じ取れなかった気配を感じ取っていたりする貴方」
「買い被りすぎだ。それはアイツらの側に居たからこそ会得したものだ」
「本当にですか?」
「ああ。少なくとも嘘は言っていない」
 ただそれが事実という訳でもない。ベースこそは勇の側にいたからこそ身につけたがその本質は確実に別のものだ。
「時にこう言う話があります。初代【勇者】は異世界人であり初代【魔帝】は異界人であると」
「…。それが?」
 俺の秘密は明かせない。それがこの世界に大混乱を与えることが確実なのだから。いや下手したら影響があるのはこの世界だけに止まるとは思えない。
「今回の召喚でただ1人【異界人】の称号を持ちなおかつ【勇者】の立場に近い【封印神】。つまりは【勇者】の天敵さん」
 チッ!そこまで気付いているのか。【勇者】を【英雄】を無傷で完封可能な事すら知られているとは。
「貴方は一体何者?」
「《最後の誓約ラスト・オース》」
 その奥義を使用し一部を解放する。無限収納から一振りの刀を呼び出す。
「《有効化アクティベート【抜刀神】》」
 緩やかに延びた時間の中から降ってきたそれに合わせる。
「我流抜刀術“逆刃突“」
 逆刃に向けた刺突と切断を合わせたその一撃は…。
「見事ナリ【抜刀神】そして【先導者】」
 鋼の魔人に阻まれた。
 
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